【担当者必見】失敗しないデプスインタビューのコツ|準備から実践まで本音を引き出す技術

デプスインタビューのコツ 市場調査・ノウハウ

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デプスインタビューのコツを探しているあなたは、「対象者の本音をもっと引き出したい」「準備不足で失敗した後悔はしたくない」と強く感じているのではないでしょうか。

デプスインタビューとは何か、デプスインタビューは定性調査なのか定量調査なのか?といった基本的な問いから、フォーカスグループインタビューやユーザーインタビューとの違い、さらには気になる費用や適切な人数、謝礼の相場、そして見落としがちなデメリットまで、まずは基本をしっかりと押さえ、しっかりと準備することが成功への第一歩です。

一方で失敗しないためには押さえておきたいコツもあります。

この記事では、インタビュー全体の流れを理解し、効果的なデプスインタビューの質問項目を盛り込んだインタビューガイドの作り方、30分間で考えるべき質問する数の目安といった具体的な準備手法をまずは解説します。

その後、実践的なコツとして、当日の質を左右するラポール形成の技術、相手の話に真摯に耳を傾ける傾聴の姿勢、そして本質に迫る深掘りのテクニックまで、余すところなく解説します。

よくある失敗例を学び、必要に応じて外部サービスを賢く選ぶ視点も提供します。この記事を最後まで読めば、あなたの抱える疑問や不安が解消され、自信を持ってインタビューに臨めるようになるはずです。

記事のポイント

  • デプスインタビューの基本から費用、他手法との違いまでを理解できる
  • 準備段階で不可欠なインタビューガイドや効果的な質問の作り方がわかる
  • 本音を引き出すための傾聴や深掘りといった実践的テクニックが身につく
  • よくある失敗例とその回避策を知り、インタビューの成功確率を高める

準備で差がつくデプスインタビューのコツ

定性調査 目的
  • デプスインタビューとは?費用・人数・謝礼相場は?
  • 定性調査のひとつであるデプスインタビューのメリットとデメリットを理解
  • フォーカスグループやユーザーインタビューとの違い
  • 全体の流れを理解してインタビューガイドを作成する
  • 効果的なデプスインタビューの質問項目のコツ
  • 質問の数にコツはある?30分間の適切な質問数は?

デプスインタビューとは?費用・人数・謝礼相場は?

デプスインタビューは、単に対象者から話を聞く調査とは一線を画します。

その名称に含まれる「デプス(depth)」が示す通り、「深さ」を追求することに主眼を置いた定性調査の手法です。

アンケート調査などで得られる数値データ(定量データ)とは異なり、対象者一人ひとりと1対1で対話することにより、その人の価値観、行動の背景、本人さえも意識していない欲求、つまり「深層心理」や「潜在的なニーズ」を明らかにすることを目的とします。

多くの企業が、新商品の開発前に行う仮説構築の段階や、既存サービスの改善点を探るためにこの手法を用います。

また、アンケート調査で大まかな傾向を掴んだ後、その「なぜ」を具体的に解明するために実施されることも少なくありません。

費用・人数・謝礼の目安

デプスインタビューを計画する際には、具体的な費用感、適切な人数、そして協力者への謝礼について把握しておくことが大切です。

まず費用ですが、外部の調査会社に依頼する場合、調査の規模や内容によって大きく変動します。

一般的には、調査全体の設計、対象者の募集(リクルーティング)、インタビュアー(モデレーター)の人件費、会場費、そして調査後の分析レポート作成費などが含まれます。

総額としては数十万円から、規模によっては数百万円に及ぶこともあります。自社で実施する場合はこれらの費用の一部を抑えられますが、質の高い調査を行うためのノウハウや時間的コストを考慮する必要があります。

次に人数ですが、デプスインタビューは少人数に対して深く掘り下げる調査のため、大規模な人数は必要ありません。

ひとつの属性(例えば「20代の女性ユーザー」など)につき、5名から10名程度が理想的とされています。

ある調査結果では、新しい発見が得られる割合は10名を超えたあたりから急激に減少することが示唆されており、やみくもに人数を増やすよりも、適切な対象者を慎重に選定することの方が重要になります。

最後に謝礼の相場です。対象者には1時間から1時間半程度の時間を拘束するため、協力への感謝として謝礼をお渡しするのが一般的です。

金額は1時間あたり1万円から2万円程度が相場とされています。

ただし、対象者が医師や弁護士といった専門職である場合や、企業の役員クラスである場合には、その専門性や希少性を考慮して、より高額な謝礼を設定する必要があります。

定性調査のひとつであるデプスインタビューのメリットとデメリットを理解

デプスインタビューという手法を自社のマーケティング活動に効果的に取り入れるためには、その長所を最大限に活かし、同時に短所や限界点をあらかじめ理解しておくことが鍵となります。

