デプスインタビューの質問項目を作成しようとしているものの、対象者の本音を引き出すにはどうすれば良いか、具体的な作成方法に悩んでいませんか?
そもそもデプスインタビューとは何か、その基本と実例や効果を理解することは、質問作りの第一歩です。
このインタビュー調査を成功させるには、そのやり方だけでなく、適切な人数や費用の見積もり、さらには外部サービスの活用といった準備も欠かせません。
また、多くのメリットがある一方で、見落としがちな注意点も存在します。
この記事では、これらの要素を網羅的に解説し、すぐに使える具体的なインタビュー質問例を交えながら、あなたの疑問を一つひとつ解消していきます。
この記事のポイント
- デプスインタビューの基本と質問項目の基本
- 調査を成功させるための準備や心構え
- 深層心理を引き出す質問項目の具体的な作り方と注意点
- すぐに使えるシナリオ別のインタビュー質問例
成果を出すデプスインタビューの質問項目に必要なもの

- デプスインタビューとは?メリットと注意点
- 半構造化インタビューとの違い
- インタビュー調査を成功させる鍵
- 最適なインタビューの人数と事前に把握しておくべき費用
デプスインタビューとは?メリットと注意点
デプスインタビューは、調査対象者とインタビュアーが1対1形式で対話を行い、特定のテーマについて深く掘り下げる定性調査の手法です。
アンケート調査のように多くの人から表面的なデータを集めるのではなく、一人の対象者から「なぜそう思うのか」「どのような背景でその行動に至ったのか」といった深層心理や潜在的なニーズを探ることを目的としています。
新商品のコンセプト開発や、ブランドイメージの把握、顧客が製品を購入するまでの意思決定プロセスの解明など、多岐にわたる場面で活用されます。
デプスインタビューのメリット
この調査手法が持つ最大の利点は、対象者本人も意識していなかったような「消費者インサイト」を発見できる可能性が高いことです。
インタビュアーが対話を通じて信頼関係を築くことで、対象者はリラックスし、建前ではない本音を話しやすくなります。
これにより、数値データだけでは決して見えてこない、感情や価値観といった質的な情報を得られます。
また、お金や健康といったデリケートな話題についても、他者の目を気にすることなく、率直な意見を聞き出すことが可能です。
留意すべき注意点
一方で、デプスインタビューにはいくつかの注意点も存在します。
まず、一人の対象者に60分から90分程度の時間を要するため、多くのサンプルを集めるには時間とコストがかかることが挙げられます。
得られる情報もあくまで個人の意見であるため、その結果が市場全体の意見を代表するとは限らない点にも配慮が必要です。
さらに、調査の成果はインタビュアーのスキルに大きく左右されます。対象者の本音を引き出すためには、傾聴力や適切な質問を投げかける技術が求められるため、誰でも簡単に行えるわけではないことを理解しておくことが大切です。
要するに、デプスインタビューは消費者の心を深く理解するための強力な手段ですが、その特性を活かすためには、適切な計画とスキルが不可欠であす。
半構造化インタビューとの違い
デプスインタビューとしばしば関連付けられる言葉に「半構造化インタビュー」があります。両者の関係性を正しく理解することは、調査を設計する上で非常に役立ちます。
結論から言うと、デプスインタビューは、定性調査という大カテゴリに含まれる半構造化インタビューという手法の一種ですが、その質問項目が目指す深さに明確な違いが存在します。
半構造化インタビューとは、事前に大まかな質問リスト(インタビューガイド)を用意しつつ、対話の流れに応じて質問の順番を入れ替えたり、リストにない質問を追加したりする柔軟な手法全般を指します。
デプスインタビューとの最も大きな違いは、質問項目が「何を」聞くことを目的としているかです。
半構造化インタビューの質問項目:「事実」と「行動」を把握する
広義の半構造化インタビューでは、質問項目は主に対象者の具体的な行動、経験、意見といった事実を把握するために設計されます。
質問例(新製品のコーヒーメーカー購入者に対して)
- 「購入前に、どの製品と比較検討されましたか?」
- 「情報収集は、どのようなウェブサイトや店舗で行いましたか?」
- 「最終的にこの製品を選んだ決め手となった機能は何でしたか?」
これらの質問は、対象者が「何をしたか」「どう考えたか」という客観的な事実を引き出すことを目的としています。
デプスインタビューの質問項目:「なぜ」という深層心理・価値観を探る
