米メルク(Merck & Co.)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)向けの新薬「Ohtuvayre(エンシフェントリン)」を擁する英ベロナファーマ(Verona Pharma)を総額約100億ドル(約1兆5,600億円)で買収すると発表しました。
この買収は、メルクの主力がん治療薬「キイトルーダ」の特許切れによる収益減への備えと、呼吸器疾患分野の成長戦略の一環と位置付けられています。
Ohtuvayreは、過去20年以上で初の新しい作用機序を持つCOPD維持療法として注目されており、発売初年度から力強い成長を見せています。
メルクは今回の買収により、同製品を含む心肺領域の治療薬ラインアップを一層拡充する見込みです。
メルクによるベロナファーマ買収の全容

- Ohtuvayreとはどのような薬か
- メルクの買収背景と戦略的意義
- 今後の市場展望とリスク要因
Ohtuvayreとはどのような薬か
Ohtuvayre(一般名:エンシフェントリン)は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の維持治療薬として、2024年に米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得した吸入薬です。
この薬剤は、気管支拡張と非ステロイド系抗炎症作用を併せ持つ初のPDE3/4選択的二重阻害剤であり、これまでの治療選択肢に変化をもたらす存在と評価されています。特に、標準的なジェット式ネブライザーを用いた投与により、肺に直接作用する点が特徴です。
米国での発売は2024年8月に開始され、2025年の第1四半期だけで売上は7,130万ドルに達しました。これはアナリストの予測を大きく上回る数字で、業界内では「過去最速のCOPD新薬ローンチ」とも評されています。
メルクの買収背景と戦略的意義
メルクがベロナファーマを買収した背景には、収益構造の変化への備えがあります。看板製品「キイトルーダ」の特許満了が迫る中、収益の新たな柱が求められていました。
こうした状況下で、既に市場に出ており、今後も売上拡大が見込まれるOhtuvayreの獲得は、メルクにとって非常に魅力的な選択肢となりました。
さらに、メルクは近年、心肺疾患分野に注力しており、2021年には肺動脈性肺高血圧症薬「Winrevair」を保有するAcceleron Pharmaも買収しています。Ohtuvayreは、これらの製品群と補完関係にあり、ポートフォリオ全体の厚みを増す役割が期待されています。
今回の買収金額は1株あたり107ドルで、7月8日時点の終値に対して約23%のプレミアムが付けられました。両社の取締役会はすでに買収を承認しており、2025年第4四半期の完了を予定しています。
今後の市場展望とリスク要因
Ohtuvayreは今後、年間売上40億ドル規模に成長する可能性があると予測されています。加えて、COPD以外にも、喘息や非嚢胞性線維症性気管支拡張症といった適応拡大の臨床試験が進められており、これらの成功が将来の成長ドライバーとなる可能性があります。
ただし、いくつかのリスクにも注意が必要です。まず、安全性の観点から、Ohtuvayreには精神的副作用や逆説的気管支痙攣などが報告されています。そのため、医療現場での適切な使用が強く求められます。
また、今回の買収は英国法に基づくスキーム・オブ・アレンジメント方式で行われ、英高等法院や米国の競争当局など複数の承認が必要です。スムーズに手続きが進むとは限らず、最終的なクロージングまで不透明な要素も残されています。
米メルク、英ベロナファーマを約1兆5000億円で買収へ|COPD新薬「Ohtuvayre」で成長加速を狙う
- メルクは英ベロナファーマを約100億ドルで買収する計画
- 買収の目的はCOPD治療薬「Ohtuvayre」の獲得
- OhtuvayreはPDE3/4の選択的二重阻害剤
- 2024年にFDAの承認を取得し、米国で販売開始
- 初年度から売上が予想を大きく上回る成績を示した
- キイトルーダの特許切れを補う戦略の一環とされる
- メルクは心肺疾患分野における製品群を拡充中
- OhtuvayreはCOPD以外の疾患にも適応拡大を目指す
- 臨床試験では肺機能の有意な改善が確認された
- メルクとベロナの取締役会は本件を全会一致で承認済み
- 年間売上40億ドルに達する可能性があると予測されている
- 安全性には精神的副作用など注意点がある
- 買収は2025年第4四半期に完了予定
- 取引は英国法に基づくスキーム・オブ・アレンジメント方式で進行
- 買収によりメルクの長期的な成長基盤が強化される見込み