ここでは、デプスインタビューが持つメリットとデメリットの両側面を具体的に見ていきましょう。

デプスインタビューのメリット

デプスインタビューが多くの場面で活用される理由は、他の調査手法では得難い独自の利点があるからです。

まず一つ目のメリットは、対象者の隠れた本音や潜在的なニーズを発見できる点にあります。

デプスインタビューはインタビュアーと対象者の1対1で行われるため、周囲の目を気にすることなく、対象者は自身の考えや感情を率直に語りやすくなります。これにより、建前ではない、より深いレベルでの本音を引き出すことが可能になるのです。

二つ目のメリットとして、意思決定のプロセスを詳細に解明できる点が挙げられます。デプスインタビューでは、一人の対象者に1時間以上の時間をかけてじっくりと対話するため、「なぜその商品を知ったのか」「何を比較検討したのか」「最終的な決め手は何だったのか」といった一連のプロセスを、時系列に沿って丁寧に解き明かしていくことができます。

三つ目に、プライベートでデリケートな話題についても踏み込んだ話をしやすいという利点があります。収入や貯蓄といった家計の話、健康上の悩み、家族関係など、他人がいる場では話しにくいテーマであっても、1対1のクローズドな環境であれば、対象者の了解を得ながら慎重に話を展開することが可能です。

デプスインタビューのデメリット

一方で、この手法にはいくつかの注意すべきデメリットも存在します。

最も大きなデメリットは、時間とコストがかかることです。対象者一人ひとりと個別に向き合うため、例えば10人にインタビューを行う場合、単純計算で10時間以上の実査時間が必要となります。

次に、インタビュアーと対象者、双方の負担が大きい点も考慮しなければなりません。

長時間にわたり深いレベルでの対話を行うことは、精神的にも肉体的にもエネルギーを消耗します。特にインタビュアーには、高い集中力とコミュニケーションスキルが継続的に要求されます。

そして最後に、得られる情報があくまで個人の一意見に過ぎないという点は、常に念頭に置くべきです。

デプスインタビューで得られた発見は非常に貴重ですが、それはN=1の事例であり、市場全体の意見を代表するものではありません。

そのため、デプスインタビューで得られた仮説を、その後にアンケートなどの定量調査で検証するといった、複数の調査手法を組み合わせるアプローチが有効です。

フォーカスグループやユーザーインタビューとの違い

デプスインタビューについて理解を深める際、しばしば混同されがちな調査手法に「フォーカスグループインタビュー」と「ユーザーインタビュー」があります。

これらは同じインタビュー調査の枠組みにありながら、その目的や進め方、得られる知見が異なります。

自社の課題解決に最も適した手法を選択するためにも、それぞれの違いを明確に把握しておきましょう。

それぞれの特徴を比較すると、以下の表のように整理できます。

項目デプスインタビューフォーカスグループ
インタビュー
ユーザーインタビュー
目的個人の深層心理、潜在ニーズ、意思決定プロセスの解明多様な意見の収集、アイデアの発散、仮説の発見特定製品・サービスの使いやすさ(ユーザビリティ)や体験の評価・改善
形式1対1(インタビュアーと対象者)1対複数(司会者1名に対し対象者5〜6名程度)1対1(インタビュアーとユーザー)が多い
時間1人あたり60〜90分全体で2時間程度30〜60分程度
主な知見個人の行動の「なぜ」という深い理由アイデアの広がり、意見の多様性、共感点操作上の課題、満足・不満点、具体的な改善ヒント
特徴他者の影響を受けず本音を引き出しやすい参加者間の相互作用(グループダイナミクス)を活用実際の操作やタスクを伴うことが多い
Insights4 Pharma 調べ

どの手法を選ぶべきかは、あなたが「何を知りたいのか」という調査目的によって決まります。

個人の深い動機を知りたいならデプスインタビュー、多様なアイデアが欲しいならフォーカスグループ、製品の使い勝手を改善したいならユーザーインタビュー、というように目的を明確にすることが、最適な手法選択への第一歩となります。

全体の流れを理解して上でのインタビューガイド

デプスインタビューの成功は、当日のインタビュアーの腕前にかかっていると思われがちですが、実際にはその成否の大部分は事前の準備段階で決まると言っても過言ではありません。

行き当たりばったりの対話では、貴重な時間とコストを浪費してしまう可能性があります。ここでは、インタビューを成功に導くための全体的な流れと、その心臓部とも言える「インタビューガイド」の作成方法について解説します。

