「デプスインタビューは何人を対象に合計何人まで行うべき?」という疑問を抱えていませんか。
そのためには、デプスインタビューとは何か、そして同じ定性調査であるグループインタビューやユーザーインタビューとの違いは何なのか、その基本から理解することが調査成功への第一歩です。
最適な人数を知るには、ただ数字を追うのではなく、理論的飽和を基に判断する理由を把握しなくてはなりません。
さらに、具体的なやり方や質問項目の設計、30分間といった限られた時間での質問する数、気になる費用やメリットとデメリットなど知りたいことは多岐にわたるでしょう。
この記事では、これらの要素を一つひとつ丁寧に解説しつつデプスインタビューの人数は何人が最適なのかをしっかりと解説、あなたの調査が成功へと向かうための確かな指針を提供します。
記事のポイント
- デプスインタビューの最適な人数とその科学的な判断基準
- 他のインタビュー手法との明確な違いと適切な使い分け方
- 調査の計画から質問作成までの具体的なやり方と流れ
- 人数設定に関わる費用やメリット・デメリットなどの実践知識
デプスインタビューの人数を決定する基本知識

- そもそもデプスインタビューとは?意味から英語での表現まで
- デプスインタビューは何人を対象に行いますか?
- 定性調査における役割と特徴
- 飽和状態で判断する最適人数とその理由
- グループやユーザーインタビューとの違い
そもそもデプスインタビューとは?意味から英語での表現まで
デプスインタビューとは、調査対象者とインタビュアーが1対1の対話形式で実施する定性調査の手法の一つです。
英語では「in-depth interview」と表記されます。
この調査の主な目的は、アンケートのような定量調査では数値として表すことが難しい、個人の深層心理や価値観、特定の行動に至った背景や理由を深く掘り下げることにあります。
単に「好きか嫌いか」「使うか使わないか」といった表面的な回答を得るのではなく、「なぜそのように感じるのか」「どのような経験がその考え方に影響を与えたのか」といった、対象者自身も普段は意識していないような潜在的なニーズや本音を引き出すことを目指します。
デプスインタビューは何人を対象に行いますか?
デプスインタビューで何人に話を聞くべきかという問いに対して、唯一絶対の正解はありません。
ただし、調査設計における一般的な目安として、1つの対象者セグメント(特定の属性を持つグループ)あたり5名から15名程度で実施されることが多いです。
この人数設定の背景には、デプスインタビューの目的が関係しています。この調査は、市場全体の意見の割合を統計的に示すこと(定量的な一般化)を目的としていません。
むしろ、特定のテーマに関する意見や行動のパターン、深層にある理由などを質的に、そして網羅的に把握することが狙いです。
したがって、少なすぎると多様な視点を得られず、逆に多すぎても途中から同じような意見ばかりが聞かれるようになり、費用対効果が低下してしまいます。
ユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセン氏は、ユーザビリティテストにおいて5人のユーザーをテストすれば、問題の約85%を発見できると提唱しています(出典:Nielsen Norman Group, “Why You Only Need to Test with 5 Users“)。
これはデプスインタビューと目的が異なりますが、少人数でも質の高い調査を行えば多くの発見があるという考え方の一つの参考になります。
最終的な人数は、後述する「飽和」という概念や、調査対象となる層の多様性、そして予算や期間といった現実的な制約を考慮しながら、柔軟に決定することが求められます。
定性調査における役割と特徴
デプスインタビューを理解する上で、まずその上位概念である「定性調査」の役割と特徴を知っておくことが欠かせません。
市場調査の手法は、大きく「定性調査」と「定量調査」の2つに分類されます。
定量調査が、アンケートなどを通じて「どれくらい」「何パーセント」といった数値を集め、統計的に全体の傾向を把握したり、仮説が正しいかを検証したりするために用いられるのに対し、定性調査は数値化できない「言葉」や「行動」そのものをデータとして扱います。
対象者の発言や表情、行動の観察を通して、「なぜそうするのか」「どのように感じているのか」といった、行動の裏にある動機や文脈を深く理解することを目的とします。
このため、定性調査は、まだ仮説が明確でない探索的な段階や、新しいアイデアを発想するためのヒントを得たい場合に特に有効です。
デプスインタビューは、この定性調査の中でも代表的な手法の一つであり、個人の体験を時系列で追ったり、複雑な意思決定のプロセスを解明したりするのに非常に適しています。
| 比較項目 | 定性調査 | 定量調査 |
| 主な目的 | 仮説の発見・構築、原因・背景の深掘り | 仮説の検証、実態・傾向の把握 |
| 取得するデータ | 言葉・行動・感情など質的な情報 | 数値・数量(〜%、〜個など) |
| 主な手法 | デプスインタビュー、グループインタビュー、行動観察調査 | Webアンケート、会場調査、電話調査 |
| サンプル数 | 少数(数人〜十数人規模) | 多数(数百人〜数千人規模) |
| 分析方法 | 発言や文脈の解釈、行動の観察・分析 | 統計解析(クロス集計など) |
このように、両者はどちらが優れているというものではなく、調査の目的やフェーズに応じて使い分ける、あるいは組み合わせて活用することで、より多角的で深い市場理解が可能になります。
飽和状態で判断する最適人数とその理由
デプスインタビューの人数を考える上で最も重要な概念が「理論的飽和(Theoretical Saturation)」です。
これは、インタビューを追加で実施しても、そこから新たな発見や重要な情報、新しいテーマがほとんど現れなくなった状態を指します。
この飽和状態に達した時が、その調査における最適な人数に達したと判断する一つの目安となります。
なぜなら、デプスインタビューのゴールは、特定の人数に聞くこと自体ではなく、調査テーマに関する主要な意見や視点、行動パターンを網羅的に引き出すことにあるからです。
インタビューを続けていると、最初の数名からは次々と新しい話が聞かれますが、ある人数を超えたあたりから、「その話は前の人からも聞いたな」という既出の意見やエピソードの繰り返しが増えていきます。
例えば、新しいスマートフォンの使い勝手について調査しているとします。
最初の3名からは「バッテリーの持ち」「カメラの画質」「操作感」といった異なる視点での重要な意見が次々と出てくるかもしれません。5人目、6人目と続けても、まだ細かい点で新しい発見があるかもしれません。
しかし、10人目にインタビューした際に、それまでの9人から出た意見の範囲を全く超えないようであれば、その対象者セグメントにおいては飽和に近づいていると考えられます。
この飽和という考え方を用いることで、不必要に多くのインタビューを行ってコストと時間を浪費することを防ぎ、同時に、情報が不十分なまま調査を終えてしまうリスクを減らすことができます。
したがって、事前に「10人」と固定的に決めるのではなく、「飽和するまで」という柔軟な姿勢で臨むことが、質の高い調査の鍵となります。
グループやユーザーインタビューとの違い

