バイオ医薬品企業Nektar Therapeuticsは、アトピー性皮膚炎を対象とした第IIb相臨床試験「REZOLVE-AD」において、自社開発のIL-2経路作動薬「rezpegaldesleukin(レズペグ)」が主要および副次評価項目の多くで統計的有意性を達成したと発表しました。
この薬剤は、かつて提携していたイーライリリーが開発を中止した経緯があるにもかかわらず、今回の試験で有望な効果が確認され、注目を集めています。
この記事では、試験結果の詳細、安全性、今後の開発計画などについて解説します。
記事のポイント
- レズペグは主要・副次評価項目の多くで有意な改善を示した
- 副作用は主に軽度で、安全性は高いと考えられる
- 第III相試験の開始が2026年に予定されている
- イーライリリーとの訴訟が進行中で、今後の展開が注目される
- 円形脱毛症への応用に関する試験結果も年内に公表予定
REZOLVE-AD試験が示すレズペグの可能性

- アトピー性皮膚炎における主要評価項目と副次評価項目の結果
- 安全性と副作用の傾向
- 今後の開発計画とリリーとの法的対立
- 試験結果の意義と今後の期待
アトピー性皮膚炎における主要評価項目と副次評価項目の結果
レズペグは、IL-2受容体複合体を標的とし、制御性T細胞(Treg)を増殖させることで過剰な免疫反応を抑える仕組みを持ちます。
REZOLVE-AD試験では、393名の中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者が対象となり、3つの用量群とプラセボ群に無作為に割り振られました。
16週時点での主な結果は以下の通りです。
| 用量 | EASI改善率(平均) | EASI-75達成率 | かゆみスコア改善率(Itch NRS) |
|---|---|---|---|
| 24 μg/kg(q2w) | 61% | 42% | 42% |
| 18 μg/kg(q2w) | 58% | 46% | 35% |
| 24 μg/kg(q4w) | 53% | 34% | 23% |
| プラセボ | 31% | 17% | 16% |
また、皮膚の見た目に関する評価指標であるvIGA-AD 0/1や、BSA(体表面積)改善率、EASI-90などでも、特に高用量群で統計的に有意な改善が確認されました。これらの結果は、レズペグが疾患の重症度に関わらず有効である可能性を示唆しています。
安全性と副作用の傾向
安全性の観点では、注射部位反応(ISR)が最も多く報告されましたが、大半は軽度から中等度であり、ほとんどが自然に軽快しました。
ISRによる治療中止は1%未満であり、全体として安全性は良好と評価されています。
以下に副作用の発現状況をまとめます。
| 副作用 | レズペグ群 | プラセボ群 |
|---|---|---|
| ISR(注射部位反応) | 69.7% | 記載なし |
| 好酸球増加症 | 7.8% | 2.7% |
| 発熱 | 6.3% | 2.7% |
| 頭痛 | 6.3% | 4.1% |
| 関節痛 | 5.0% | 1.4% |
特に注目すべき点として、結膜炎や口腔潰瘍、口唇ヘルペスなど、他の治療薬で懸念される副作用の発現は見られませんでした。
これは、Tregを利用する広範な免疫制御メカニズムの安全性を裏付ける結果と考えられます。
今後の開発計画とリリーとの法的対立
Nektar社は、今回の結果を受けて2026年に第III相試験の開始を予定しています。今後6か月間で製剤化や分析試験などの準備作業を進める方針です。
また、試験参加者の長期データは2026年第1四半期に得られる予定です。
一方で、イーライリリーとの間での法的対立も継続しています。
リリーは2023年、レズペグのSLEに対する効果が不十分であるとして提携を打ち切りましたが、Nektarはこれに対し「データの解析ミスがあった」として損害賠償を求める訴訟を提起しています。
現時点では、今回のポジティブな試験結果が訴訟の行方にどう影響するかは明言されていませんが、Nektar側は訴訟を「強く追及する」と表明しています。
試験結果の意義と今後の期待
今回のREZOLVE-AD試験の結果からは、レズペグがアトピー性皮膚炎の新たな治療選択肢となり得ることが明らかになりました。
特に、早期からかゆみの軽減や皮膚症状の改善が確認された点は、患者の日常生活の質の向上につながる可能性があります。
加えて、レズペグはTh2型炎症に関与する複数のバイオマーカー(TARC、IL-19、ペリオスチン、MDCなど)を用量依存的に低下させることも確認されており、免疫バランスの調整薬としての可能性を広げています。
同社は今後、円形脱毛症を対象としたREZOLVE-AA試験の結果も2025年内に発表予定としており、レズペグの応用範囲はさらに広がると見られます。
参照文献・記事
- REZOLVE-AD Phase 2b Study of Rezpegaldesleukin Meets Primary and Key Secondary Endpoints in Patients with Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis| PR Newswire
リリーが開発中止したNektar社のIL-2作動薬レズペグ(rezpegaldesleukin)がアトピー性皮膚炎試験で有望な結果を示す
- レズペグはIL-2受容体を標的としたTreg増殖促進薬である
- アトピー性皮膚炎を対象とした第IIb相試験で有効性を示した
- 高用量群でEASIスコア61%の改善が確認された
- EASI-75およびEASI-90の達成率でも有意な差を記録した
- かゆみスコア(Itch NRS)の改善も良好であった
- プラセボ群との比較で統計的有意差が見られた
- 効果発現が早期である点が臨床上の利点とされる
- 注射部位反応が最も多い副作用であったが軽度が中心
- 重篤な副作用は少なく、安全性に関して大きな懸念はない
- Th2型炎症に関連するバイオマーカーの減少が確認された
- 試験結果により免疫調整型治療薬としての有望性が高まった
- FDAからファストトラック指定を受けている
- 円形脱毛症に関する別の試験も進行中である
- イーライリリーとの提携解消後に法的対立が続いている
- 第III相試験の開始は2026年を予定している
