2025年7月2日、米食品医薬品局(FDA)は、Regeneron Pharmaceuticals社が開発したLynozyfic™(一般名:linvoseltamab-gcpt)に対し、再発または難治性の多発性骨髄腫に対する迅速承認を正式に与えました。
この新薬は、4種類以上の前治療歴を持つ患者を対象に、BCMAとCD3を標的とする二重特異性抗体として注目されています。
昨年は製造拠点に関する懸念で一度は申請が却下されましたが、今回はその課題を乗り越え、新たな治療の扉が開かれました。
Lynozyfic承認の背景と意義

- Lynozyficの臨床試験成績と特徴
- 治療上のメリットと課題
- 他治療薬との競合状況と今後の展望
Lynozyficの臨床試験成績と特徴
Lynozyficは、B細胞成熟抗原(BCMA)とCD3を標的とする完全ヒト型の二重特異性抗体であり、T細胞の活性化を通じて多発性骨髄腫細胞を攻撃します。
この治療薬の承認は、「LINKER-MM1試験」という第1/2相試験の結果に基づいています。
対象となった患者は、少なくとも4つの前治療(プロテアソーム阻害剤、免疫調整薬、抗CD38抗体など)を受けた後、再発または治療抵抗性を示した方々でした。
主な試験結果は以下の通りです。
| 評価項目 | 結果 |
|---|---|
| 客観的奏効率(ORR) | 70% |
| 完全奏効(CR)またはそれ以上 | 45% |
| 初回奏効までの中央値 | 0.95か月 |
| 奏効持続率(9か月時点) | 89% |
| 奏効持続率(12か月時点) | 72% |
これらの数値は、過去に行われた同様の治療薬と比較しても高い効果を示しており、治療効果の早さと持続性が両立されている点が大きな特長です。
治療上のメリットと課題
Lynozyficには、治療効果だけでなく、患者の生活の質を考慮した「レスポンス適応型の投与スケジュール」が組み込まれています。
治療開始から14週目以降には、治療効果が良好な場合に投与間隔を2週に1回、さらには4週に1回まで延ばすことが可能です。
こうした柔軟なスケジュールにより、通院頻度が減少し、患者や家族への負担を軽減できる可能性があります。
一方で、以下のような注意点も存在します。
- サイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性といった重篤な副作用が報告されており、初期投与には入院管理が必要です。
- 投与中は感染症や肝機能障害などのリスクがあるため、継続的なモニタリングが求められます。
- Lynozyficは、FDAが定めた「REMS(リスク評価・緩和戦略)」に従った制限付き流通下でのみ使用可能です。
これらの理由から、治療導入に際しては医療機関の体制整備と十分な説明が不可欠です。
他治療薬との競合状況と今後の展望
Lynozyficが今回承認された背景には、すでに同様のメカニズムを持つ治療薬が先行して市場に登場しているという事情があります。
現在、同じBCMAを標的とする治療薬としては、以下のような製品が存在します。
| 製品名 | 製薬会社 | 特徴 |
|---|---|---|
| Tecvayli(テクリスタマブ) | Johnson & Johnson | BCMAxCD3の二重特異性抗体 |
| Elrexfio(エルラナタマブ) | Pfizer | 同様にBCMAxCD3標的 |
| Blenrep(ベラントマブ マフォドチン) | GSK | 抗体薬物複合体(ADC)として再承認を目指している |
これにより、Lynozyficは「三番手」として市場に参入することになり、商業的な成功には今後の普及戦略や臨床現場での信頼確立がカギとなります。
ただし、Lynozyficは、投与頻度を減らせるという点で他薬との差別化が可能です。さらに、Regeneron社は現在、早期治療ラインへの応用や併用療法に向けた複数の臨床試験を展開しており、今後の可能性は広がりを見せています。
米FDAが再発・難治性多発性骨髄腫に対するLynozyfic™を迅速承認:がん治療の新たな選択肢
- Lynozyficは、治療歴の多い多発性骨髄腫患者に対する新たな治療選択肢としてFDAから迅速承認を取得しました。
- LINKER-MM1試験では高い奏効率と持続的な治療効果が確認され、早期の効果発現も期待できます。
- 副作用への注意は必要ですが、投与スケジュールの柔軟性は患者にとって大きな利点です。
- すでに市場には競合薬が存在しており、Lynozyficの商業的成功は今後の展開に依存します。
- 今後は、より早期の治療段階での活用や併用療法への展開が期待されています。