一方、デプスインタビューの質問項目は、前述の事実のさらに奥にある「なぜ、そのように感じ、行動したのか」という、対象者自身も明確に意識していない深層心理や価値観を探るために設計されます。
質問例(新製品のコーヒーメーカー購入者に対して)
- 「『この製品を選んだ決め手はデザインだった』とのことですが、そのデザインを見て、ご自身の生活がどのように変わると思いましたか?」
- 「比較検討されていた製品ではなく、こちらを選んだ瞬間の気持ちを、もう少し詳しく教えていただけますか?」
- 「毎朝コーヒーを淹れる時間は、あなたにとってどのような意味を持つ時間ですか?」
これらの質問は、単なる機能や価格といった理由の先にある、個人のライフスタイルや感情、自己表現といった、より本質的な動機を探ろうとします。
このように、全てのデプスインタビューは半構造化という柔軟な形式を取りますが、その中で使われる質問項目の「解像度」と「掘り下げ方」が根本的に異なります。
事実の全体像を把握したい場合は広義の半構造化インタビューが適していますが、消費者の心を動かす根本的なインサイトを発見したい場合には、デプスインタビューならではの質問設計が不可欠となるのです。
インタビュー調査を成功させる鍵
インタビュー調査を成功に導くためには、単に質問を用意して尋ねるだけでは不十分です。
成果を左右するいくつかの鍵となる要素が存在し、それらを事前に丁寧に準備することが、質の高い情報を引き出すための土台となります。
鍵1:調査目的と仮説の明確化
何よりも先に、「このインタビューを通じて何を明らかにしたいのか」という調査目的を明確に定めることが出発点です。
例えば、「自社製品の解約率が高い原因を探る」といった具体的な目的がなければ、質問がぼやけてしまい、得られる回答も散漫なものになってしまいます。
目的に基づいて、「おそらく価格ではなく、使い方が分かりにくいことが原因ではないか」といった仮説を立てることで、インタビューで検証すべき点がシャープになり、質問項目の設計が格段にしやすくなります。
鍵2:適切な対象者の選定
次に、設定した目的と仮説に合致する人物を、調査対象者として慎重に選定することが大切です。
例えば、製品の利用実態を知りたいのであれば、実際のユーザーに話を聞く必要があります。
この時、「半年以上の継続利用者」「一度解約した経験がある人」など、条件を細かく設定することで、より目的に沿った深い情報を得られます。
対象者の選定を誤ると、どれだけ優れた質問を用意しても、有益なインサイトには繋がりません。
鍵3:安心できる環境と信頼関係の構築
インタビューは、対象者が安心して本音を話せる雰囲気作りがすべてと言っても過言ではありません。インタビュアーは評価者ではなく、あくまで「あなたの話を聞きたい」という傾聴の姿勢を徹底することが求められます。
インタビューの冒頭で自己紹介を丁寧に行い、調査の趣旨やプライバシー保護について説明することで、対象者の警戒心を解きほぐします。
圧迫感を与えず、共感的な相槌を打ちながら対話を進めることで、徐々に信頼関係(ラポール)が築かれ、心の奥にある率直な意見を引き出すことが可能になります。
これらの点を踏まえると、インタビュー調査の成功は、事前の緻密な計画と、当日のインタビュアーの対話技術という両輪によって支えられていると言えます。
最適なインタビューの人数と事前に把握しておくべき費用
デプスインタビューを実施するにあたり、プロジェクトの計画段階で必ず検討しなければならないのが、「何人にインタビューを行うべきか」という人数設定と、それに伴う「どのくらいの費用がかかるのか」という予算の策定です。
これらは調査の品質と実現可能性を担保する上で、非常に大切な要素となります。
最適なインタビューの人数
デプスインタビューは定性調査であるため、定量調査のように統計的な代表性を求めるものではありません。
目的は、多様な意見のパターンや深層にあるニーズを発見することにあります。そのため、一般的には1つのターゲット層(セグメント)あたり5名から15名程度が目安とされています。
この人数の背景には、「飽和(サチュレーション)」という考え方があります。
インタビューを重ねていくと、ある程度の人数(多くは10人前後)を超えたあたりから、新しい発見や異なる意見が出現する頻度が急激に減少し、同じような内容の回答が多くなってきます。
この状態を飽和と呼び、そのテーマに関する主要な意見のパターンは概ね出尽くしたと判断できます。したがって、やみくもに対象者数を増やすのではなく、この飽和状態を目安に人数を設計するのが効率的です。