デプスインタビューの全体フロー

まずは、調査の企画から最終的な報告まで、デプスインタビューがどのようなステップで進んでいくのか、全体像を把握しましょう。

  • Step1: 調査目的の明確化と計画策定
    この調査を通じて「何を明らかにしたいのか」、そして得られた結果を「何に活用するのか」を具体的かつ明確に言語化します。ここが曖昧だと、以降のすべてのステップがぶれてしまいます。
  • Step2: 対象者の選定(リクルーティング)
    調査目的に合致した対象者を募集し、選定します。年齢や性別といった属性だけでなく、特定の経験や価値観を持つ人を的確に見つけ出すためのスクリーニング調査が、この段階では非常に大切です。
  • Step3: インタビューガイドの作成
    インタビュー当日の進行シナリオを作成します。これは単なる質問リストではなく、時間配分や話の展開までを考慮した、調査全体の設計図となります。詳細は後述します。
  • Step4: インタビュー実施
    作成したインタビューガイドに基づき、対象者との対話を行います。ただし、ガイドに固執しすぎず、対象者の話の流れに応じて臨機応変に質問を調整する柔軟性が求められます。
  • Step5: 分析とレポート作成
    インタビューの録音データを文字に起こし、その内容を分析します。発言をグループ分けして構造化するKJ法などの手法を用いながら、単なる事実の列挙ではなく、ビジネス課題の解決に繋がる「インサイト(洞察)」を抽出します。

インタビューガイドの具体的な作成方法

インタビューガイドは、インタビューという航海の「海図」です。これがあることで、インタビュアーは安心して対話の海に乗り出し、目的地である調査目的の達成へと向かうことができます。

インタビューガイドに含めるべき主な要素は以下の通りです。

  1. 調査の目的と背景の再確認: インタビュアーが常に目的を意識できるよう、冒頭に明記します。
  2. 対象者のプロフィール: 当日、スムーズに対話に入れるよう、対象者の基本情報をまとめておきます。
  3. 全体の時間配分: 例えば「導入5分、本題1(20分)、本題2(30分)…」のように、大まかな時間計画を立てます。
  4. 導入(イントロダクション): インタビュー開始時の挨拶、自己紹介、調査の趣旨説明、録音の許可取りなど、定型的な流れを記載します。対象者の緊張をほぐすためのアイスブレイクの話題も用意しておくと良いでしょう。
  5. 質問項目: インタビューの本編となる質問をリストアップします。質問は、対象者が答えやすい過去の事実や行動に関する質問から始め、徐々にその理由や考え、感情といった内面に関する質問へと移っていくように構成するのが定石です。この流れは、口の広いフラスコに似ていることから「フラスコモデル」とも呼ばれます。
  6. クロージング: 最後に言い残したことがないかを確認し、協力への感謝を伝えてインタビューを締めくくるための言葉を準備しておきます。

重要なのは、インタビューガイドをガチガチの台本としてではなく、あくまで「ガイド」として捉えることです。

これがあるからこそ、当日は安心して話の脱線を受け入れ、そこから思わぬ発見を得る余裕が生まれるのです。緻密な準備こそが、当日の柔軟性を支える土台となることを理解しましょう。

効果的なデプスインタビューの質問項目のコツ

対象者の心の奥底に眠る本音や、自分でも気づいていないような潜在的なニーズを引き出すためには、「何を尋ねるか」そして「どのように尋ねるか」という質問の質が決定的な役割を果たします。

優れた質問は、単に情報を得るだけでなく、対象者自身に内省を促し、思考を整理させる力さえ持っています。

質問項目作成の3つの基本原則

まず、質問を考える上で常に意識すべき3つの原則があります。

  1. オープンクエスチョンを主体にする
    質問には、「はい」か「いいえ」で答えが終わってしまう「クローズドクエスチョン」と、相手が自由に語ることができる「オープンクエスチョン」があります。デプスインタビューの目的は対象者に多くを語ってもらうことなので、質問は基本的にオープンクエスチョンで構成します。
    • 悪い例(クローズド):「このデザインは好きですか?」
    • 良い例(オープン):「このデザインを見て、どのような印象を受けましたか?」
    クローズドクエスチョンは、事実確認をしたい場合など、限定的に使うのは有効ですが、会話を広げる力はありません。
  2. 誘導的な質問を絶対に避ける
    インタビュアーは、調査を始める前に何らかの仮説を持っていることが多いものです。しかし、その仮説を証明したいという気持ちが強すぎると、無意識のうちに回答を特定の方向に導くような「誘導尋問」をしてしまいがちです。
    • 悪い例(誘導的):「この機能はとても便利で、作業が楽になりますよね?」
    • 良い例(中立的):「この機能を使ってみて、どのように感じましたか?」
    誘導によって得られた回答は、対象者の本音ではなく、インタビュアーが聞きたかっただけの「作られた意見」に過ぎません。常にニュートラルな姿勢で問いかけることが不可欠です。
  3. 答えが一つとは限らない聞き方をする
    人は、複雑な事象に対して複数の考えや感情を同時に抱いているものです。質問の仕方で、その多面的な思考を狭めてしまうのは避けるべきです。
    • 限定的な例:「この商品を選んだ最も重要な理由は何ですか?」
    • 多面的な例:「この商品を選んだ際には、どのような点が決め手になりましたか?」
    後者のように尋ねることで、対象者は価格、デザイン、機能、ブランドへの信頼など、複数の要因を自由に挙げることができ、そこから思考の優先順位や価値観が見えてきます。

