サノフィ、Blueprint Medicinesを買収へ 希少免疫疾患領域と免疫学パイプラインを拡充

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グローバル製薬大手のサノフィは、希少疾患および免疫学の分野における事業強化を目的として、米バイオ医薬品企業Blueprint Medicinesの買収を発表しました。本件は、2025年における欧州製薬企業として最大級の取引の一つとされており、今後の免疫領域における競争構造や製品開発戦略に大きな影響を与える可能性があります。

Blueprint Medicinesは、全身性肥満細胞症(SM)を含むKIT変異に関連する希少疾患領域に特化した企業であり、同社の主力製品Ayvakit(欧州名:Ayvakyt)は、進行性および非進行性SMに対する唯一の承認薬です。今回の買収により、サノフィはすでに承認済みの医薬品のみならず、次世代治療薬候補や初期開発段階の免疫学パイプラインも取り込むことになります。

さらに、Blueprint Medicinesが米国内で構築してきた臨床・商業ネットワークもサノフィの既存基盤と高い親和性を持ち、今後の研究開発や製品上市の加速が期待されます。本記事では、買収の全体像と背景、戦略的意義、今後の展望までを詳しく解説します。

サノフィによるBlueprint Medicines買収の全容

市場動向 新薬開発
  • Blueprint Medicines買収の背景と概要
  • Ayvakitが示す成長性と戦略的価値
  • 注目の新薬候補:BLU-808とelenestinib
  • 財務的インパクトと株主への影響
  • 今後の見通しと業界への影響

Blueprint Medicines買収の背景と概要

サノフィは、Blueprint Medicinesの買収により、希少免疫疾患領域での治療ポートフォリオを強化するとともに、有望な研究開発資産を獲得します。買収額は最大で95億ドルに上り、1株あたり129ドルの現金支払いに加えて、今後の開発進捗に応じた条件付き価値権(CVR)が付与されます。

これらの条件により、Blueprint Medicinesの既存株主は最大で1株あたり135ドルを受け取る可能性があり、5月30日時点の終値に対して最大約40%のプレミアムとなります。買収完了は2025年第3四半期が予定されており、規制当局および株主の承認が前提となります。

Ayvakitが示す成長性と戦略的価値

Blueprint Medicinesの主力製品であるAyvakit(欧州名:Ayvakyt)は、全身性肥満細胞症(SM)に対する唯一の承認薬であり、サノフィにとって重要な戦略的資産となります。この薬は、KITおよびPDGFRAという特定の変異キナーゼを阻害することで、病気の根本原因に働きかける特徴を持ちます。

2024年には売上が4億7900万ドルに達し、2025年第1四半期には前年同期比60%増の約1億5000万ドルを記録しました。将来的には2030年までに年間売上20億ドル規模への成長が見込まれており、長期的な収益源としての期待も高まっています。

注目の新薬候補:BLU-808とelenestinib

Ayvakitに続く有望な候補として、BLU-808とelenestinibの2つの薬剤が注目されています。

BLU-808は、野生型KITを標的とする経口阻害薬であり、慢性蕁麻疹やアレルギー性鼻結膜炎など、広範囲の免疫関連疾患に応用可能と考えられています。現在は治験段階にあり、開発および規制面でのマイルストーン達成時にはCVRによる報酬支払いが設定されています。

一方、elenestinibはKIT D816V変異に選択的に作用する次世代治療薬です。現在実施中のHARBOR試験(第2/3相)では、非進行性SM患者に対する治療効果と安全性が評価されています。中枢神経系への影響が少ないという特性から、治療の選択肢を広げる可能性があります。

財務的インパクトと株主への影響

今回の買収は、株主にとっても魅力的な条件が提示されています。現金支払いに加えて付与されるCVRでは、BLU-808に関するマイルストーン達成に応じて最大6ドルの追加支払いが発生します。

この構成は、将来の研究成果に連動した報酬設計となっており、投資家にとっても成長ポテンシャルを共有できる点が特徴です。なお、サノフィは本買収に関し、既存資金および新規債務によって資金調達を行う予定であり、買収自体には財務的制約は設定されていません。

2025年の財務見通しへの直接的な影響は軽微とされている一方で、2026年以降は粗利益率、事業利益、1株当たり利益(EPS)への貢献が見込まれています。

今後の見通しと業界への影響

サノフィは今回のBlueprint Medicines買収にとどまらず、2024年以降も積極的なM\&Aを継続しています。Inhibrx、Vigil Neuroscience、Dren Bioなどを次々と傘下に加え、免疫学および神経変性疾患の領域に対するプレゼンスを高めています。

また、2030年までに米国で200億ドル規模の研究・製造投資を行う計画も進行中です。これにより、米国市場における競争力を一層高め、ローカル生産体制の強化にもつながります。

これらの動きは、サノフィが単なる買収ではなく、企業戦略として免疫学に特化し、次世代の成長分野を押さえにかかっていることを示しています。今後の業界動向を見極める上でも、今回の買収は重要な指標になると考えられます。

参照:「Sanofi to acquire Blueprint Medicines, expanding portfolio in rare immunological disease and adding early-stage pipeline in immunology」|GlobalNewswire

サノフィ、Blueprint Medicinesを買収へ 希少免疫疾患領域と免疫学パイプラインを拡充まとめ

  • サノフィがBlueprint Medicinesを最大95億ドルで買収
  • 1株129ドルの現金+CVRにより最大6ドル追加支払いの可能性
  • 買収対象は希少免疫疾患やKIT変異関連疾患に強みを持つ企業
  • 主力製品AyvakitはSMに対する唯一の承認薬
  • Ayvakitの売上は2024年に約4億7900万ドルを記録
  • 2030年には年間売上20億ドルに成長する可能性あり
  • BLU-808はアレルギー性疾患に応用可能なKIT阻害薬
  • ElenestinibはHARBOR試験で有効性・安全性を評価中
  • CVRでの追加報酬はBLU-808の成果に連動
  • 株主へのプレミアムは最大40%に達する
  • 財務ガイダンスへの影響は限定的
  • 2025年第3四半期に買収完了を予定
  • 今回の買収は欧州医薬業界で今年最大級の取引
  • サノフィは免疫学に特化したM\&A戦略を継続
  • 米国での製造・研究投資をさらに加速させる方針