デプスインタビューは、しばしば他のインタビュー手法と混同されることがあります。
特に「グループインタビュー」や「ユーザーインタビュー」との違いを明確に理解しておくことが、適切な手法選定のために大切です。
グループインタビューとの違い
最も大きな違いは、その名の通り、参加者の人数と形式です。デプスインタビューがインタビュアーと対象者の1対1で行われるのに対し、グループインタビューは通常、1人の司会者(モデレーター)と4名から6名程度の対象者が集まり、座談会形式で進行します。
この形式の違いから、得られる情報の質も異なります。
グループインタビューの利点は、参加者同士の発言が相互に作用し合い、議論が活性化することで、多様な意見やアイデアが生まれやすい点にあります(グループダイナミクス)。
一方で、他人の意見に同調してしまったり、人前では話しにくい本音が出にくかったりするデメリットも存在します。お金や健康といったプライベートなテーマには不向きです。
ユーザーインタビューとの違い
「ユーザーインタビュー」は、より広い概念を指す言葉です。「ユーザー」つまり製品やサービスの利用者に対して行うインタビュー全般を指すため、デプスインタビューもユーザーインタビューの一種と捉えることができます。
特に、UX(ユーザーエクスペリエンス)リサーチの文脈で、特定の製品やサービスの利用実態や課題を深掘りするために行われる1対1のインタビューは、実質的にデプスインタビューと同じ手法を指している場合が多いです。
要するに、手法の特性で分類すると「デプスインタビュー(1対1)」と「グループインタビュー(1対多)」があり、「ユーザーインタビュー」は調査の対象者や目的に着目した呼び方、と言えます。
これらの特性を理解し、調査目的(個人の深層を探りたいのか、多様なアイデアが欲しいのか)に応じて最適な手法を選択することが、調査の成否を分けます。
実践的なデプスインタビューの人数と進め方

- 具体的なやり方と質問項目の作り方
- 知っておきたいメリット・デメリットと費用
- 30分間で効果的な質問する数とは
- まとめ:最適なデプスインタビューの人数
具体的なやり方と質問項目の作り方

デプスインタビューを成功させるためには、計画的な準備と当日の柔軟な対応が求められます。
ここでは、具体的な進め方のステップと、調査の核となる質問項目の作り方について解説します。
1. 調査目的と対象者の明確化
まず最初に、「この調査で何を知りたいのか」という目的を具体的に設定します。目的が明確になることで、誰に話を聞くべきかという対象者条件(年齢、性別、製品利用歴など)も自ずと定まります。
2. 対象者の選定(リクルーティング)
設定した条件に合致する対象者を探し、インタビューへの協力を依頼します。対象者の質が調査の質を大きく左右するため、条件に合わない人が混ざらないよう慎重に進める必要があります。
3. インタビューフローと質問項目の設計
当日の進行台本となるインタビューフローを作成します。これには、大まかな時間の配分と、聞きたい質問のリストが含まれます。質問項目を作成する際は、以下の点が鍵となります。
さらに質問項目の実例や具体例、注意点を深堀りしたい方は別記事「失敗しないデプスインタビュー質問項目の設計と具体例」をご活用ください。
4. インタビューの実施と記録
当日は、対象者がリラックスして話せる雰囲気を作ることが大切です。自己紹介や雑談から入る(アイスブレイク)など、信頼関係を築く工夫が求められます。また、後で正確に分析できるよう、対象者の許可を得た上で必ず音声を録音しておきます。
知っておきたいメリット・デメリットと費用