行動・考え・感情を引き出す質問の流れ

効果的なインタビューでは、質問の順番も計算されています。一般的には、まず客観的な「行動」の事実から尋ね、次にその行動の背景にある「考え」や「感情」へと掘り下げていくのがスムーズです。

  • Step1: 行動を尋ねる
    「昨日、夕食後にご自宅でどのように過ごされましたか?」
    「最近、〇〇という商品を購入されたとのことですが、お店に行く前に何か調べものをしましたか?」
  • Step2: 考えを尋ねる
    「なぜ、テレビではなく動画配信サービスを見ようと思われたのですか?」
    「いくつか商品を比較された中で、最終的に〇〇を選んだのは、どのようなお考えからですか?」
  • Step3: 感情を尋ねる
    「その動画を見ている時、どんなお気持ちでしたか?」
    「〇〇を使い始めた時、率直にどう感じましたか?」

このように、具体的な行動の記憶を呼び起こすことから始めると、対象者は当時の状況を思い出しやすくなり、それに付随する思考や感情も自然と引き出されやすくなります。

優れた質問項目とは、単なる問いのリストではなく、対象者の記憶と内面への旅をエスコートするシナリオなのです。

質問の数にコツはある?30分間の適切な質問数は?

デプスインタビューを計画する際、特に経験の浅い担当者の方が抱きがちな疑問の一つに、「時間内にどれくらいの数の質問をすればよいのか」というものがあります。

特に限られた時間の中で最大限の成果を出したいと考えると、質問数にこだわりたくなる気持ちも理解できます。

しかし、デプスインタビューの本質を捉えると、質問の「数」を追い求めることが必ずしも良い結果に繋がらないことがわかります。

質問は「数」よりも「深さ」と「流れ」が大切

まず理解すべき最も重要な点は、デプスインタビューはアンケート調査とは根本的に目的が異なるということです。

アンケートが多くの項目について網羅的に回答を得ることを目指すのに対し、デプスインタビューは一つのテーマについて、対象者の回答に応じて話を掘り下げ、その背景にある価値観やインサイトに迫ることを目指します。

したがって、事前に用意した質問リストを時間内にすべて消化することを目標にしてしまうと、一つひとつの回答を深掘りする時間がなくなり、表層的な会話に終始してしまう危険性があります。

インタビュアーの役割は、質問を投げかけることではなく、対象者の話に耳を傾け、対話の中から重要な糸口を見つけ出し、そこを深く掘り下げていくことです。

30分間における質問数の考え方

それでも、計画を立てる上での目安は欲しいでしょう。仮にインタビュー時間が30分だとすると、事前に用意する「質問の柱」となる大きなテーマは、2つから4つ程度が現実的な範囲と考えられます。

ここで言う「質問の柱」とは、例えば以下のようなものです。

  • 「〇〇という商品カテゴリーに対する普段の意識について」
  • 「最近〇〇を購入された際の、具体的な行動プロセスについて」
  • 「〇〇を実際に使用してみての、満足点や不満点について」

当日は、これらの柱に沿って対話を開始しますが、一つの柱に対する回答から、さらに「それはなぜですか?」「具体的にはどういうことですか?」「その時、どう感じましたか?」といった深掘りのための質問が、自然発生的に5つも10つも派生していくことになります。

つまり、事前に用意する質問の数は少なくても、実際の対話で交わされる質問の数はもっと多くなるのです。

時間配分の戦略

質問数を考える上で、インタビュー全体の時間配分を計画しておくことが非常に有効です。一般的な60分間のインタビューであれば、以下のような配分が考えられます。

  • 導入・アイスブレイク(5〜10分): 挨拶と自己紹介、調査趣旨の説明で場の雰囲気を作ります。
  • 本題(45〜50分): ここで、事前に用意した2つから4つの「質問の柱」について対話します。各柱に10分から20分程度の時間を割り振るイメージです。
  • まとめ・クロージング(5分): 全体を通しての感想や、言い残したことがないかを確認し、謝辞を述べて終了します。

