Rocheが、米国市場において医薬品の直接販売(DTP: direct-to-patient)モデルを導入する可能性を示唆しました。これにより、従来の流通経路から仲介業者を排除し、価格の引き下げを狙う方針です。
CEOであるThomas Schinecker氏は、複数の疾患領域でこのモデルの有効性に言及しており、現在は米国政府との協議も進行中です。Eli LillyやPfizerといった他の製薬大手の動きも相まって、米国医薬品流通の構造改革が注目されています。
ロシュ、米国で医薬品の直販モデルを検討か? 仲介業者を排除することで価格引き下げをねらう

- 米国で検討される医薬品の直販モデルとは
- なぜ今、仲介業者排除が議論されているのか
- 医薬品価格への影響と消費者への利点
- 米国市場への長期的な投資とパイプラインの進捗
- 今回の動きが意味すること
米国で検討される医薬品の直販モデルとは
Rocheは現在、米国市場において医薬品を患者へ直接販売する新たなビジネスモデルの導入を模索しています。
これは、既存の流通網である薬剤給付管理業者(PBMs)などの仲介者を介さずに、企業から患者に医薬品を届ける仕組みです。CEOのThomas Schinecker氏は、「リスクを取らずに利益の半分を得るような存在が価格を引き上げている」と述べ、業界の構造的な問題に言及しました。
このモデルは特定の治療薬に限定されるものではなく、同社の幅広い製品群すべてに適用可能であるとされています。
中でも、多発性硬化症の治療薬「Ocrevus」については、PBMsの上乗せ料金により価格が競合品を下回っていたにもかかわらず高騰した事例が報告されており、改革の必要性が浮き彫りとなっています。
なぜ今、仲介業者排除が議論されているのか
この動きの背景には、米国政府による医薬品価格改革の機運があります。近年、PBMsなどの仲介業者が医薬品価格に大きな影響を及ぼしているとの批判が高まっており、大手製薬企業もそれに対応する形で流通構造の見直しを進めています。
実際、Eli LillyやNovo Nordisk、Pfizerなどの企業も類似の直販モデルを試行し始めており、業界全体としてもトレンドになりつつあります。
また、Rocheは関税の影響にも備えて在庫を増やしており、米国内での安定供給を確保する準備も整えています。
こうした対応が、政府との信頼関係構築にも寄与する狙いがあると考えられます。
医薬品価格への影響と消費者への利点
仲介業者を排除することで、医薬品価格が大幅に下がる可能性がある点は見逃せません。
実際、Ocrevusのような治療薬では、製薬会社が意図した価格設定がPBMsの存在によって歪められてしまうケースもあるからです。
このような直販モデルが実現すれば、以下のような利点が見込まれます。
- 中間マージンが排除されることで価格が透明化
- 医療費負担の軽減が可能
- 治療の継続性が保たれやすくなる
ただし、物流や処方管理など新たな課題が発生する可能性もあり、導入には慎重な設計が求められます。
米国市場への長期的な投資とパイプラインの進捗
Rocheは、米国において今後5年間で500億ドルの投資を行う計画を発表しています。
これは、医薬品の製造体制および研究開発(R&D)活動を強化するものであり、同社の米国市場への長期的な関与を明確に示しています。
直近の業績においても、Pharmaceuticals Divisionの売上は前年同期比で10%増加し、特にPhesgo、Xolair、Hemlibra、Vabysmo、Ocrevusなどが成長をけん引しました。
また、Spinal muscular atrophy治療薬「Evrysdi」や乳がん治療薬「Itovebi」の欧州承認など、パイプラインの進展も順調です。
一方で、TIGIT抗体「tiragolumab」の開発中止など、研究開発における厳しい現実も明らかとなっています。
このように、攻めと撤退を柔軟に切り替えながら、収益性の高い領域にリソースを集中する戦略が進められています。
今回の動きが意味すること
Rocheの動きは、単なる企業の販売戦略変更にとどまらず、米国の医薬品市場全体に影響を及ぼす可能性があります。
仲介業者の存在を再評価し、製薬企業と患者の関係をより直接的なものに変えていくことが求められているのかもしれません。
加えて、政府との対話や投資強化によって、企業としての信頼性と市場影響力を高める姿勢も鮮明です。
今後の展開次第では、他社の追随や業界全体の構造改革が一気に進む可能性もあるため、注視が必要です。
記事のまとめ:ロシュ、米国で医薬品の直販モデルを検討 ─ 仲介業者排除で価格引き下げへ
- Rocheは米国での医薬品直販モデル導入を検討中
- 価格高騰の要因となるPBMs排除が目的
- 多発性硬化症治療薬Ocrevusが価格問題の一例
- 米国政府との協議も進行中で関税対策も実施済み
- 同様の動きはEli LillyやPfizerにも見られる
- 直販モデル導入で患者負担の軽減が期待される
- 医薬品価格の透明性向上が見込まれる
- 米国への500億ドル規模の投資を表明
- 研究開発の成果と撤退判断が同時進行
- 米国市場における企業の信頼性確保が狙い
