1型糖尿病の治療に関して、Vertex Pharmaceuticalsが開発中の幹細胞由来膵島細胞療法「Zimislecel(VX-880)」の最新の治験データを発表しましった。
これまでの治療の常識を塗り替える可能性を秘めています。
本記事では、同社発表の最新の臨床データをもとに、治療効果、安全性、今後の規制動向についてまとめています。
Zimislecelによる治療進展と今後の展望

- Zimislecelの概要と投与方法
- 治療効果の具体的な成果
- 安全性と免疫抑制の課題
- 市場性と商業展開の準備状況
Zimislecelの概要
Zimislecelは、幹細胞から育てた完全分化の膵島細胞を使い、失われたインスリン分泌機能を補う治療法です。
この細胞は患者の肝門脈に単回点滴で投与され、体内で膵島の役割を果たします。手術の必要はなく、確立された免疫抑制プロトコルと組み合わせて投与されるため、移植医療の知見を活かした形といえます。
現在は、標準のステロイドフリー免疫抑制として抗胸腺細胞グロブリン、タクロリムス、シロリムスが用いられています。
有効性を裏付ける臨床結果
最新のFORWARD試験では、少なくとも1年追跡された12人の患者が解析対象となりました。
その全員がHbA1cを7%未満に抑え、重度低血糖の発生はゼロでした。さらに、83%にあたる10人が外因性インスリンを完全に不要とし、自己の血糖調整機能を回復しました。
この結果は、現行治療では達成が困難だった安定的な血糖管理を意味し、患者の生活の質を大幅に改善すると期待されます。
安全性とリスク管理のポイント
副作用については、下痢や頭痛、吐き気が多く報告されていますが、大部分は軽度から中等度で収まっています。
ただし、免疫抑制を伴うため感染症や免疫関連のリスクは残ります。報告された2例の死亡は治療に直接起因するものではなく、背景疾患や手術合併症が影響していました。
これらを踏まえると、免疫抑制の最適化や新しい低免疫原性細胞の開発が、今後の焦点になるでしょう。
市場性と商業展開の準備状況
VertexはZimislecelのフェーズ3試験を進行中で、2026年にグローバル規制当局への提出を予定しています。
初期の対象患者数は米国と欧州で約60,000人を想定し、深刻な低血糖発作を繰り返す患者に優先提供される計画です。
さらに、製造能力と販売体制の強化を同時に進めており、スムーズな市場投入が見込まれています。将来的には、免疫抑制を不要とする遺伝子編集型の後続品も研究段階にあります。
参照:「ADA25: Most type 1 diabetes patients off insulin in Vertex’s cell therapy trial」|参照元
Vertex社の1型糖尿病患者対象の遺伝子治療「Zimislecel(VX-880)」のP3治験発表
- 幹細胞由来の膵島細胞療法が1型糖尿病治療に革新をもたらす可能性あり
- Zimislecelは門脈内への単回点滴で投与される
- 投与後のCペプチド検出で膵島の定着が確認された
- 12名全員が1年間HbA1cを7%未満に維持した
- 重度低血糖発作の再発は確認されなかった
- 83%の患者が外因性インスリンを完全に中止
- 多くの副作用は軽度から中等度に留まった
- 2件の死亡例があるが治療関連とは認められていない
- 免疫抑制の長期負担が課題として残る
- 規制当局への申請は2026年を予定している
- 約6万人の患者が初期対象と想定されている
- 高いQOL改善が期待され、治療負担が軽減される
- 連続的な技術改良が進行中で後続品の開発も視野
- 製造・商業体制の拡充が同時進行している
- 今後のフェーズ3結果が普及の鍵を握る
