定性調査の種類を徹底解説と比較!目的別の手法と選び方と具体例解説

定性調査 種類 市場調査・ノウハウ

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市場調査を計画する中で、定性調査にはどんな種類がありますか?という疑問をお持ちではないでしょうか。「顧客の生の声」の重要性を感じているのかもしれません。

まずは 定性調査の正しい意味・読み方・英語表記 を確認しておくと理解がスムーズです。

多くの人が混同しがちな定量調査との違いを理解し、そもそも定性調査の目的は何かを明確にすることが、適切な調査方法を選ぶ上での最初のステップです。

この記事では、各手法の読み方から、それぞれのメリットやデメリットに至るまで、豊富な具体例を交えて解説します。

さらに、もう一つの定量調査との連携や、時間軸で変化を追う縦断調査といった応用的なアプローチについても触れていきます。

なお、全体像を3分で把握したい方はこちら 顧客インサイトを掘り起こす!定性調査の完全ガイドをご活用ください。

記事のポイント

  • 定性調査の主要な種類とその基本的な特徴
  • 定量調査との明確な違いとそれぞれの役割
  • 各手法のメリット・デメリットと最適な活用シーン
  • 自身の目的に合った調査方法の選び方のヒント

定性調査の種類の基本を網羅的に解説

定性調査の種類の基本を網羅的に解説
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  • 定性調査にはどんな種類がありますか?
  • グループインタビューの具体例
  • デプスインタビューという手法
  • 行動観察調査(エスノグラフィー)の読み方
  • ワークショップという調査方法

定性調査にはどんな種類がありますか?

定性調査がどのようなものかを知る上で、まずその具体的な種類を把握することが第一歩となります。定性調査とは、アンケートのように数値で量る調査とは異なり、対象者の発言や行動から「なぜそう思うのか」「どうしてそのような行動を取るのか」といった背景にある理由や価値観を深く探るためのアプローチです。

このため、調査目的や知りたい情報の深さに応じて、様々な手法が使い分けられます。

これから解説する各手法は、それぞれに独自の特徴と得意な領域を持っています。

例えば、複数人の意見を一度に聞くことでアイデアの広がりを期待する手法もあれば、一人の対象者とじっくり向き合うことで、心の奥底にある本音に迫る手法も存在します。

また、言葉による回答だけでなく、実際の生活空間での無意識の行動を観察することから、本人さえ気づいていないニーズを発見しようと試みる調査もあります。

どの手法が優れているということではなく、自社のマーケティング課題を解決するためにはどの手法が最も適しているのかを見極めることが肝心です。

以下の表で主要な手法の概要を掴んだ上で、それぞれの詳細な解説を読み進めていただくと、より理解が深まるでしょう。

調査手法主な目的対象人数(目安)特徴
グループインタビューアイデアの創出、多様な意見の収集4~6名参加者同士の相互作用による意見の活性化
デプスインタビュー個人の深層心理の理解、意思決定プロセスの解明1名1対1での対話による深い情報収集
行動観察調査
(エスノグラフィ)
無意識の行動や潜在ニーズの発見1名~数名実際の生活環境での行動を直接観察
ワークショップアイデアの共創、課題解決策の具体化複数名参加者が主体的に作業を行う体験型調査
KOLインタビュー特定分野の専門家(Key Opinion Leader)に行うインタビュー。1名消費者では得られない専門的・客観的な知見や、業界の将来展望などを得たい場合(例:医療機器開発)
家庭訪問調査対象者の自宅を訪問し、実際の生活環境の中で観察や対話を行う手法。1名製品が実際にどのように使われているかを生活文脈の中で理解したい場合(例:キッチン家電の利用実態把握)
MROCオンライン上のコミュニティで、対象者と一定期間、継続的に交流する手法1グループあたり20〜30人時間経過による意識の変化や、コミュニティ内での意見形成など、長期的・継続的なインサイトを捉えたい場合
Insights4 Pharmaしらべ「定性調査の種類」

なお、各手法で重要となる定性調査のサンプル数は何人が最適かについては、目的別の目安と考え方を解説した記事で詳しく紹介しています。

これらの手法を理解し、適切に選択することで、数値データだけでは見えてこない消費者のリアルな姿を捉え、より効果的なマーケティング戦略の立案につなげることが可能になります。

