これから伸びる製薬会社はどこなのか――この問いは、投資家のみならず、製薬業界で働く人々や新薬開発に関心を持つ読者にとっても、非常に気になるテーマです。
医薬品市場は今、生活習慣病や希少疾患、がん治療薬といった多様なニーズの広がりとともに、大きな構造変化を迎えています。
このような状況下で、製薬会社どこがいいのかを判断するには、単なる過去の実績だけでは不十分です。
今後の成長を見据えるには、その企業がどのようなパイプラインを持ち、どんな戦略で競争優位を築いているのかを読み解く必要があります。
本記事では、2030年世界ランキングの売上予測と、最新の時価総額データという2つの軸を中心に、製薬業界における将来性を具体的に探っていきます。
ランキングで上位に食い込む企業の特徴、急成長を遂げる新興勢力、そしてブロックバスター医薬品を武器に売上を押し上げる企業の共通点とは何か。
そうした分析を通じて、おすすめできる製薬企業を明確にし、読者が今後注目すべきプレイヤーを見極める手がかりを提供します。
記事のポイント
- 2030年世界ランキングで急成長が予測される製薬会社の動向
- 外資製薬会社ランキングの変化と日本市場への影響
- 時価総額ランキングから見た企業評価の推移と背景
- ブロックバスター医薬品の最新情報と企業成長への貢献
これから伸びる将来性の高い製薬会社【2030年の世界ランキングとブロックバスター医薬品】

- Novo NordiskとEli Lillyが急成長を遂げた背景とは
- 売上を牽引するブロックバスター医薬品の実態
- 特許切れによるリスクと各社の対策
- 今後注目される新薬と研究開発の動向
- 製薬業界の将来性を左右するキープレイヤーは?
2030年の世界ランキングで見る伸びる製薬会社
今後成長する製薬企業を考察する上で、グローバルデータ社やIQVIA社といった製薬業界向けの調査会社の発表する将来予測レポートは多くの示唆に富む情報を提供します。
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今後伸びる製薬会社を見る上では、Evaluate Pharmaが発表した2030年における世界の製薬企業ランキングから世界の製薬業界を牽引するトップ10企業から業界を展望してみたいと思います。
売上規模の変化から各社の成長力や研究開発の成果を読み取ることができ、将来性ある企業を見極める手がかりにもなります。
このランキングのなかで特に注目されるのは、Novo NordiskとEli Lillyという2社の急成長です。
どちらも肥満症治療薬や糖尿病薬という大規模市場において革新的な医薬品を次々と上市しており、売上の伸びが際立っています。
この躍進を支えているのは、GLP-1受容体作動薬であるOzempicやWegovyといったブロックバスター薬の世界的な普及です。
一方、Eli LillyもMounjaroやZepboundといったtirzepatide系の製品が市場を席巻しております。
このような流れの中で、従来からの大手であるPfizerやNovartis、Rocheといった企業は相対的に成長が穏やかである一方で、新薬の開発や高い適応拡大力を持つ企業が台頭してきている構図が見て取れます。
特に、特許切れの影響を受ける製品群を抱える企業は、持続的な成長戦略の再構築が求められています。
SkyriziやRinvoqといった新規の炎症性疾患治療薬を強化したAbbVie、また、Darzalexを軸に血液がん領域での優位性を築くJohnson & Johnsonなども、2030年に向けて着実に売上を積み上げていく企業として注目されます。
本記事では、単なる売上規模の比較ではなく、各社の研究開発パイプライン、新薬の革新性、市場浸透力を総合的に評価、2030年に向けた「これから伸びる製薬会社」を考察します。
医薬品市場が今後ますます複雑化する中で、長期的に競争力を保つには、治療領域の選定と持続的なイノベーションが不可欠であることが明らかになりつつあります。
| ランキング | 企業名 | 2030年 売上予測 | 2023年売上 | 2023 vs 2030 売上増加率 | 備考 |
| 1位 | Novo Nordisk | 800億ドル | 350億ドル | 128.6% | GLP-1製品(Ozempic, Wegovy)主導 |
| 2位 | Eli Lilly | 750億ドル | 340億ドル | 120.6% | Mounjaro・Zepbound |
| 3位 | AbbVie | 680億ドル | 550億ドル | 23.6% | Skyrizi・Rinvoq 等がHumira後継 |
| 4位 | Johnson & Johnson | 650億ドル | 500億ドル | 30.0% | Darzalex・Stelara |
