イムリフィダーゼを用いた腎移植、5年後も良好な成績を維持|ESOTでHansa Biopharmaが発表

イムリフィダーゼを用いた腎移植、5年後も良好な成績を維持|ESOTでHansa Biopharmaが発表 ニュース

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2025年6月30日、Hansa Biopharmaは、イムリフィダーゼを用いて脱感作処理を行った腎移植患者の5年間の長期追跡データを、欧州臓器移植学会(ESOT)で発表しました。

本発表では、移植後5年を経ても良好な患者および移植腎の生存率が維持されていることが示され、イムリフィダーゼの臨床的有用性が改めて注目されています。

特に、HLA抗体により移植が困難とされる高度感作患者にとって、有効な代替策として期待されています。

イムリフィダーゼ治療による腎移植の長期成績

  • 高度感作患者における臨床課題と治療戦略
  • 5年追跡データが示す有効性と安全性の持続
  • 腎機能指標から読み解く臨床的な意義
  • 移植待機患者への希望──今後の展望

高度感作患者における臨床課題と治療戦略

高度感作患者とは、ヒト白血球抗原(HLA)に対するドナー特異的抗体(DSA)を事前に保有しており、移植拒絶のリスクが高い患者層を指します。

これらの抗体が原因で、多くの場合、適合する腎臓ドナーを見つけることが困難となり、長期にわたり移植待機リストに留まる傾向があります。

このような患者に対し、イムリフィダーゼを用いた脱感作治療は、IgG抗体を分解することで、短期間に抗体レベルを低下させ、移植の機会を広げる可能性を提供します。

イムリフィダーゼは、細菌由来の酵素であり、投与後数時間でIgG抗体を無力化できる特性を持ちます。

5年追跡データが示す有効性と安全性の持続

ESOT 2025で発表された「17-HMedIdeS-14」長期追跡試験では、イムリフィダーゼで脱感作された患者における腎移植後5年間の成績が報告されました。追跡対象は、過去の第2相試験でイムリフィダーゼを用いて移植された患者です。

今回の結果では、以下のような成績が確認されました。

指標成績(5年後)
患者生存率90%(6ヶ月~1年の間に3例の死亡)
移植腎生存率(死亡例除外)82%
平均eGFR(腎機能指標)50 mL/min/1.73㎡

これらの数値は、3年時点の成績と同等水準を維持しており、治療の持続的な有効性が裏付けられました。

また、安全性に関する深刻な新規懸念も報告されておらず、長期的な使用における安定性も示唆されています。

腎機能指標から読み解く臨床的な意義

腎移植後の患者管理では、eGFR(推算糸球体濾過量)が重要な腎機能の指標とされています。eGFRが高いほど、移植腎が健全に機能していると評価されます。

本研究で報告された5年後の平均eGFRは50 mL/min/1.73㎡でした。これは、一般的な腎移植患者の3年後のeGFRである40~60の範囲に収まっており、長期的な腎機能が十分に維持されていることを示します。

つまり、イムリフィダーゼによって一時的に抗体を除去することで、高度感作患者においても、従来の移植患者と同等の腎機能維持が可能になるという重要な知見が得られたと言えるでしょう。

移植待機患者への希望──今後の展望

今回の成果は、移植医療の現場において複数の意義を持っています。まず、移植困難な患者層に対し、現実的かつ効果的な選択肢を提供できるようになった点が挙げられます。

加えて、ヨーロッパおよび米国の移植待機患者のうち、10~15%が高度感作患者であるとされており、その規模からも臨床的影響は大きいと考えられます。

今後は、イムリフィダーゼの再投与や適応拡大に関する研究が進められており、その可能性に注目が集まっています。とはいえ、完全な解決策とはまだ言えず、免疫抑制療法の個別最適化や再感作のリスク管理といった新たな課題も併存しています。

イムリフィダーゼを用いた腎移植、5年後も良好な成績を維持|ESOTでHansa Biopharmaが発表

  • イムリフィダーゼを用いた脱感作治療は、移植困難な高度感作患者にとって現実的な選択肢となりつつあります。
  • 5年後の生存率や腎機能の維持が確認され、長期的な治療効果が裏付けられました。
  • 安全性についても大きな懸念は報告されておらず、引き続き有望な治療法としての評価が進んでいます。
  • 今後は再投与戦略や適応拡大、免疫抑制との併用設計など、さらなる臨床研究が期待されます。

参照文献

Hansa Biopharma presents positive outcomes of five-year follow-up study of imlifidase in kidney transplantation at ESOT Congress 2025 in LondonHansa Biopharma プレスリリース