グループインタビュー

グループインタビューは、定性調査の中でも特に広く知られている手法の一つです。

これは、特定のテーマについて話し合うために、複数の調査対象者を一つの場所に集めて座談会形式で意見を募る調査を指します。

一般的には4名から6名程度の参加者と、議論を進行する「モデレーター」と呼ばれる司会者によって、1時間半から2時間ほどかけて行われます。

この手法の最大の持ち味は、「グループダイナミクス」と呼ばれる参加者同士の相互作用にあります。

一人の発言が他の参加者の新たな気づきを促したり、ある意見に対する反論から議論が深まったりすることで、個人でインタビューを行うだけでは得られないような、多様で豊かな意見やアイデアが生まれやすくなります。

グループインタビューのメリット

主なメリットとしては、まず効率性が挙げられます。一度に複数人から情報を収集できるため、短時間で幅広い視点を得ることが可能です。

また、前述のグループダイナミクスにより、企業側が想定していなかったような新しい製品の利用シーンや、斬新なアイデアが創出されることも少なくありません。

参加者同士が共感し合う様子や、意見が分かれるポイントを直接観察できる点も、消費者理解を深める上で有益な情報となります。

デメリットと注意点

一方で、いくつかの注意点も存在します。

一つは、他者の意見に流されてしまい、自分の本当の意見を言えなくなる参加者がいる可能性です。特に、声の大きい参加者の意見に議論が支配されてしまうと、得られる情報に偏りが生じてしまいます。

また、お金や健康といったプライベートなテーマについては、他人の前では本音を話しにくいため、この手法は適さない場合があります。

これらの課題を乗り越えるためには、モデレーターの技量が極めて重要になります。

参加者全員が安心して発言できる雰囲気を作り、議論が逸れないように適切に舵を取りながら、全員からバランス良く意見を引き出すスキルが求められます。

最適な活用シーン

グループインタビューが特に効果を発揮するのは、新商品のコンセプト評価や、広告クリエイティブの受容性調査、あるいは新しいサービスのアイデアを広く募集したいといった場面です。

様々な角度からの意見をぶつけ合わせることで、より市場に受け入れられやすい企画へと磨き上げることができます。

多様な意見を効率的に集め、アイデアを広げたい場合に非常に有効な調査手法と言えます。

デプスインタビューという手法

デプスインタビューは、調査者と対象者が1対1の形式で、深く対話を行う調査手法です。

グループインタビューが意見の「広さ」を得るのに適しているのに対し、デプスインタビューは個人の意見や体験を「深く」掘り下げることを目的としています。

通常、1回のインタビューは60分から長い場合で120分ほどかけて、じっくりと話を聞いていきます。

この手法の本質は、対象者がリラックスして話せる環境を整え、表面的な回答の奥にある本音や潜在的な価値観、行動の背景にある個人的なストーリーを引き出す点にあります。

単に質問に答えてもらうだけでなく、対話を通じて信頼関係を築き、「なぜそう感じたのか」「その時、他にどのような選択肢を考えたのか」といった問いを重ねることで、対象者の思考のプロセスを詳細に追体験していきます。

デプスインタビューのメリット

最大のメリットは、一人の人間を深く、多角的に理解できる点にあります。グループでは話しにくい個人的なテーマ(例:家計の管理、コンプレックスに関する悩みなど)についても、安心して本音を語ってもらいやすい環境です。これにより、消費者が商品を購入するに至るまでの詳細な意思決定プロセスや、特定のブランドに対して抱いている特別な愛着の理由など、極めて個人的で深層にある情報を得ることが可能になります。

また、対象者のライフヒストリー(生い立ちや過去の経験)と現在の価値観を結びつけて理解することで、より本質的な消費者インサイトの発見につながることも少なくありません。

デメリットと注意点

この手法のデメリットとしては、まず時間とコストが挙げられます。一人あたりに多くの時間を費やすため、多数のサンプルを集めるには相応の費用と期間が必要となります。

また、得られる情報はあくまで個人の見解であるため、その結果を市場全体の意見として一般化することはできません。

さらに、インタビューの質は、インタビュアーのスキルに大きく依存します。

相手の話を真摯に傾聴する姿勢はもちろん、適切なタイミングで的確な質問を投げかけ、話を深掘りしていく高度なコミュニケーション能力が求められます。インタビュアーの力量次第で、得られる情報の質と量が大きく変わってしまう可能性があります。

