Unnatural Products、argenxと提携 経口マクロサイクリックペプチドで“創薬困難”な標的に挑む

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米バイオテクノロジー企業Unnatural Products, Inc.(UNP)は、グローバル免疫疾患治療企業argenxと戦略的な共同研究契約を締結しました。

本提携は、経口投与可能なマクロサイクリックペプチドを活用し、これまで治療が難しいとされてきた疾患標的にアプローチすることを目的としています。

契約総額は最大約15億ドルに達し、UNPにとって過去最大規模のパートナーシップとなります。argenxによる出資も含まれており、マクロサイクリック創薬への注目の高まりがうかがえます。

記事のポイント

  • Unnatural Productsとargenxの提携は、過去最大級の契約規模を持つ戦略的連携
  • マクロサイクリックペプチドは、“創薬困難”な標的に対する新たな治療アプローチを可能にする
  • UNPのAI主導型創薬プラットフォームは、短期間で候補物質を発見できる技術的強みを持つ
  • 合成技術・構造設計・モデリングの進化がマクロサイクル領域の成長を加速

創薬の未来をひらくパートナーシップ

  • argenxとの契約の概要と背景
  • UNPの技術的強みとプラットフォームの特徴
  • マクロサイクリックペプチドが注目される理由
  • 今回の提携がもたらす可能性

argenxとの契約の概要と背景

今回の提携において、UNPはargenxから前払い金および短期的な支払いに加え、研究開発費の提供を受けます。また、研究・開発・規制対応・商業化の各段階で成果に応じて、最大約15億ドルのマイルストン支払いと販売ロイヤリティを受け取る可能性があります。

この契約は単なる研究提携にとどまらず、argenxによるUNPへの資本投資も含まれています。これは、argenxがUNPの成長性と技術の独自性を高く評価していることの表れと言えるでしょう。

さらに、UNPは開発候補物質が前臨床段階(IND申請前)に到達するまで研究開発を担当し、その後argenxが独占的に開発・商業化を行う仕組みとなっています。複数の疾患領域を対象とするこの提携は、両社にとって持続的なパイプライン拡充の起点となる可能性があります。

UNPの技術的強みとプラットフォームの特徴

UNPの最大の武器は、AIを活用した独自の創薬プラットフォームです。AIによる化合物設計、大規模な並列合成、そして「生物学への直接スクリーニング(direct-to-biology screening)」という三位一体の技術により、UNPは短期間で候補化合物を見出す能力を有しています。

このアプローチは、抗体に匹敵する選択性を持ちつつ、経口投与が可能なペプチド医薬品の開発を可能にする点で、従来の創薬技術との差別化要因となっています。特に、これまで小分子薬や抗体では届きにくかった細胞内標的に対して、新たな選択肢を提供できることが注目されています。

このプラットフォームの成熟度は、2023年のMerck & Co.との提携(総額約2億2,000万ドル)を経て飛躍的に向上し、今回のargenxとの契約額はそれを大きく上回る内容となっています。

マクロサイクリックペプチドが注目される理由

近年、マクロサイクリックペプチドは創薬分野において新たな注目を集めています。これは、従来困難とされていた標的に対して、経口投与可能な医薬品としてアプローチできる特性によるものです。

このようなペプチドは、以下のような利点を持っています。

  • 小分子薬のような取り込みやすさ
  • 抗体に近い高い選択性
  • 生体内での安定性の高さ
  • 細胞内の標的にも到達できる構造特性

一方で、合成や構造設計の難しさから、長らく研究開発のハードルが高い領域でもありました。しかし、近年の合成技術や構造解析、機械学習の進歩によって、その課題は急速に克服されつつあります。

実際、UNPのCEOであるキャメロン・パイ氏も「この領域には追い風が吹いている」と述べており、戦略的投資と提携が進んでいる現状はそれを裏付けています。

今回の提携がもたらす可能性

この共同研究は、単なる個別案件にとどまらず、業界全体の動向にも大きな影響を与えると見られます。特に以下の点で意義深い展開と考えられます。

まず、AIと化学合成、バイオスクリーニングを統合した創薬手法が、実際に大型契約に結びついていることが明示された点です。これは、今後の創薬アプローチの方向性を示す一例となるでしょう。

また、免疫疾患に強みを持つargenxと、マクロサイクリック創薬に特化したUNPの連携は、それぞれの強みを補完し合う形でシナジーを生み出す可能性があります。今後の開発パイプラインにおいて、複数の新規候補物質が生まれる期待が高まります。

さらに、argenxによるUNPへの出資が含まれている点も見逃せません。これは、単なる業務提携を超えた、中長期的な信頼関係の構築とみることができます。

参照

Unnatural Products Announces Multi-Target Collaboration with argenx to Develop Oral Macrocyclic Peptide Therapeutics|プレスリリース Unnatural Products

Unnatural Products、argenxと提携 経口マクロサイクリックペプチドで“創薬困難”な標的に挑む

  • Unnatural Productsはargenxと最大約15億ドルの提携契約を締結
  • 提携は経口マクロサイクリックペプチドによる創薬を目的とする
  • UNPは前臨床段階まで研究開発を担当し、その後argenxが引き継ぐ
  • 合意には前払い金、近接支払い、R\&D資金、マイルストンが含まれる
  • argenxはUNPへの資本投資も実施する予定
  • UNPのプラットフォームはAIによる分子設計と高速スクリーニングを組み合わせる
  • 抗体のような特異性と経口投与可能な分子の利便性を兼ね備える
  • マクロサイクリックペプチドは従来届かなかった細胞内標的にも作用可能
  • 合成・構造・モデリング技術の進化がこの領域の成長を支えている
  • UNPは以前Merckとも約2億2,000万ドルの契約を結んでいた
  • 今回の契約はそれを大きく上回る規模で、プラットフォームの成熟を示す
  • マクロサイクリック創薬は大手企業からの関心が高まっている
  • argenxは免疫疾患領域での開発力があり、シナジーが期待される
  • 提携により複数疾患への応用が可能となる点が特徴的
  • 業界全体の創薬アプローチに影響を与える先進的な事例である