この計画があることで、インタビュアーは「今、全体のどのあたりにいるのか」「このテーマに少し時間を使いすぎているな」といったペース配分を意識しながら、冷静にインタビューを進めることができます。

もちろん、話が非常に盛り上がり、重要なインサイトが得られそうな場合は、計画に固執せず、柔軟に時間を延長することも大切です。

要するに、質問数に絶対的な正解はありません。

重要なのは、調査目的を達成するために「必ず聞かなければならない核心的な問い」をいくつか設定し、あとは対象者との対話の流れを重視しながら、その核心に迫るための時間を十分に確保するという戦略的な視点を持つことです。

本音を引き出すデプスインタビューのコツ

デプスインタビュー コツ
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  • 安心感を生むラポール形成の重要性
  • 傾聴と深掘りで本音を引き出す技術
  • やってはいけない失敗例と回避策
  • 外部サービスの賢い選び方

安心感を生むラポール形成の重要性

デプスインタビューにおいて、どんなに優れた質問を用意しても、対象者が心を閉ざしていては、得られるのは当たり障りのない建前の回答だけです。

対象者がリラックスし、「この人になら本音を話しても大丈夫だ」と感じられるような心理的な土台作りが、何よりも先に必要となります。

このインタビュアーと対象者の間に築かれる、互いを信頼し合った関係性のことを、心理学の用語で「ラポール」と呼びます。ラポール形成こそが、深層心理への扉を開ける最初の鍵なのです。

ラポールを形成するための具体的なテクニック

ラポールは、決して特別な能力ではなく、いくつかの具体的なテクニックを意識することで、誰でも形成の確率を高めることができます。

  • 最初の数分間での自己開示
    インタビューの冒頭、いきなり本題に入るのではなく、まずはインタビュアー自身が少しだけプライベートな情報を開示することが効果的です。例えば、「本日は〇〇から参りました、高橋と申します。最近、猫を飼い始めまして…」といった具合に、人間味を感じさせる自己紹介をすることで、相手の警戒心を和らげることができます。人は、全く素性の知れない相手よりも、少しでも人柄がわかる相手に対して心を開きやすいものです。
  • 共通点を見つけて興味を明確に示す
    事前に得ている対象者の情報(アンケートの回答など)に目を通し、自分との共通点を探しておくのも良い方法です。「福島県のご出身なのですね。実は私の母も福島でして」「〇〇を趣味にされているとか。私も少しだけかじったことがあるんです」といったように、共通の話題から入ることで、一気に心理的な距離が縮まります。また、相手の話す内容に対して、「それは面白いですね」「もっと詳しくお聞きしたいです」と、純粋な興味を言葉や態度で示すことが、相手に「自分の話は歓迎されている」という安心感を与えます。
  • ミラーリングで無意識に同調する
    ミラーリングとは、相手の仕草や姿勢、話すペースや声のトーンなどを、まるで鏡のようにさりげなく真似るテクニックです。例えば、相手がコーヒーを飲んだら、自分も少し間を置いて飲む。相手が身を乗り出して話してきたら、自分も少し姿勢を前にする。これを意識的に行うことで、相手は無意識のレベルで「この人は自分と波長が合う」と感じ、親近感を抱きやすくなると言われています。ただし、あからさまに真似をすると不快感を与えるので、あくまで自然に行うことが大切です。
  • 徹底して肯定的な姿勢を貫く
    対象者の発言内容が、たとえ自分の考えや常識と異なっていたとしても、決して否定的な態度をとってはいけません。「でも」「しかし」といった言葉で話を遮るのではなく、「なるほど、そういうお考えなのですね」「おっしゃる通り、そういう側面もありますね」と、まずは相手の意見を丸ごと受け止める姿勢が不可欠です。この肯定的な態度が、「何を言っても、この人は受け止めてくれる」という絶対的な安心感に繋がり、より深い自己開示を促すのです。

ラポール形成は、インタビューの冒頭だけで終わるものではなく、終了まで常に意識し続けるべきマインドセットです。

この見えない信頼の架け橋を築くことができて初めて、デプスインタビューはその真価を発揮すると言えるでしょう。

傾聴と深掘りで本音を引き出す技術

信頼関係の土台であるラポールを築いたなら、次はいよいよインタビューの本質的な技術、「傾聴」と「深掘り」を駆使して、対象者の心の奥深くへと分け入っていく段階です。

この二つの技術は、車の両輪のような関係にあります。「傾聴」によって相手に気持ちよく話してもらうという推進力を生み出し、「深掘り」によってインサイトという目的地へと的確にハンドルを切っていくのです。