最適な活用シーン

デプスインタビューが特に有効なのは、高価格帯の商品の購買決定プロセスを探る調査や、専門的な職種の人々から知見を得たい場合、あるいは顧客のペルソナ(具体的な人物像)を詳細に作り上げたい時などです。

以上の点を踏まえると、特定個人の行動や価値観の背景を徹底的に深掘りし、その人ならではの物語を理解したい場合に、この手法は最も力を発揮すると考えられます。

デプスインタビューに関して、さらに別記事で「意味とコツを詳しく解説」している記事もあわせてご活用ください。

行動観察調査(エスノグラフィー)の読み方

行動観察調査、専門的にはエスノグラフィーとも呼ばれるこの手法は、対象者が普段生活している「現場」に調査者が身を置き、その行動をありのままに観察することからインサイトを得ようとするアプローチです。

インタビューのように言葉で質問するのではなく、実際の行動そのものをデータとして捉える点に最大の特徴があります。

人々は、自分の行動のすべてを言葉で説明できるわけではありません。この調査は、そうした言葉にならない無意識の習慣や、本人も気づいていないニーズを捉えるのに非常に有効です。

「読み方」のポイント:観察からインサイトへ

この調査における「読み方」とは、単に行動を記録するだけでなく、その行動が「なぜ」「どのような文脈で」行われたのかを解釈し、背後にある意味を見出すプロセスを指します。

例えば、ある調味料の利用実態を調査するために家庭を訪問し、調理の様子を観察したとします。

対象者がその調味料のボトルを開ける際に、毎回少しだけ苦労している様子が観察できたとします。対象者自身はそれを「当たり前のこと」として意識していないため、インタビューで「何か不便な点はありますか?」と尋ねても、この点は語られないかもしれません。

行動観察調査の「読み方」とは、この「少し苦労している様子」という事実(What)から、「片手でもっと簡単に開けられるキャップであれば、調理がよりスムーズになるのではないか」という仮説(Why/So what?)を導き出すことに他なりません。

このように、観察された事実と、その背景にあるであろう心理や状況を紐づけて解釈することが、インサイトを発見する上での鍵となります。

メリットと注意点

行動観察調査のメリットは、対象者の発言というフィルターを通さない、リアルで客観的な情報を得られる点です。

インタビューで語られる「建前」や「理想」ではなく、実際の生活の中での「本音」の行動を捉えることができます。

これにより、企業が想定していなかった商品の使われ方や、思いもよらない不満点を発見する機会が生まれます。

一方で、この手法は多大な時間と労力を要します。

調査者が対象者の生活に立ち入るため、信頼関係の構築が不可欠であり、倫理的な配慮も求められます。

また、調査者の存在が対象者の普段の行動に影響を与えてしまう可能性(ホーソン効果)も考慮しなくてはなりません。

得られた情報の解釈は調査者の主観に委ねられる部分が大きいため、分析には高いスキルと客観的な視点が不可欠です。

最適な活用シーン

この手法は、日用品や家電製品の開発・改良、店舗のレイアウト設計、ウェブサイトのUI/UX改善など、実際の「利用シーン」が重要な意味を持つ領域で特に力を発揮します。

したがって、言葉では語られない行動の裏に隠された本質的なニーズを掴み取りたい場合に、行動観察調査は非常に強力な武器となります。

ワークショップという調査方法

ワークショップは、単に対象者の意見を聞くだけでなく、参加者が主体的に特定の課題に取り組み、アイデアを出し合ったり、何かを制作したりする過程を通じてインサイトを得る、参加体験型の調査方法です。

調査というよりも、参加者と企業が一体となって新しい価値を「共創」する場と捉えると、その本質が理解しやすくなります。

この手法では、ファシリテーターと呼ばれる進行役が、参加者が自由に、かつ建設的に議論や作業を進められるように場を設計します。

付箋や模造紙、簡単な模型などを使ってアイデアを視覚化しながら進めることが多く、参加者は楽しみながら課題に没頭することができます。

調査データとなるのは、最終的な成果物だけでなく、そこに至るまでの議論のプロセスや、参加者の表情、何気ない発言など、その場で起こるすべてです。

ワークショップのメリット

ワークショップの大きなメリットは、参加者の潜在的なアイデアや創造性を引き出しやすい点にあります。単に「どう思いますか?」と聞かれるよりも、「理想の○○を絵に描いてみてください」といった課題を与えることで、言葉だけでは表現しきれない欲求やイメージが具体化されます。