事前に把握しておくべき費用
デプスインタビューにかかる費用は、複数の要素で構成されます。予算を組む際には、これらの内訳を理解しておくことが不可欠です。
- 対象者リクルーティング費:調査対象者を募集するための費用です。調査会社に依頼する場合、条件に合う人を探し出すためのスクリーニング調査や、連絡調整の費用が含まれます。対象者の条件が希少であるほど、この費用は高くなる傾向があります。
- 対象者への謝礼:インタビューに協力してくれた対象者に支払うインセンティブです。60分から90分のインタビューで、一般的には5,000円から20,000円程度が相場となりますが、医師や経営者など専門性の高い職種の場合は、さらに高額になることもあります。
- インタビュアー(モデレーター)費:インタビューを実施する専門家への依頼費用です。調査の企画設計から、当日の進行、分析までをトータルで依頼するケースが多いです。
- 会場費・機材費:対面でインタビューを行う場合の会場レンタル費用や、録音・録画機材の費用です。オンラインで実施する場合は、これらの費用を抑えることが可能です。
- 分析・レポーティング費:インタビューの録音データを文字に起こす費用や、その内容を分析して報告書にまとめるための費用です。
以上の点を踏まえると、最適な人数と費用は調査の目的や対象者の特性によって変動するため、計画の初期段階でこれらの要素を慎重に見積もることが、プロジェクトを円滑に進めるための鍵となります。
深層心理を探るデプスインタビュー質問項目の実践例

- インタビューの基本的なやり方
- 【事例】使えるインタビュー質問例
- 質問設計で失敗しないための注意点
- 外部の調査サービスの活用
- 良いデプスインタビュー質問項目を作るコツ
インタビューの基本的なやり方
デプスインタビューの「やり方」とは、言い換えれば効果的な「質問の投げかけ方」の連鎖です。
単に対話を進めるのではなく、各フェーズの目的に応じて質問の種類と順序を戦略的に組み立てることが、対象者の深層心理に迫る鍵となります。
ここでは、インタビューの流れを3つのフェーズに分け、それぞれの段階でどのような質問が機能するのかを具体的に解説します。
第1フェーズ:導入「対話の土台を築くための質問」
インタビューの冒頭では、信頼関係(ラポール)を築き、対象者が安心して話せる土台を作ることが最優先です。ここでの質問は、核心に触れるのではなく、相手が自由に、そして楽に答えられる内容でなければなりません。
- 質問の目的:対象者の緊張をほぐし、普段の生活や価値観の全体像を大まかに把握する。
- 質問のタイプ:事実に基づいた、答えやすいオープンクエスチョン。
- 質問例「本日はお越しいただきありがとうございます。差し支えなければ、普段のお仕事や、お休みの日の過ごし方について少し教えていただけますか?」
- 質問例「最近、何か夢中になっていることや、楽しいと感じた出来事はありましたか?」
これらの質問は、直接的な調査データを得るためというよりも、対象者の人となりを理解し、その後の深掘りのための文脈情報を集めるウォーミングアップとして機能します。
第2フェーズ:本題「事実から深層へ段階的に掘り下げる質問」
ここがインタビューの核となる部分です。対象者の内面へと深く掘り下げるために、質問を段階的に構成します。基本は「行動→思考→感情・価値観」の順で深めていくのが定石です。
- 行動・事実に関する質問
まずは、具体的な体験や行動といった「事実」から尋ねます。これは客観的で思い出しやすいため、対話の起点として最適です。 - 思考・評価に関する質問
具体的な行動が明らかになったら、その行動の背景にある「思考」や「判断基準」について尋ねます。- 質問例:「いくつか選択肢があった中で、最終的にその商品に決められたのは、どのような点を評価されたからでしょうか?」
- 感情・価値観に関する質問
思考の理由が語られたら、いよいよその根底にある「感情」や「価値観」に迫ります。これがインサイト発見に繋がる最も重要な問いかけです。- 質問例:「その商品を使うことで、『良かった』と感じたとのことですが、その気持ちは、ご自身の生活にとってどのような意味を持つものですか?」
- 質問例:「そのように感じられる背景には、〇〇さんが普段から大切にされている考え方やこだわりがあるのでしょうか?」
このように、具体的な行動の描写から始め、徐々に対象者の内面世界へと焦点を移していく質問の連鎖によって、本人も意識していなかったような深層心理が言語化されやすくなります。
