医薬品開発における人工知能(AI)活用の潮流が加速する中、グローバルテクノロジー企業XtalPiと製薬大手ファイザーは、次世代分子モデリングプラットフォームの開発を目指し、既存の協業関係をさらに拡大することを発表しました。
本提携は、両社がこれまでに築いてきた科学的成果と信頼関係を基盤に、新たなフェーズへと進展します。
XtalPiの高度な物理学的手法とAIを融合した技術は、ファイザーの小分子化合物研究を加速させる役割を担うとされ、創薬領域における大きな前進が期待されます。
ニュースのポイント
- XtalPiとファイザーの協業の歴史と進化
- 次世代AI創薬プラットフォームの狙い
- XFEP導入による開発支援の具体的な内容
- 協業が示す今後の可能性
XtalPiとファイザーの協業の歴史と進化

XtalPiとファイザーの関係は、2016年に行われた結晶構造予測コンテストが出発点でした。このときXtalPiは極めて高い精度で構造を予測し、ファイザーの注目を集めました。
その後、2018年には両社が正式な協業を開始。量子力学と機械学習を融合した分子予測技術の共同開発に取り組み、パンデミック下で開発された経口COVID-19治療薬「パクスロビド」の開発にも寄与しました。
XtalPiの技術は、類似構造のポリモルフ(多形)を識別することで、薬剤候補の絞り込みを加速させました。
こうして積み重ねてきた協力の成果は、2024年の共同論文でも明らかになっています。
第一世代のAIプラットフォーム「XFF」は、小分子の構造予測や結合親和性の計算において高い精度を実現し、薬効の予測精度向上に大きく貢献しています。
次世代AI創薬プラットフォームの狙い
今回の提携拡大は、既存技術の改良にとどまりません。ファイザーの急速に拡大する小分子化学空間を対象に、より高速かつ正確な予測モデルの構築が目指されています。
XtalPiが手がける新たな分子モデリング基盤では、従来の物理ベースの手法に加え、AIによるスケーラビリティと処理速度の向上が図られています。
これにより、膨大な化合物ライブラリに対するスクリーニングや薬効予測が、従来よりも短時間で実行可能になると考えられます。
さらに、開発プラットフォームはクラウドベースで設計されており、ファイザーの研究者が柔軟に活用できる直感的な操作性も備える予定です。
XFEP導入による開発支援の具体的な内容
拡張された協業では、XtalPiが開発する「XFEP(Free Energy Perturbation)」ツールの導入が目玉の一つです。
これは分子間の結合エネルギーを高精度で予測し、薬剤候補の有効性や選択性の検証を行うための計算手法です。
XFEPは、パラメータのカスタマイズ機能を備えており、研究ごとのニーズに応じた柔軟な運用が可能です。
これにより、薬剤設計の初期段階から臨床候補の選定まで、あらゆるフェーズでの意思決定の迅速化が期待されます。
また、予測モデルの強化は、副作用の少ない候補物質の発見や、既存薬の改良にも貢献すると見られています。
今後の可能性
このような取り組みは、創薬におけるAI活用の成熟を示す一例といえます。
XtalPiのJian Ma CEOも、今回の協業拡大を「物理とAIを融合した予測プラットフォームの進化」と位置づけており、次世代医薬品の開発速度と精度の飛躍的な向上を目指す姿勢が明確です。
一方で、AI創薬にはアルゴリズムの信頼性やデータの偏りなど、いくつかの技術的課題も伴います。そのため、技術開発だけでなく、運用の透明性や検証性の確保も重要なテーマとなります。
この協業が成功すれば、グローバルな製薬業界全体におけるAI導入のモデルケースとなりうるでしょう。
参照文献
XtalPi and Pfizer Expand Strategic Collaboration to Advance AI-Driven Drug Discovery and Materials Science Simulations |PR Newswire(XtalPi Inc. プレスリリース)
ファイザーとXtalPi、AI駆動の創薬と材料科学に向けた戦略的協業を拡大
- ファイザーとXtalPiは協業を拡大し、次世代AI創薬基盤を開発中
- 協業は2016年の構造予測コンテストを契機に始まった
- 初期段階では量子力学とAIを組み合わせた予測技術を共同開発
- COVID-19治療薬「パクスロビド」の開発支援に成功
- 2024年にはAI予測技術XFFの性能を共同で論文発表
- 新たな提携ではXFEPによる結合親和性計算を導入
- XFEPはパラメータカスタマイズが可能で柔軟性が高い
- クラウド型プラットフォームで直感的な操作性を提供
- 大量の化合物スクリーニングにも対応できる高処理性能
- AIと物理ベース手法を融合し予測精度を強化
- 小分子医薬品の効率的な開発を支援
- 今後は副作用低減や既存薬改良にも貢献が見込まれる
- 技術的課題としてはAI予測の信頼性も焦点となる
- 本提携はグローバル製薬業界への影響が大きいと予測される
- 成功すれば他企業への波及効果も期待できる