また、参加者自身が当事者意識を持って課題解決に取り組むため、より現実的で質の高いアイデアが生まれやすい傾向があります。

企業側の開発者がオブザーバーとして参加すれば、ユーザーのリアルな反応を肌で感じることができ、深い共感を得る貴重な機会にもなります。

デメリットと注意点

注意点としては、まずファシリテーターのスキルが成果を大きく左右することが挙げられます。時間管理、議論の活性化、参加者全員からの意見の引き出しなど、高度な場作りの能力が求められます。

また、参加者の創造性に頼る部分が大きいため、必ずしも期待したような画期的なアイデアが出るとは限りません。

参加者の選定も重要で、テーマに対して関心が高く、積極的に参加してくれる人でないと、ワークショップが形骸化してしまう恐れがあります。

logisticalな準備(会場、備品、参加者への謝礼など)に手間とコストがかかる点も考慮が必要です。

最適な活用シーン

この調査方法は、全く新しい商品やサービスのコンセプトをゼロから生み出したい場合や、既存サービスの課題点をユーザーと一緒に洗い出して改善策を考えたいといった場面で非常に有効です。

例えば、「未来の銀行のアプリをデザインする」「理想の旅行プランを作成する」といったテーマでワークショップを実施すれば、ユーザー視点での斬新なアイデアや、現在提供されているサービスの改善点に関する深い洞察を得ることが期待できます。

要するに、受け身の意見聴取ではなく、能動的なアイデア創出を目的とする場合に最適な手法と言えるでしょう。

目的にあわせて最適な定性調査の種類を選ぶ

ビジネスの施策 意味
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  • MROCという新しい手法
  • 市場調査で活きるKOLインタビュー
  • 定量調査との違いとメリット・デメリット
  • アンケートなどの定量調査との連携
  • 縦断調査でわかること
  • まとめ:最適な定性調査の種類を選ぼう

専門的な市場調査で活用されるKOLインタビュー

市場調査において、一般消費者の声を聞くことは基本ですが、特定の業界やテーマについて、より専門的で戦略的な知見が求められる場面があります。

そのような状況で大きな力を発揮するのが「KOLインタビュー」です。KOLとはKey Opinion Leader(キー・オピニオン・リーダー)の略で、特定の分野における専門家や影響力のある人物を指します。

この手法は、デプスインタビューの一種ではありますが、対象者が一般消費者ではなく、医師、業界アナリスト、著名なジャーナリスト、トップシェフといった、その道のプロフェッショナルである点が根本的に異なります。

目的は、彼らが持つ高度な専門知識や、業界全体を俯瞰する視点、そして将来のトレンドに対する洞察を引き出すことにあります。

KOLインタビューのメリット

最大のメリットは、情報の質の高さと希少性にあります。

一般消費者からは得ることが難しい、市場の構造的な課題や、競合他社の動向、今後の技術革新の方向性といった、戦略レベルのインサイトを得られる可能性があります。

例えば、新しい医療機器を開発する際に、実際にそれを使用する立場にある複数の医師から意見を聞くことで、製品の受容性や臨床現場での真のニーズを的確に把握できます。

また、影響力のあるKOLから得られた肯定的な評価は、その後の製品プロモーションや業界内での信頼性構築においても有利に働くことがあります。

デメリットと注意点

この手法にはいくつかの大きなハードルが存在します。

まず、対象者のリクルーティングが非常に困難です。多忙を極める専門家は、調査に協力してくれること自体が稀であり、コンタクトを取るための人脈や適切なアプローチが求められます。

さらに、彼らの貴重な時間をいただくため、謝礼も高額になる傾向があります。

そして何よりも、インタビューを行う調査者自身に、対象者と対等に話ができるだけの深い業界知識と理解がなければ、有益な情報を引き出すことはできません。

準備不足のまま臨むと、表層的な話だけで終わってしまうリスクがあります。

最適な活用シーン

KOLインタビューが適しているのは、BtoB(企業間取引)領域における新製品開発、専門性の高い市場への新規参入戦略の立案、あるいは自社の技術やブランドが業界内でどのように評価されているかを把握したい場合などです。