第3フェーズ:まとめ「全体を俯瞰し、言い残しを防ぐ質問」
インタビューの最後には、それまでの対話内容を確認し、対象者が言い残したことがないかを確かめるための質問をします。
- 質問の目的:対話内容の認識合わせと、新たな視点の補足。
- 質問例「本日伺ったお話の中で、特に〇〇という点が印象的でしたが、この私の理解で合っていますでしょうか?」
- 質問例「その他に、私たちがまだ聞いていないことで、このテーマについて何か付け加えておきたいことはございますか?」
この最後の問いかけから、思わぬ重要なインサイトが得られることも少なくありません。以上の点を踏まえると、インタビューのやり方とは、計画された質問の連鎖を通じて、対象者の心の中を丁寧に旅していくプロセスであると言えます。
【事例】デプスインタビューの2つの質問例
ここでは、具体的な2つのシナリオを想定し、実際に活用できるインタビュー質問例を紹介します。これらの質問はあくまで出発点であり、実際の現場では対象者の回答に応じて柔軟に変化させていくことが求められます。
製薬会社が医師へ行うデプスインタビュー
MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)が自己免疫性疾患を専門とする医師からアンメットメディカルニーズや深い洞察を引き出すためのデプスインタビュー質問項目例を以下に示します。質問は、医師の経験や思考を段階的に深掘りできるよう構成されています。
序盤:信頼関係の構築と現状理解
この段階では、医師の日常診療の全体像を把握し、話しやすい雰囲気を作ることが目的です。
- 質問例「先生が現在ご担当されている自己免疫性疾患の患者様の中で、最も多い疾患とその理由についてお聞かせいただけますか?」
- 質問例「この疾患の患者様を長期的に診ていく上で、先生が最も重要視されている点は何でしょうか?」
- 質問例「最近の診療で、特に診断や治療方針の決定に悩まれた患者様のケースがあれば、個人情報に配慮した上で教えていただけますか?」
中盤:課題の深掘りとアンメットニーズの探索
ここでは、現在の治療法における具体的な課題や、医師が感じている「もっとこうだったら」というニーズを探ります。
- 現在の治療について
- 質問例「既存の治療選択肢(生物学的製剤、JAK阻害薬など)を使い分ける際、先生が最も重視される判断基準は何ですか?(例:有効性、安全性、患者のライフスタイルなど)」
- 質問例「現在の治療法では効果が不十分、あるいは副作用で継続が困難になる患者様は、全体の何割くらいいらっしゃる印象ですか?また、そのような患者様にはどのような特徴がありますか?」
- アンメ-ットニーズの探索
- 質問例「この疾患の治療において、現在『最も解決されていない課題』は何だとお考えですか?」
- 質問例「もし理想的な治療薬が存在するとしたら、それはどのような特徴を持つべきでしょうか?(例:特定の作用機序、投与方法、効果発現の速さなど)」
- 質問例「治療ゴールを設定する上で、臨床指標(例:疾患活動性スコア)以外に、先生が『ここまで改善させたい』と感じる患者様のQOL(生活の質)に関する具体的な目標はありますか?」
終盤:将来の展望と本質的なインサイトの獲得
医師の専門家としての将来的な視点や、疾患に対する根本的な考え方を引き出します。
- 質問例「今後5年から10年で、この疾患の治療はどのように変化していくと予測されますか?また、その変化に最も貢献するであろう科学的進歩は何だと思われますか?」
- 質問例「先生がこの疾患領域の研究や診療で、ご自身のキャリアを通じて最も解明したい、あるいは貢献したいと考えていらっしゃることは何でしょうか?」
- 質問例「本日の対話を通じて、私たちがまだ触れていない点で、この疾患を理解する上で非常に重要だと先生がお考えになる点があれば、ぜひお聞かせください。」
携帯電話サービスの解約者へのデプスインタビュー
携帯電話契約サービスの解約者に対し、解約の詳細な理由や心理的背景を深く探るためのデプスインタビュー質問項目例を、対話の流れに沿って具体的に作成しました。
これらの質問は、単なる事実確認に留まらず、対象者の感情や価値観、意思決定のプロセスを解き明かすことを目的としています。
導入と関係構築(アイスブレイク)
目的: 対象者の緊張をほぐし、普段のスマートフォン利用に関する全体像を掴むことで、話しやすい雰囲気を作ります。
