アルツハイマー病の早期治療に期待が集まる中、EisaiとBiogenが共同開発した抗アミロイド抗体「LEQEMBI(lecanemab)」が、4年間にわたり患者の認知機能の低下を抑える効果を示したという臨床データが公表されました。
2025年7月に開催されたアルツハイマー病国際会議(AAIC)で発表されたこの結果は、長期治療の有効性を実証するものとして注目を集めています。
この記事では、LEQEMBIの継続投与による認知機能への影響、安全性、そして将来的な展望について解説します。
ニュースのポイント
- 認知機能の低下抑制に関する臨床データの推移
- 安全性と副作用に関する4年間の観察結果
- 今後の治療環境と製剤の改良動向
アルツハイマー初期患者に4年間のLEQEMBI療法がもたらす持続的な改善効果とは

認知機能の低下抑制に関する臨床データの推移
LEQEMBIの臨床効果を測るために実施されたClarity AD試験では、早期アルツハイマー病患者において、4年間の継続投与による明確な改善効果が示されました。
18か月時点では、プラセボ群と比較してCDR-SBスコアが平均で-0.45ポイント改善されていましたが、その後、治療を継続した478人の患者では4年間で-1.75ポイントの改善が確認されています。これは、自然経過とされるAlzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)データと比較しても、はっきりとした差異となっています。
さらに、患者の中でも脳内のタウタンパク蓄積が低いと診断されたグループに注目すると、69%が認知機能の低下を示さず、56%が改善を見せるという結果が出ました。こうしたサブグループ分析は、治療効果の個人差や早期介入の意義を強調しています。
また、別の比較対象であるBioFINDERコホートと比べても、LEQEMBIによるスコア改善は3年で-1.40ポイント、4年で-2.17ポイントと、期間を追うごとに効果が拡大していることがわかります。
これらのデータは、LEQEMBIの投与を継続することが、アルツハイマー病の進行を遅らせ、患者の自立性を保つ上で有効であることを示唆しています。
安全性と副作用に関する4年間の観察結果
治療効果とともに、安全性に対する評価も非常に重要です。LEQEMBIは抗アミロイドβ抗体であるため、治療初期に「ARIA(アミロイド関連画像異常)」と呼ばれる副作用が発生する可能性があるとされています。
しかし、今回の長期データによると、ARIAの発生率は初期12か月以降に減少し、それ以降は安定した水準で推移しました。また、新たな重大な副作用は報告されておらず、全体として良好な安全性プロファイルが維持されているとされています。
ただし、治療を開始する前にはPETスキャンやMRIによるアミロイドの蓄積評価が必要であり、定期的なモニタリングも求められる点は、実際の運用における負担となる可能性があります。
今後の治療環境と製剤の改良動向
EisaiとBiogenは、LEQEMBIの投与方法の改善にも取り組んでおり、2025年1月には月1回の維持投与スケジュールが米国で承認されました。これにより、通院負担の軽減が期待されています。
さらに、8月には皮下自己注射タイプの新製剤の承認可否が予定されており、仮に実現すれば、通院や点滴による負担を大きく減らすことができるでしょう。
一方で、競合薬であるKisunla(donanemab)は、アミロイドが消失した段階で投与を中止できるというスケジュールが特徴で、治療期間を短縮できる点が医師の間でも高く評価されています。このように、各薬剤の長所・短所が明確になりつつある今、患者の状態や希望に応じた選択が求められる時代に入ったと考えられます。
アルツハイマー初期患者に4年間のLEQEMBI療法がもたらす持続的な改善効果まとめ
- LEQEMBIは4年間の継続投与で認知機能の低下を最大1.75ポイント抑制
- 初期タウ蓄積が少ない患者では認知機能改善率が56%に到達
- 投与初期にリスクのあるARIAは長期的に減少し安定傾向
- 治療継続による副作用の増加は確認されていない
- プラセボやADNI・BioFINDER群との比較でも有意な差
- 月1回投与への移行が可能になり患者の負担が軽減
- 自己注射型の製剤が登場すれば、治療の自由度が向上する見込み
- 認知症の進行予防において、治療開始時期が重要である可能性が高い
- 競合薬Kisunlaとの違いに注目が集まり、今後の選択に影響を与える
- 診断から治療、モニタリングまで一貫した体制整備が課題