これらのことから、市場の大きな潮流を読み解き、事業の舵取りに関わるような、高度で戦略的な意思決定の根拠を得たい場合に、KOLインタビューは非常に価値のある手法となります。

MROCという新しい手法

近年、デジタル技術の進化に伴い、定性調査の世界にも新しい波が訪れています。その代表格が「MROC(Marketing Research Online Community)」と呼ばれる手法です。

これは、特定のテーマに関心を持つ調査対象者を数十人規模でオンライン上の専用コミュニティに集め、

数週間から数ヶ月という長期間にわたって継続的に対話を行う調査を指します。

従来のインタビューが一回限りの接点であるのに対し、MROCは対象者と企業が時間をかけて関係性を築きながら、より深く、そして変化していくインサイトを探れる点が大きな特徴です。

参加者は日記の投稿、写真や動画の共有、他の参加者とのディスカッションなど、様々な形でコミュニティに参加します。

MROCのメリット

この手法の最大のメリットは、時間軸を取り入れた分析が可能になる点です。

例えば、新製品を発売前にコミュニティメンバーに試してもらい、使用開始直後の感想から、一ヶ月後の慣れてきた頃の評価、そして長期的な愛着が形成されるまでの心の動きを、時系列で詳細に追跡できます。

また、オンラインであるため参加者は時間や場所に縛られず、リラックスした状態で本音を投稿しやすいという利点もあります。

企業側が投げかける質問だけでなく、参加者同士の自発的な会話の中から、思いもよらない製品の活用法や改善のヒントが生まれることも少なくありません。

デメリットと注意点

一方で、MROCを成功させるには専門的なノウハウが求められます。

コミュニティの活性度を維持し、参加者のモチベーションを保ち続けるためには、「コミュニティマネージャー」と呼ばれる進行役の高いスキルが不可欠です。

また、長期間にわたる調査のため、収集されるデータは膨大な量になります。

テキストだけでなく、画像や動画も含まれるこれらの情報を整理し、有益な示唆を導き出すためには、相応の分析力と時間が必要となるでしょう。

最適な活用シーン

MROCが特に効果を発揮するのは、ブランドのファン育成や、顧客との共創(コ・クリエーション)を通じて新商品を開発したい場合などです。

ファンとの継続的な対話を通じてブランドへの理解を深めてもらったり、開発中の製品コンセプトについて意見を交わしながら一緒に作り上げていったりするプロセスに最適です。

MROCは顧客と長期的な関係を築きながら、生の声を継続的に事業に反映させたいと考える場合に極めて有効な手法と考えられます。

縦断調査というアプローチ方法

調査には、ある一時点の状況を切り取る「横断調査」と、同じ対象を時間を追って繰り返し調査する「縦断調査」という二つの時間的なアプローチがあります。

これまで解説してきた多くの定性調査は、特定の期間内に実施される横断調査にあたりますが、縦断調査という視点を持つことで、見えてくる世界が大きく変わります。

縦断調査(Longitudinal Study)とは、同一の調査対象者や集団に対して、一定の間隔をあけて複数回にわたり調査を繰り返し、時間経過に伴う意識や行動の変化を捉えようとする調査デザインです。

この手法の核心は、「変化」そのものを観察し、その要因を解明する点にあります。

上記のMROCは、まさに定性調査における縦断的アプローチの代表例です。

数週間にわたってコミュニティ内で対話を続けることで、参加者の意見がどのように深まり、変化していくのかを観察できます。

また、日記調査も有効な手法の一つで、参加者に一定期間、特定のテーマに関する日記を記録してもらうことで、日々の細かな感情や行動の変化を捉えることができます。

この調査によって、例えば以下のようなことが明らかになります。

  • ブランドロイヤルティの形成プロセス: ある顧客が、初めて商品を購入してから、リピート購入を重ね、やがて熱心なファン(ロイヤルカスタマー)になるまでの、心理や行動の変化の軌跡を追うことができます。
  • 新製品の市場浸透プロセス: 新製品が市場に投入された後、消費者に認知され、試され、そして日常生活に定着していくまでの過程を観察できます。
  • ライフステージの変化に伴うニーズの変化: 対象者が就職、結婚、出産といったライフイベントを経験する中で、価値観や消費行動がどのように変化していくのかを長期的に捉えることが可能です。