「聴く」技術としての傾聴

傾聴とは、単に相手の話を聞く(hearing)ことではありません。相手の言葉はもちろん、その表情や声のトーン、仕草といった非言語的なメッセージにも注意を払い、全身で相手を理解しようとする積極的な姿勢(listening)を指します。

  • 相槌のバリエーションを豊かにする
    単調な「はい、はい」という相槌だけでは、相手は「本当に聞いているのだろうか」と不安になります。「なるほど!」「へぇ、そうなんですか!」「おっしゃる通りですね」「わかります」といったように、感嘆、驚き、同意、共感など、感情を込めた多彩な相槌を打つことで、会話にリズムが生まれ、相手はより話しやすくなります。
  • 相手の言葉を繰り返す(オウム返し)
    これは傾聴の基本的ながら非常に強力なテクニックです。対象者が「サッカーに興味があるんです」と言ったら、「サッカーに興味がおありなんですね」と繰り返す。これだけで、相手は「私の話をしっかり受け止めてくれている」と認識し、安心して次の話に進むことができます。さらに、「〇〇が好きなんですね~」と少し語尾を上げるだけで、自然な形で次の発言を促す効果もあります。

「本質に迫る」技術としての深掘り

傾聴によって引き出された話の中から、調査目的に関連する重要な芽を見つけ出し、そこを掘り下げていくのが深掘りの役割です。

  • 「なぜ?(Why?)」の表現を工夫する
    理由を知りたいときに、つい「なぜですか?」と直接的に聞いてしまいがちですが、この問い方は時に相手を詰問しているような印象を与え、思考を停止させてしまうリスクがあります。理由を尋ねたい場合は、より柔らかい表現に置き換えることを心がけましょう。
    • (例)「そのように思われたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?」
    • (例)「〇〇を選んだ背景には、どのようなお気持ちがあったのですか?」
    このように尋ねることで、相手はプレッシャーを感じることなく、自然な形で自身の思考プロセスを語り始めてくれます。
  • 具体的なエピソードやシーンを尋ねる
    「〇〇が重要だと思います」といった抽象的な意見が出てきたら、そこで終わらせずに、その意見が形成された具体的な体験を尋ねることが有効です。「そう思われた、何か象徴的な出来事やエピソードがあれば教えていただけますか?」と問いかけることで、話にリアリティと深みが生まれます。人は、具体的なシーンを思い出す過程で、それに付随する感情や価値観も一緒に言語化しやすくなるのです。
  • 言葉の裏にある矛盾や違和感を捉える
    時には、対象者の発言内容と、その時の表情や態度にズレが生じることがあります。例えば、「満足しています」と言いながらも、少し不満げな表情を浮かべている場合などです。そうした些細な違和感を敏感に察知し、「差し支えなければ、もう少し詳しくお伺いしたいのですが、〇〇の点で何か気になったことはございませんでしたか?」と丁寧に問いかけることで、言葉には出せなかった本音に迫れることがあります。

傾聴は対話の潤滑油であり、深掘りはインサイトへのドリルです。この二つを巧みに使い分けることで、インタビュアーは単なる聞き手から、対象者の内面への旅を導く優れたガイドへと進化することができるのです。

やってはいけない失敗例と回避策

デプスインタビューの成功のコツを学ぶことはもちろん大切ですが、それと同じくらい、「よくある失敗」のパターンを知り、それを未然に防ぐ知識を身につけておくことも、調査の質を高める上で非常に有効です。

ここでは、経験の浅いインタビュアーが陥りがちな代表的な失敗例と、それを避けるための具体的な回避策を紹介します。

失敗例1: 自分の仮説に固執し、誘導尋問をしてしまう

インタビュアーは多くの場合、「おそらくこうではないか」という仮説を持ってインタビューに臨みます。しかし、その仮説を証明したいという気持ちが強すぎると、無意識のうちに自分の望む答えを引き出そうとする質問をしてしまいます。

  • 具体的な言動: 「この商品の〇〇という点は、やはり便利ですよね?」と同意を求める形で質問する。「つまり、こういうことですか?」と相手の話を自分の解釈でまとめてしまう。
  • 回避策: インタビュー中は、自分の仮説は一旦「忘れる」くらいの意識を持つことが大切です。主役はあくまで対象者であり、インタビュアーは白紙の状態で相手の世界観を理解することに徹します。質問は常に中立的でオープンな形を心がけ、対象者自身の言葉で語ってもらうことを最優先します。

失敗例2: 沈黙を恐れて、インタビュアーが話しすぎてしまう

対象者が少し考え込んでいる「間」や「沈黙」が怖くて、つい自分が先に話してしまったり、余計な解説を加えてしまったりするケースです。これでは、対象者が深く考える機会を奪ってしまいます。