- 質問例「本日はお忙しい中ありがとうございます。まず、普段スマートフォンはどのようなこと(例:動画視聴、SNS、仕事の連絡など)によく利用されるか、教えていただけますか?」
- 質問例「〇〇さんが携帯電話の契約サービスを選ぶ上で、普段から『ここは譲れない』あるいは『特に重視している』と感じる点は何ですか?(例:料金の安さ、通信の速さ、サポートの手厚さなど)」
- 質問例「これまで携帯電話会社を乗り換えたご経験は、今回が初めてでしたか?それとも何度かご経験がありますか?」
契約当時の状況と利用中の体験
目的: 解約したサービスを最初に選んだ理由や、利用中に感じていた満足点・不満点を把握し、解約に至る前のベースラインとなる評価を理解します。
- 質問例「そもそも、今回解約された当社のサービスを、最初に契約されたきっかけや決め手は何だったのでしょうか?」
- 質問例「ご契約されていた期間中、当社のサービスに対して全体的にどのような印象をお持ちでしたか?特に『ここが良かった』と感じる点があれば教えてください。」
- 質問例「一方で、実際に利用されている中で、料金プランや通信品質、あるいは店舗や電話でのサポート対応などに関して、小さなストレスや『少し分かりにくいな』と感じた点はありましたか?」
解約を意識した「きっかけ」の深掘り
目的: 解約を考え始める直接的なきっかけ(トリガー)となった出来事を特定し、その時の感情や思考を詳細に探ります。
- 質問例「『もしかしたら、この契約を見直した方が良いかもしれない』と、最初に思われたのは、どのような出来事がきっかけでしたか?(例:料金請求、他社の広告、家族や友人からの話など)」
- 質問例「そのきっかけに直面した時、率直にどのように感じましたか?(例:がっかりした、腹が立たしかった、仕方ないと思ったなど)」
- 質問例「その出来事が起こる前と後で、当社のサービスに対する見方や考え方にどのような変化がありましたか?」
比較検討と意思決定のプロセス
目的: きっかけを受けてから、実際に解約を確定するまでの間に行われた情報収集、他社との比較、そして最終的な意思決定の心理的なプロセスを時系列で追体験します。
- 質問例「解約を考え始めてから、実際に他社のサービスを調べ始めるにあたり、まずどのような情報(例:公式サイト、比較サイト、口コミなど)から収集されましたか?」
- 質問例「複数の選択肢を比較検討する中で、最終的に乗り換え先を決めた『最後の一押し』となった要因は何でしたか?」
- 質問例「この一連の検討プロセスにおいて、ご家族やご友人など、どなたかに相談されましたか?もし相談された場合、どのようなアドバイスがありましたか?」
- 質問例「もし当社が、検討されている段階で〇〇様に対して何かご提案をしていたら、解約を思いとどまる可能性はありましたか?それはどのような内容だったと思われますか?」
解約手続きとブランドへの最終印象
目的: 解約手続きそのものの体験を評価してもらい、ブランドに対する最後の印象がどのように形成されたかを探ります。
- 質問例「実際の解約手続きは、オンライン、お電話、店舗のいずれで行われましたか?その手続きはスムーズに進みましたか?」
- 質問例「手続きの過程で、何か分かりにくい点や不満に感じた点はありましたでしょうか?」
- 質問例「手続きの際に、担当者から解約を思いとどまるような提案(慰留)はありましたか?もしあった場合、その提案内容や伝えられ方について、どのように感じましたか?」
今後の展望と再契約の可能性
目的:- 現在の満足度を確認し、もし将来的に自社サービスがどのように変われば、再契約の選択肢となりうるか、未来に向けた改善のヒントを得ます。
- 質問例「新しいサービスに乗り換えてみて、以前と比較して『ここが良くなった』と感じる点、『逆にここは前の方が良かった』と感じる点があれば、それぞれ教えてください。」
- 質問例「少し難しい質問かもしれませんが、もし将来、当社のサービスがどのように変われば、『もう一度契約しても良いかな』と思われますか?どんな些細なことでも結構です。」
質問設計で失敗しないための注意点
デプスインタビューの成否は、質問の設計段階で大部分が決まると言っても過言ではありません。
対象者から本質的な情報を引き出すためには、いくつかの陥りやすい罠を避け、慎重に質問を組み立てる必要があります。
ここでは、特に注意すべき4つのポイントを解説します。
1. 誘導的な質問を避ける
インタビュアーが無意識のうちに、自分が期待する答えへと対象者を導いてしまう質問は厳禁です。例えば、「この機能は便利ですよね?」と尋ねてしまうと、対象者は「はい」と答えることが期待されていると感じ、本当はそう思っていなくても同意してしまう可能性があります。