メリットと注意点

縦断調査の最大のメリットは、原因と結果の関係性をより深く推測できる点にあります。

ある変化が起こる「前」と「後」の状態を比較できるため、「なぜそのような変化が起きたのか」という問いに対して、より説得力のある答えを見つけやすくなります。

ただし、この手法は長期間にわたるため、コストと時間がかかる点が大きな課題です。

また、調査期間中に参加者が離脱してしまう「サンプルの脱落」という問題も発生しやすく、残った参加者の意見に偏りが生じるリスクも考慮しなくてはなりません。

縦断調査は時間や意識の「変化のプロセス」そのものに焦点を当てたい場合に、他の手法では得られない貴重な洞察をもたらすアプローチと言えます。

定量調査との違いとそれぞれのメリット・デメリット

最後に、定性調査の種類を理解する上で、必ず対になる概念として登場するのが「定量調査」です。この二つの調査は、どちらが優れているというものではなく、目的や役割が根本的に異なります。両者の違いを正確に把握することが、適切な調査設計の第一歩となります。

端的に言えば、定性調査が「なぜ?(Why?)」を探求し、物事の質的な側面や背景、深層心理を理解しようとするのに対し、定量調査は「どれくらい?(How many?)」を問い、物事の量的な広がりや割合、構成比を数値で明らかにしようとします。

以下の表は、両者の主な違いをまとめたものです。さらにそれぞれのメリットとデメリットも考慮することで適切な種類の調査方法の選択が可能です。

比較項目定性調査定量調査
目的仮説の発見、深層心理の理解、原因の探求仮説の検証、市場の実態把握、割合の算出
得られるデータ言葉、行動、文脈、感情などの「質的データ」人数、割合、満足度スコアなどの「量的データ」
主な手法インタビュー、行動観察、ワークショップなどWebアンケート、会場調査、郵送調査など
対象人数少数(数名~十数名)多数(数百名~数千名)
分析方法発言や行動の解釈、構造化統計解析、グラフ化

定性調査のメリット・デメリット

前述の通り、定性調査のメリットは、数値だけでは見えない消費者の生の感情や、行動の裏にある複雑な文脈を深く理解できる点にあります。

予想外の発見から新しい仮説が生まれることも少なくありません。

一方、デメリットとしては、対象者が少数であるため、その結果を市場全体の意見として一般化することはできず、調査者の解釈に主観が入り込む可能性も否定できません。

定量調査のメリット・デメリット

これに対して定量調査のメリットは、多数のサンプルから得られた数値データに基づいているため、結果の客観性が高く、統計的な裏付けを持って全体像を語れる点にあります。

しかし、その数値が「なぜ」そうなっているのかという理由や背景までは、深掘りすることが困難です。

このように、両者は互いの弱点を補い合う補完関係にあります。したがって、マーケティング課題を多角的に解明するためには、両者の特性を理解し、適切に使い分ける、あるいは組み合わせることが極めて大切になります。

アンケートなどの定量調査との連携

定性調査と定量調査は、それぞれ単独で実施するだけでなく、連携させて用いることで、その価値を飛躍的に高めることが可能です。

この連携アプローチにより、調査結果の信頼性と説得力が増し、より精度の高い意思決定につなげられます。連携には、主に二つのパターンが存在します。

パターン1:定性調査から定量調査へ(仮説発見→検証)

一つ目は、まず定性調査を行って仮説を発見し、その後に定量調査でその仮説が市場全体にどの程度当てはまるのかを検証する流れです。

例えば、新しい飲料水の開発を検討しているとします。まず数名にデプスインタビューを実施し、「仕事の合間の気分転換に、少し贅沢な気持ちになれるものが欲しい」「健康のために飲むが、美味しさも妥協したくない」といった、様々なニーズやインサイトを抽出します。