| 5位 | Merck & Co. | 630億ドル | 540億ドル | 16.7% | Keytruda特許切れもSC製剤で対応 |
| 6位 | Roche | 500億ドル | 450億ドル | 11.1% | 成長はやや鈍化 日本では中外製薬 |
| 7位 | Sanofi | 470億ドル | 360億ドル | 30.6% | Dupixent・血液疾患製品 |
| 8位 | AstraZeneca | 460億ドル | 410億ドル | 12.2% | 成長率5%超 (Enhertuなど) |
| 9位 | Pfizer | 440億ドル | 420億ドル | 4.8% | ポストCOVIDクリフ・減速 |
| 10位 | Novartis | 430億ドル | 400億ドル | 7.5% | 安定成長 |
Novo NordiskとEli Lillyが急成長を遂げた背景とは

2030年に向けた製薬業界の勢力図は、これまでの定番企業とは異なる顔ぶれが台頭しています。その代表例が、デンマークのNovo Nordiskと米国のEli Lillyです。両社はもともと中堅クラスとされていましたが、GLP-1受容体作動薬によって急速に地位を確立しました。
特に、糖尿病と肥満治療の分野でリードするOzempic、Wegovy(Novo Nordisk)や、Mounjaro、Zepbound(Eli Lilly)は、世界的に広がる生活習慣病への治療ニーズとマッチし、記録的な売上を記録しています。
これらの薬剤は単に体重を減らすだけでなく、心血管疾患や腎疾患などの合併症のリスクを下げる可能性もあるとされており、今後の市場拡大が予想されます。
そのため、NovoとLillyは2030年までに業界トップの売上規模へと躍進する見通しです。
一方で、これらの薬剤は製造供給の面で課題も抱えており、各社は生産体制の強化に取り組んでいます。Novo Nordiskは製造受託大手Catalentの買収を進めており、米国当局の審査中です。
売上を牽引するブロックバスター医薬品の実態
製薬各社の成長を支える柱となるのが、いわゆる「ブロックバスター医薬品」。2030年時点での売上ランキングには、以下のような製品が名を連ねています。
| 順位 | 製品名 | 企業名 | 2030年 売上予測 | 2024年 売上 | 治療領域 |
| 1 | Mounjaro | Eli Lilly | 362億ドル | 115億ドル | 糖尿病・肥満 |
| 2 | Skyrizi | AbbVie | 266億ドル | 117 | 免疫疾患 |
| 3 | Zepbound | Eli Lilly | 255億ドル | 49 | 肥満 |
| 4 | Dupixent | Sanofi / Regeneron | 251億ドル | 141億ドル | 免疫疾患 |
| 5 | Ozempic | Novo Nordisk | 244億ドル | 175億ドル | 糖尿病 |
| 6 | Wegovy | Novo Nordisk | 181億ドル | 84億ドル | 肥満 |
| 7 | Keytruda | Merck & Co. | 169億ドル | 295億ドル | オンクロジー |
| 8 | Darzalex | Johnson & Johnson / Genmab | 166億ドル | 117億ドル | 血液がん |
| 9 | Biktarvy | Gilead Sciences | 157億ドル | 135億ドル | 肥満 |
| 10 | Cagrisema | Novo Nordisk | 152億ドル | 0 | 肥満・糖尿病 |
| 11 | Enhertu | Daiichi Sankyo/ AstraZeneca | 152億ドル | 42億ドル | オンコロジー |
| 12 | Rinvoq | AbbVie | 148億ドル | 60億ドル | 免疫疾患 |
2030年に向けて、世界の医薬品市場ではブロックバスター医薬品の動向が企業の成長を大きく左右する構図が鮮明になっています。
Evaluate Pharmaのレポートに基づくと、特に注目されているのは糖尿病や肥満、免疫疾患といった広範な患者層を抱える分野で劇的な売上成長を遂げている製品群です。
こうした医薬品は、単なる疾病の治療にとどまらず、企業の売上を牽引する原動力となり、製薬会社の2030年の世界ランキングにも直結しています。
ブロックバスター医薬品の上位を占める「生活習慣病」領域
2030年時点で最も売上が高いと予測されているのは、Eli LillyのMounjaro(362億ドル)とZepbound(255億ドル)です。
いずれも糖尿病および肥満の治療薬として開発されたtirzepatide製剤であり、2024年時点と比較してそれぞれ247億ドル、206億ドルの大幅な増加が見込まれています 。