  • 具体的な言動: 相手が黙るとすぐに次の質問を投げかける。自分の意見や関連知識を長々と話してしまう。
  • 回避策: 「沈黙は、対象者が思考を整理している貴重な時間である」と認識を改めましょう。相手が考え込んでいる様子であれば、焦らずにじっくりと待つ姿勢が不可欠です。インタビュアーと対象者の話す割合は「2対8」、あるいは「1対9」程度が理想であると心得ましょう。

失敗例3: 否定的な接続詞や言葉で、相手の心を閉ざさせてしまう

良かれと思っての発言でも、相手の意見を否定するような言葉を使ってしまうと、対象者は「これ以上本音を話すのはやめよう」と心を閉ざしてしまいます。

  • 具体的な言動: 「でも、それは〇〇というデータとは違いますね」「しかし、一般的には…」といった言葉で相手の話を遮る。
  • 回避策: どのような意見であっても、まずは「なるほど、そうお考えなのですね」と一度完全に受け止めることが鉄則です。もし別の視点を提示したい場合でも、「ありがとうございます。そういう見方もあるのですね。一方で、このような考え方についてはいかがでしょうか?」というように、相手への敬意と肯定から入るコミュニケーションを徹底します。

失敗例4: 時間配分を誤り、聞きたかった核心に迫れない

インタビューの前半で、特定の話題で盛り上がりすぎてしまい、気づいたら残り時間がわずかになっていて、後半に用意していた最も重要な質問が十分にできなくなってしまうパターンです。

  • 具体的な言動: 時計を全く確認せずに話に没頭してしまう。インタビューガイドの流れを無視して、話が大きく脱線したまま戻せない。
  • 回避策: 事前に作成したインタビューガイドで、各テーマの大まかな時間配分を決めておくことが基本です。そして、インタビュー中は時々時計を確認し、全体のペースを意識しながら進行する癖をつけます。インタビュアーには、楽しい会話を提供するエンターテイナーではなく、時間内に目的を達成するプロジェクトマネージャーとしての側面も求められます。

これらの失敗は、事前にその存在を知り、意識するだけで大半を防ぐことが可能です。

完璧なインタビューを目指すあまり萎縮するのではなく、失敗例を学び、万全の準備をしてリラックスして臨むことが、結果的に最も良い成果に繋がります。

外部サービスの賢い選び方

デプスインタビューは、質の高いインサイトを得られる強力な手法である一方、その実施には対象者の適切なリクルーティング、高度なインタビュースキル、そして専門的な分析ノウハウなど、多くの専門性が要求されます。

自社内にこれらのリソースや経験が不足している場合、専門の調査会社などの外部サービスを活用することは、非常に賢明な選択肢と言えます。

しかし、単に「専門家にお任せ」という姿勢では、期待した成果が得られないこともあります。

ここでは、自社の調査目的を達成するための、信頼できるパートナーとしての外部サービスを賢く選ぶためのポイントを解説します。

パートナー選びで失敗しないためのチェックポイント

次に、数ある調査会社の中から、自社に最適なパートナーを見つけるための具体的な確認項目を挙げます。

  1. 課題への深い理解力と提案力
    最初の問い合わせや打ち合わせの際に、こちらの漠然とした課題や調査目的を丁寧にヒアリングし、その上で「なぜデプスインタビューが必要なのか」「どのような設計が最適か」を論理的に提案してくれるかを見極めましょう。テンプレート的な提案しかできない会社ではなく、こちらのビジネス課題に深く寄り添ってくれる姿勢が大切です。
  2. インタビュアー(モデレーター)の実績と専門性
    調査の質は、担当するインタビュアーのスキルに大きく依存します。どのような業界やテーマの調査経験が豊富なのか、具体的な実績を確認させてもらうと良いでしょう。可能であれば、事前に担当インタビュアーと面談し、人柄やコミュニケーションの相性を確認できるのが理想です。
  3. 対象者リクルーティングの品質と精度
    調査の目的に合致しない対象者を集めてしまっては、インタビュー自体が無意味になります。その会社が、質の高い調査モニターをどれくらい抱えているか、あるいは特殊な条件の対象者でも見つけ出すネットワークやノウハウを持っているかを確認しましょう。リクルーティングの精度は、調査会社の実力を測る重要な指標です。
  4. アウトプット(報告書)の質と具体性
    最終的に納品される報告書が、単なるインタビューの発言録の要約に終わっていないかを確認します。過去のレポートのサンプルを見せてもらい、そこからビジネスのアクションに繋がるような具体的な「インサイト」や「提言」まで踏み込んで分析されているかを見極めることが重要です。
  5. 料金体系の透明性
    見積もりを依頼した際に、どの作業にどれくらいの費用がかかるのか、料金体系が明確に提示されるかを確認しましょう。「リクルーティング費用」「インタビュー実査費用」「分析・レポート費用」など、項目ごとに内訳が示されており、追加料金が発生する可能性についても事前に説明してくれる、誠実な会社を選びましょう。