これでは本音を引き出せません。代わりに、「この機能について、どのようにお感じになりましたか?」のように、中立的で開かれた問いかけをすることが大切です。
2. 一度に複数のことを聞かない
「価格とデザインについて、満足した点と不満だった点を教えてください」のように、一つの質問文に複数の問いを詰め込むと、対象者は何から答えれば良いか混乱してしまいます。
その結果、どちらか一方の答えが抜け落ちたり、浅い回答になったりしがちです。質問は常に「一つの質問で、一つのことだけを聞く」という原則を守り、「まず価格について、どのようにお考えですか?」と一つずつ尋ねるようにしましょう。
3. 抽象的ではなく具体的な質問をする
「良いサービスとは何だと思いますか?」のような抽象的な質問は、対象者が答えるのに苦労するだけでなく、得られる回答も一般論に終始しがちです。
そうではなく、「あなたがこれまで利用した中で、最も良いと感じたサービスの経験について、具体的に教えていただけますか?」と尋ねることで、対象者は自身の体験に基づいて語ることができ、そこから価値観やニーズに関する具体的なヒントが得られます。
4. 「なぜ?」の繰り返しに頼らない
行動の理由を深掘りする際に「なぜですか?」と繰り返すことは有効な手段ですが、多用すると尋問のように感じさせてしまい、相手を追い詰めることがあります。
同じ意図を伝える場合でも、「そのように行動された背景には、どのようなお考えがあったのでしょうか?」や「何がきっかけで、そのように決断されたのですか?」といったように、表現を変えることで、より柔らかく、対話的な雰囲気の中で理由を探ることが可能になります。
これらの注意点を意識して質問を設計することで、対象者が自然体で、かつ深く自分の内面を語ってくれる可能性を大きく高めることができます。
外部の調査サービスの活用
デプスインタビューは非常に専門性の高いスキルを要するため、自社内に経験豊富なインタビュアーがいない場合や、リソースが限られている場合には、外部の専門的な調査サービスを活用することが賢明な選択肢となります。
専門企業の力を借りることで、調査の質を担保し、より確実な成果を得ることが期待できます。
どのような場合に活用を検討すべきか
外部サービスの活用を検討すべき主なシナリオは以下の通りです。
- 社内に専門スキルがない場合:前述の通り、デプスインタビューの成果はインタビュアーの技術に大きく依存します。傾聴力、ラポール形成能力、適切なプロービング技術などを持つ専門家でなければ、表面的な回答しか得られない可能性があります。
- 対象者のリクルーティングが困難な場合:医師や特定の技術者、企業の役員など、ニッチで多忙な層を対象とする場合、自社だけでアポイントを取り付けるのは非常に困難です。調査会社は独自のネットワークや大規模なモニターパネルを保有しているため、条件に合った対象者を効率的に集めることができます。
- 客観的な視点が必要な場合:自社の担当者がインタビューを行うと、どうしても製品やサービスへの思い入れから、無意識のうちに回答を誘導してしまったり、分析にバイアスがかかったりするリスクがあります。第三者である外部企業が実施することで、先入観のない客観的な視点から情報を収集・分析できます。
- 時間的リソースが不足している場合:デプスインタビューは、計画から対象者募集、実査、文字起こし、分析、報告書の作成まで、非常に多くの工数を要します。これらのプロセスを専門企業に一任することで、社内のチームは本来注力すべきコア業務に集中できます。
調査サービス選定のポイント
外部の調査会社を選ぶ際には、単に費用だけで比較するのではなく、いくつかの重要な観点から検討することが求められます。
まず、自社が調査したい領域(例えば、IT、医療、消費財など)におけるインタビュアーの実績や専門知識が豊富かを確認することが大切です。
また、対象者のリクルーティング能力の高さや、分析から得られたインサイトを具体的な戦略提言にまで落とし込めるかどうかも、重要な選定基準となります。
このように、外部の調査サービスは単なる「外注」ではなく、調査プロジェクトの成功確率を飛躍的に高めるための「戦略的パートナー」と位置づけて活用を検討することが、最終的なビジネス成果に繋がります。
よくあるご質問(FAQ)
- Qデプスインタビューの質問は、通常のアンケートやインタビューの質問と何が違いますか?