また、Novo NordiskのOzempic(244億ドル)、Wegovy(181億ドル)、さらにCagrisema(152億ドル)もランキング上位に入り、同社のGLP-1関連製品が世界市場において圧倒的な存在感を放っています。
これらは血糖値コントロールにとどまらず、体重管理、心血管疾患予防など多面的な効果を有し、医師・患者からの支持が高まっている点が特徴です。
免疫・炎症・がん領域も依然として存在感
AbbVieのSkyriziとRinvoqはそれぞれ266億ドル、148億ドルと成長が予測され、Humiraの特許切れ以降のポートフォリオ再構築が着実に成果を上げています。
また、SanofiとRegeneronが共同開発したDupixentは、喘息やアトピー性皮膚炎をはじめとした複数の適応症で拡大を続け、251億ドルに達する見通しです。これらの製品は、生物学的製剤の浸透拡大や適応拡大の柔軟性が売上増加の要因となっています。
一方、がん免疫療法薬のKeytruda(Merck & Co.)は、特許切れを控え2030年には売上が169億ドルまで縮小する見通しとなっています。
これは295億ドルのピークから大幅な減少であり、ブロックバスター医薬品が抱えるライフサイクルの終盤に直面している典型的な事例といえます。
2030年の売上上位医薬品と企業の相関
売上上位12製品の顔ぶれを見ると、Eli Lilly、Novo Nordisk、AbbVieがいずれも複数の製品を上位にランクインさせており、2030年における企業の成長性を象徴する結果となっています。
特に、Eli LillyはMounjaroとZepboundの2製品で600億ドルを超える売上が予想されており、時価総額の急上昇や世界ランキングでの上位進出の原動力となっています。
これらの製品群は、単に大規模な市場をターゲットにしているだけでなく、新規作用機序や投与利便性の工夫などによって、既存治療との差別化にも成功しています。
特許切れによるリスクへの各社の対応
業界の成長が続く一方で、「特許切れ」による売上減少という現実的な課題も存在します。とくにMerckのKeytrudaやBMSのOpdivoといった大規模製品は、2027年から2028年にかけて特許保護が終了します。
| 製品名 | 製薬企業 | 主な適応症 | 特許切れ年 | 直前売上(億ドル) |
| Keytruda(pembrolizumab) | Merck | がん | 2028 | 約250 |
| Opdivo(nivolumab) | BMS | がん | 2028 | 約110 |
| Eliquis(apixaban) | BMS/Pfizer | 血栓症 | 2027 | 約120 |
| Trulicity(dulaglutide) | Eli Lilly | 糖尿病 | 2027 | 約90 |
このように、短期間で1000億ドル以上の売上が失われるリスクを抱えており、各社ともパイプライン強化やM&Aを通じた対応が求められています。
なお、AbbVieはHumiraの後継としてSkyriziとRinvoqを主力製品に育てており、両者で2030年の売上の40%以上を占める見通しです。
今後注目される新薬と研究開発の動向
パイプラインにおいても注目されるのは、やはり肥満領域の開発品です。Novo NordiskのCagrisema(semaglutide + cagrilintide)は、Zepboundを上回る減量効果が期待されており、2030年の売上予測は200億ドルを超えます。
また、Eli Lillyのorforglipron(経口GLP-1)や、AmgenのMariTide(月1回投与のGLP-1/GIPブロッカー)など、投与方法や作用機序の革新によって差別化が図られています。
また、糖尿病・肥満領域以外で注目されている新薬の中には、革新的な技術やアプローチを採用した製品がいくつかあります。
Vertexが開発を進めるVX-548は、依存性の問題が深刻化しているオピオイドに代わる非オピオイド系の鎮痛剤として期待されています。
また、Bristol Myers Squibb(BMS)のKarXTは、統合失調症に対する新たなCNS(中枢神経系)治療薬として注目されており、精神科領域での治療選択肢の拡大につながる可能性があります。
さらに、Merckはがん免疫療法薬Keytrudaの皮下注射型(MK-3475 SC)の開発を進めており、患者の利便性向上が図られています。
これから伸びる将来性の高い世界の製薬会社丨時価総額でみる

- 世界の製薬企業時価総額ランキングの変化から見る動向
- 圧倒的存在感を示すEli Lillyの急成長
- Novo Nordiskの市場評価が示す将来性
- 時価総額3000億ドル超の大手3社が維持する強さ
- 将来の業界主導権を握る企業はどこか?