これらの点を総合的に比較検討し、単なる「外注先」ではなく、プロジェクトを共に成功させる「パートナー」として信頼できる会社を選ぶという視点を持つことが、外部サービスの活用を成功させる最大のコツです。

なお、Insights4 Pharmaでは、このようなニーズのお客様のサポートを目的とした「市場調査サポート支援サービス」を提供しています。海外の専門的な領域でも経験のある市場調査会社をご紹介します。

デプスインタビューに関するよくあるご質問(FAQ)

Q
相手の「なぜ?」を深掘りするには、具体的にどのような質問をすれば良いですか?
A

「なぜですか?」と直接的に繰り返すのではなく、質問の表現を工夫することが効果的です。例えば、「そのように感じたのは、何かきっかけがありましたか?」や「〇〇を選んだ背景をもう少し詳しく教えていただけますか?」といった聞き方を試してみてください。

また、具体的な「行動」から尋ねるのも有効なコツです。「〇〇を最後に使った時の状況」などを聞き、そこから「その時どう考えたか」「どう感じたか」へと話を展開させることで、自然な流れで深掘りができます。

Q
インタビューの冒頭で、相手の緊張をほぐし、本音を話しやすい雰囲気を作るにはどうすれば良いですか?
A

対象者がリラックスして本音を話せる雰囲気作り(ラポール形成)が鍵となります。インタビュー冒頭で、以下の点を意識してみてください。

  • インタビュアー自身の簡単な自己開示をする
  • 相手との共通点を見つけて話題にする
  • 相手の発言を否定せず、肯定的に相槌を打つ
  • 「正解・不正解はない」と伝え、心理的安全性を確保する
Q
インタビュアーがやってしまいがちな、誘導尋問などの失敗例と、それを避けるための具体的な注意点を教えてください。
A

はい、特に初心者が陥りがちな失敗がいくつかあります。事前に知っておくことで回避しやすくなります。

  • 誘導尋問:
    自分の仮説に沿うよう「〇〇は便利ですよね?」と聞くのは避け、「〇〇をどう感じましたか?」と中立的に尋ねましょう。
  • インタビュアーが話しすぎる:
    沈黙は相手が考えている時間です。聞き役に徹し、話す割合は2割程度に留めるのが理想です。
  • 時間管理の失敗:
    話が盛り上がっても、全体の時間配分を意識しましょう。インタビューガイドで計画を立てておくことが有効です。

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失敗しないデプスインタビューのコツ|準備から実践までまとめ

この記事で解説してきた内容を踏まえ、最後に、デプスインタビューを成功に導くための実践的なコツをまとめます。

なお、ここで紹介するのは、すぐに現場で役立つテクニックや考え方に焦点を当てたポイントです。

デプスインタビューの本来の意味や、計画から分析に至るまでのより詳細な流れについて、体系的に理解を深めたい方は「【完全ガイド】デプスインタビューの意味を理解して効果を最大化するやり方と注意点まで徹底解説」をあわせてご覧いただくと、各ポイントの背景や目的への理解が一層深まるはずです。

  • デプスインタビューは消費者の本音と潜在ニーズを探る定性調査の手法
  • 目的は仮説構築やアンケート結果の深掘りなどビジネス課題の解決
  • 費用はリクルーティングや会場費、レポート作成費などを考慮して計画
  • 1つの属性に対し5名から10名程度への実施がひとつの目安となる
  • 謝礼は1時間で1万円から2万円程度が一般的な相場と考えられる
  • 他者の意見に影響されず個人の意思決定プロセスを詳細に解明できる
  • 時間やコストがかかり、結果が個人の意見に留まる点には注意が必要
  • 調査目的の明確化から分析まで一連の流れを計画的に設計することが鍵
  • インタビューガイドは質問だけでなく時間配分も含めた当日の設計図
  • 質問は「はい/いいえ」で終わらないオープンクエスチョンを基本とする
  • 30分間の質問数は3つから4つの大きなテーマを目安に深掘りを意識
  • 自己開示や共通項で安心感を与えるラポール形成がインタビューの土台
  • 相手の話を繰り返す傾聴と「なぜ」を避けた丁寧な深掘り技術が重要
  • インタビュアーが話しすぎたり回答を誘導したりするのは典型的な失敗
  • 外部サービスは調査目的への理解度や実績を重視しパートナーとして選ぶ