- A
最も大きな違いは、質問が目指す「深さ」にあります。通常のインタビューやアンケートの質問が「何をしたか」「どう思ったか」という事実や行動を把握することを目的とするのに対し、デプスインタビューの質問は、その奥にある「なぜ、そのように感じ、行動したのか」という深層心理や価値観を探るために設計されます。
例えば、「どの製品と比較しましたか?」と聞くのが通常の質問だとすれば、デプスインタビューでは「AではなくBを選んだ瞬間の気持ちを、もう少し詳しく教えていただけますか?」といったように、感情や動機に焦点を当てた問いかけを重視します。
- Q初めてでも効果的な質問項目を作るには、何から始めれば良いですか?
- A
まずは、「このインタビューを通じて何を明らかにしたいのか」という調査目的を明確に定めることから始めてください。目的が定まると、検証すべき仮説が見えてきます。
次に、個別の質問を考える前に、インタビュー全体の流れ(フロー)を設計することが大切です。「導入(アイスブレイク)→本題(大きなテーマから具体的な話へ)→まとめ」という大枠を作り、本題では「行動に関する質問→思考に関する質問→感情・価値観に関する質問」というように、段階的に話を深めていく構成を意識すると、対象者が自然に本音を話しやすい、効果的な質問の流れを組み立てることができます。
- Q質問を設計する上で、特にやってはいけない「悪い質問」の例はありますか?
- A
はい、避けるべき代表的な「悪い質問」がいくつかあります。
- 誘導的な質問:インタビュアーが期待する答えに導くような質問です。
- 悪い例:「この機能は便利ですよね?」
- 良い例:「この機能について、どのようにお感じになりましたか?」
- 一度に複数のことを聞く質問:対象者が何から答えれば良いか混乱してしまいます。
- 悪い例:「価格とデザインについて、満足した点と不満だった点を教えてください。」
- 良い例:「まず価格について、どのようにお考えですか?」と一つずつ尋ねます。
これらの質問は、対象者の自由な思考を妨げ、本音とは異なる回答を引き出してしまう可能性があるため、特に注意が必要です。
- 誘導的な質問:インタビュアーが期待する答えに導くような質問です。
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まとめ:失敗しないデプスインタビュー|質問項目の設計と具体例・事例で学ぶ本音の引き出し方
この記事で解説してきた内容を踏まえ、最後に、成果に繋がる良いデプスインタビューの質問項目を作成するためのコツをまとめます。
なお、ここで紹介するのは質問作成に特化したコツです。デプスインタビュー全体の流れや本来の意味について、より体系的に理解を深めたい方は「【完全ガイド】デプスインタビューの意味を理解して効果を最大化するやり方と注意点まで徹底解説」を先にご覧いただくと、以下のポイントがより実践的に感じられるかもしれません。
- 調査の目的と検証したい仮説を最初に明確にする
- 対象者本人も気づいていないインサイトの発見を目指す
- 質問は具体的な行動や事実から入ることを心がける
- 「なぜ」だけでなく「どのように」などの問いかけを工夫する
- 対象者が自由に語れるオープンクエスチョンを基本にする
- インタビュアーが期待する答えへの誘導は徹底的に避ける
- 一つの質問では一つのことだけを尋ねるように設計する
- 抽象的ではなく具体的な体験談を引き出す質問を工夫する
- インタビューの流れを「導入・本題・まとめ」で構成する
- 最初の質問は緊張をほぐすアイスブレイクから始める
- 相手が話しやすいように共感的な傾聴を忘れない
- 行動の質問から思考や感情の質問へと段階的に深める
- 時間配分を意識しつつも対話の流れを最優先する
- 飽和状態を目安に5名から15名程度の人数を設計する
- 専門スキルがない場合は外部サービスの活用も検討する