世界の製薬企業時価総額ランキングの変化から見る動向
企業の成長力を測る上で、売上高だけでなく時価総額の動向にも注目されます。これは、時価総額が市場がその企業の将来性をどのように評価しているかを反映する指標であり、新薬パイプラインの価値や経営戦略、財務健全性など複数の要素が株式市場を通じて織り込まれるからです。
今後2030年までも、企業ランキングは売上とともに時価総額の順位にも大きな変化が見込まれています。
2023年から現在の2025年までの数年間でも時価総額とその順位は大きく変動をしています。
たとえば、Novo NordiskやEli Lillyのように、肥満症や糖尿病に対するGLP-1受容体作動薬を軸とした治療薬群が市場で注目を集めた企業は、急速に時価総額を伸ばしていり一方で、長く世界最大手であったとされていたPfizerは、COVID-19ワクチンによる一時的な売上増を経たものの、現在は売上、時価総額ともに低下傾向が顕著です。
このような事例は、一過性の要因による成長と、持続可能な成長の違いを明確に示しています。
また、時価総額の観点からは、企業が開発中の新薬群や買収戦略、AIを活用した創薬プロセスなどにも市場は注目しています。
単に現時点での売上が高い企業が評価されるのではなく、長期的な視点で収益が見込める体制を築いているかが、株主や投資家の判断に大きな影響を与えています。
このように、時価総額は、業界の勢力図や市場の期待を映し出す鏡とも言える存在です。
| ランキング (2025年7月) | 企業名 | 時価総額(億ドル) (2025年7月) | ランキング (2023年12月) | 時価総額(億ドル) (2023年12月) |
| 1 | Eli Lilly | 7,223 | 1 | 5,583 |
| 2 | J&J(Janssen含む) | 3,955 | 3 | 3,824 |
| 3 | AbbVie | 3,265 | 5 | 2,552 |
| 4 | Roche | 2,071 | 6 | 2,266 |
| 5 | Novartis | 1,926 | 7 | 2,027 |
| 6 | Novo Nordisk | 2,205 | 2 | 4,586 |
| 7 | AstraZeneca | 1,586 | 8 | 2,006 |
| 8 | Merck & Co. | 1,991 | 4 | 2,691 |
| 9 | Amgen | 1,591 | 10 | 1,458 |
| 10 | Pfizer | 1,379 | 9 | 1,653 |
圧倒的存在感を示すEli Lillyの急成長
Eily Lillyは2024年6月時点で株価が過去最高を記録し、時価総額は7,200億ドルを突破しました。これは米国企業全体の中でも際立つ水準であり、時価総額ランキングでは全体の12位に位置しています。
米国株市場の上位には、半導体のエヌビディアを筆頭に、Alphabet(Googleの親会社)、Apple、Meta、Amazon、Teslaといった名だたるテクノロジー企業が並ぶ中で、Lillyの存在は異色とも言えるほど目立っています。それだけ市場からの信頼と将来性への期待が大きいことを示しています。
この高い評価の背後には、同社が保有する主要製品群と研究開発力の強さが密接に関係しています。
とくに肥満症治療薬Zepbound(tirzepatide)は、米国を中心に急速に市場を拡大しており、医療現場でも注目度が高まっています。また、同じtirzepatideを成分とする糖尿病治療薬Mounjaroは、臨床試験における効果の高さと安全性が評価され、安定した需要を獲得しています。
さらに、アルツハイマー病治療薬であるdonanemabについても、承認に向けたプロセスが順調に進んでおり、認知症治療の新たな柱となる可能性が取り沙汰されています。こうしたパイプラインは、企業価値の向上に大きく寄与しています。
安定成長で存在感を示すJ&J
Johnson & Johnson(J&J)の医薬品事業中心に収益構造をシフトしており、製薬分野でのパイプライン強化と成長が、時価総額に大きく反映されています。
現在、J&Jの時価総額は約4,000億ドル前後で推移しており、グローバル製薬企業の中でも安定した評価を得ています。
ただし、その成長のスピードや株式市場での存在感という点では、Novo NordiskやEli Lillyといった著しい成長を遂げている企業にやや後れを取っている状況です。
J&Jの医薬品事業は、複数の主力製品に支えられて確実に成長しています。
なかでも血液がん治療薬Darzalex(daratumumab)や自己免疫疾患に用いられるStelara(ustekinumab)が好調で、2030年までの中期的な成長を下支えしています。
また、TAR-200(膀胱がん用ドラッグデリバリーシステム)など新規モダリティの臨床開発にも積極的で、これらが将来的な収益源となることが期待されています。
2023年には同社のコンシューマー部門がKenvueとしてスピンオフされたことにより、製薬および医療機器に経営資源を集中する体制へと移行しました。