次に、これらのインタビューから得られた「贅沢な気分転換」「健康と美味しさの両立」といった仮説を基に、Webアンケートの質問項目や選択肢を作成します。そして、数千人規模のアンケート調査で、「あなたが飲料水に求める価値はどれですか?」と問いかけ、各価値観を持つ人が市場にどれくらいの割合で存在するのかを量的に検証します。この流れによって、感覚的に得られた仮説に客観的な裏付けを与えることができます。

パターン2:定量調査から定性調査へ(実態把握→深掘り)

二つ目は、先に定量調査で市場全体の傾向を把握し、その結果浮かび上がってきた特定の事実や謎について、定性調査でその理由を深掘りする流れです。

例えば、自社製品の顧客満足度をアンケート調査で測定したところ、「総合満足度は高いが、20代の若年層だけ満足度が著しく低い」という結果が出たとします。この数値データだけでは、なぜ若年層の満足度が低いのか、その原因までは分かりません。

次にアンケート回答者の中から「満足度が低いと答えた20代」を数名抽出し、グループインタビューを実施、彼らに対話を通じて直接理由を尋ねることで、「デザインが古く感じる」「SNSでの情報発信が足りない」「もっと手軽に購入できる場所が欲しい」といった、具体的な不満点や改善のヒントが見えてきます。

これらのことから、二つの調査手法を適切に組み合わせることで、課題の発見から原因の特定、そして解決策の立案まで、一貫性のある強力なリサーチプロセスを構築することが可能になります。

定性調査の種類に関してよくある質問

Q
グループインタビューとデプスインタビューはどう使い分けますか?
A

広く多様な反応や着想を短時間で集めたい探索段階ではグループインタビュー、個人の意思決定プロセスや感情の深層を丁寧に掘り下げたい段階ではデプスインタビューが有効です。前者は相互作用でアイデアが広がる一方、同調圧力の影響を受けやすく、後者はセンシティブなテーマでも本音を引き出しやすい代わりに人数は少数で時間コストがかかります。

Q
行動観察(エスノグラフィー)はインタビューと何が違い、どんなときに選ぶべきですか?
A

インタビューが発言を通じて「理由」を聞き出すのに対し、行動観察は生活や利用の現場で起きている事実そのものを捉え、言語化されていない不便や習慣からインサイトを導きます。使用文脈が成果に直結するUI/UXや日用品・家電、店舗行動などで特に効果的で、「本人も気づいていない摩擦点」や代替的な使い方の発見に向きます。

Q
KOLインタビューはどんな場面に適していますか?
A

対象領域の専門家から戦略レベルの知見を得たいときに選びます。医療やBtoBなど専門性が高い市場で、臨床・業界構造・技術潮流といった俯瞰視点を短時間で集約できるのが強みです。一般消費者のデプスでは得にくい「採用条件」「受容性のハードル」「将来トレンド」の示唆が得られる一方、リクルートと謝礼、モデレーターのドメイン知識が成功の前提になります。

定性調査の種類を徹底解説!目的別の手法と選び方と比較のまとめ

この記事で解説した定性調査の「種類」に関してポイントをまとめました。チェック・ポイントしてもご活用ください。なお定性調査をより深く、体系的に学ぶための記事もご用意しています。

定性調査の完全ガイド|目的・種類・やり方・分析手法をプロが解説

「そもそも定性調査とは何か?」という基本から、目的や種類、定量調査との違いといった基礎から、分析・レポート作成まで、全体像を体系的に解説した「まとめ記事」です。まずは基本からしっかり押さえたい、という方におすすめです。

  • 定性調査は行動や意見の「なぜ」を深く探る手法
  • 定量調査は「どれくらい」を数値で把握する調査
  • グループインタビューは多様なアイデア出しに最適
  • 参加者同士の相互作用が新たな視点を生み出す
  • デプスインタビューは個人の本音を深掘りできる
  • 1対1の対話で個人的なテーマも扱いやすい
  • 行動観察は言葉にならない無意識のニーズを発見
  • 実際の生活環境での「ありのまま」を捉える
  • ワークショップは参加者とアイデアを共創する手法
  • MROCはオンラインで継続的に意見を収集できる
  • KOLインタビューは専門家の戦略的知見を得る
  • 調査の成功は目的を明確にすることから始まる
  • 各手法にはメリットとデメリットが必ず存在する
  • 定性調査と定量調査の組み合わせが理解を深める
  • 最適な手法を選びマーケティング課題を解決しよう