これにより、企業としてのフォーカスが明確になり、製薬事業の成長性を市場に強く印象付ける結果となっています。
このように、J&Jは時価総額において「急成長型」ではなく「堅実型」と言えるポジションにあり、幅広いポートフォリオと安定した研究開発力を持つ企業として、依然として投資家や業界から厚い信頼を得ています。
ヒュミラ後も成長継続:スキリージとリンヴォックがAbbVieを支える
AbbVieは、株式市場での時価総額においても着実な評価を受けています。特に、Humira(ヒュミラ、アダリムマブ)の特許切れを迎えたあとも、次世代製品であるSkyrizi(スキリージ)やRinvoq(リンヴォック)が順調に売上を伸ばしており、事業の持続性への期待が株価にも反映されています。
一方で、他の急成長企業と比較した場合、AbbVieの株価上昇ペースはやや緩やかです。
この背景には、Humiraの後継品が着実に拡大しているとはいえ、売上構成の転換には時間を要することが挙げられます。
とはいえ、SkyriziとRinvoqの両製品は、それぞれが年間100億ドル規模のブロックバスターに成長する見込みであり、ポートフォリオ全体の再構築は着実に進行しています。
加えて、AbbVieはオンコロジーや神経領域など、多様な疾患分野への研究開発投資を継続しており、中長期的な成長性を裏付けるパイプラインを複数抱えています。
財務的な安定性と株主還元への姿勢も、投資家からの継続的な信頼を得ている要素の一つです。
AbbVieは、派手さはなくとも堅実な経営と製品力によって時価総額においても評価され、急成長型とは異なるスタイルで市場におけるポジションを確保しています。今後は、既存製品の適応拡大や後期開発品の上市を通じて、さらに評価を高めていく可能性があると考えられます。
米メルク:Keytruda依存からの脱却への期待
米メルク(Merck & Co.)は、がん免疫療法の代表的な薬剤である「Keytruda(キイトルーダ)」を通じて、世界的な成功を収めてきました。この実績は、単なる売上高や利益の増加にとどまらず、株式市場での企業評価にも強く反映されています。2023年時点の時価総額は約2,700億ドルに達し、製薬企業の中では第4位にランクインしていました。
現在、最も注目されているのは、Keytrudaが2028年に特許期間を終了することに伴う次の成長戦略です。皮下注射製剤「MK-3475 SC」の開発や、他薬剤との併用療法を含む新たな治療選択肢の準備が進行中であり、特許切れ後の売上急減に備える動きが加速しています。
2024年現在の時価総額は約2,000億ドルとやや後退し、ランキングでは8位となっていますが、こうした将来を見据えた先制的な取り組みは、投資家からの継続的な信頼獲得につながっています。現在の株価評価も、戦略的な舵取りに対する期待感が反映された結果といえるでしょう。
加えて、Keytrudaへの依存度を引き下げることも、同社の長期的なテーマとなっています。循環器や代謝性疾患、感染症など、がん以外の領域にも研究開発を広げ、パイプラインの分散化を図ることで、収益構造の安定化を目指しています。これにより、1製品への依存リスクを軽減し、持続可能な成長モデルの確立を狙っています。
一方で、課題も存在します。特許切れによって生じる収益の空白期間を最小限に抑えるためには、研究開発を一層加速させる必要があります。それに加えて、新薬の価格戦略や競合他社との差別化も、今後の成功を左右する要素となるでしょう。
これから伸びる将来性の高い世界の製薬会社は? 2030年世界ランキングと時価総額から徹底分析
- Novo Nordiskは2030年に売上が2倍以上となり業界トップが確実視されている
- Eli LillyはMounjaroやZepboundの成長で売上急拡大が予測されている
- GLP-1受容体作動薬がブロックバスター医薬品として市場を牽引している
- 2030年の製薬業界は生活習慣病領域が支配的になる構図が見込まれる
- AbbVieはSkyriziとRinvoqがHumiraの後継として順調に売上拡大中
- Johnson & Johnsonは血液がん薬Darzalexを中心に安定成長を続けている
- MerckはKeytrudaの特許切れに備え皮下注製剤などライフサイクル戦略を実行している
- SanofiはDupixentを柱に皮膚・呼吸器疾患領域で高い成長率を示している
- AstraZenecaはEnhertuなど新規抗体薬物複合体の拡大で業績を伸ばしている
- PfizerはCOVID関連の反動で成長が鈍化しつつあるが基盤は堅固である
- Novartisは目立った急成長はないが安定した売上と研究体制が強みである
- 特許切れは業界共通の課題であり収益構造の転換が迫られている
- 肥満領域の新薬開発は引き続き競争が激化し市場注目度が高い
- 投与経路や作用機序を変える新技術がパイプラインの差別化要因となっている
- 投資判断や業界動向を読む上で、売上と時価総額の両軸での評価が重要となる