デプスインタビューは非常に強力な手法ですが、万能ではありません。その特性を理解し、メリットを最大化しつつ、デメリットを補う視点を持つことが大切です。
メリット
- 深いインサイトの獲得: 対象者自身も意識していなかった潜在的なニーズや、行動の裏にある本質的な動機を発見できる可能性が高いです。
- 本音の引き出しやすさ: 1対1のクローズドな環境であるため、他者の目を気にすることなく、率直な意見やネガティブな意見も得られやすいです。金融や健康など、センシティブなテーマの調査にも適しています。
- 柔軟な対話: 事前に用意した質問だけでなく、話の流れに応じてその場で質問を追加したり、深掘りしたりと、柔軟に対応できます。
デメリット
- 統計的な代表性の欠如: 少人数を対象とするため、調査結果を「市場全体の〇%がこう考えている」というように一般化することはできません。あくまで質的な発見であり、量的な裏付けが必要な場合は別途アンケート調査などを組み合わせる必要があります。
- 時間とコスト: 1人あたり60分〜90分程度の時間が必要で、準備から分析まで含めると多くの工数がかかります。そのため、グループインタビューやアンケート調査に比べて費用は高くなる傾向があります。
- インタビュアーのスキルへの依存: 対象者から深い話を引き出せるかどうかは、インタビュアーの傾聴力や質問力、雰囲気作りのスキルに大きく依存します。
費用の目安
デプスインタビューを外部の調査会社に依頼する場合、費用は様々な要素で変動しますが、一般的には対象者1人あたり10万円〜20万円程度が目安となることがあります。この費用には、主に以下の項目が含まれます。
- リクルーティング費: 条件に合った対象者を探し、集めるための費用。
- 対象者への謝礼: インタビューに協力してくれた対象者に支払う謝礼金(1万円〜2万円程度が一般的)。
- インタビュアー費: 調査の企画、実査、分析を行う専門家の費用。
- その他: 会場費、録音データの文字起こし費用、レポート作成費など。
自社で実施すれば費用を抑えることは可能ですが、質の高い調査を行うには専門的なスキルが求められるため、目的や予算に応じて内製か外注かを検討することが賢明です。
30分間で効果的な質問する数とは
「30分」という限られた時間でデプスインタビューを行う場合、質問の「数」を意識するよりも、「深さ」を追求することが何よりも大切になります。
結論から言うと、効果的な質問の数に決まったものはありません。むしろ、質問の数をこなそうとすると、一つひとつの回答を掘り下げる時間がなくなり、デプスインタビューの最大の利点である「深掘り」ができなくなってしまいます。
30分という時間は、本格的なデプスインタビュー(通常60分〜90分)に比べると非常に短いです。そのため、調査のテーマを非常に狭く、具体的に絞り込む必要があります。
例えば、「新しいコーヒーメーカーの利用体験」という広いテーマではなく、「新しいコーヒーメーカーの初期設定プロセスにおける体験」といったように、一つの特定のシーンに焦点を当てます。
この場合、インタビューガイドに記載する主要な質問は3つから5つ程度に絞り込むのが現実的です。
- 「このコーヒーメーカーを箱から出して、最初に使えるようにするまでの一連の流れを思い出して教えていただけますか?」
- 「その中で、特にスムーズに進んだと感じた点はどこでしたか?」
- 「逆に、少し戸惑ったり、分かりにくいと感じたりした点はありましたか?」
これらの主要な質問を投げかけた後、対象者の回答に応じて「なぜそのように感じたのですか?」「具体的にはどのような操作をされたのですか?」といった追加の質問(プローブ質問)を重ねていくことになります。一つの核心的な問いに対する深掘りに10分以上を費やすことも珍しくありません。
したがって、30分間のインタビューでは、多くの質問を網羅することを目指すのではなく、ごく少数の重要な問いを深く掘り下げ、一つのテーマに関する質の高いインサイトを得ることをゴールとすべきです。
デプスインタビューの人数に関するよくある質問(FAQ)

- Q5〜15人という少ない人数で、本当に信頼できる結果が得られるのでしょうか?
- A
はい、得られます。ただし、ここでの「信頼性」の考え方が重要になります。デプスインタビューの目的は、アンケート調査のように「市場全体の何%がこう考えている」といった統計的な一般化を行うことではありません。目的は、個人の行動や意見の裏にある「なぜ」という理由や背景、深層心理を深く理解し、質の高いインサイト(洞察)を得ることです。
この調査における信頼性は、人数の多さではなく、得られた情報の「深さ」と「質」、そして分析の「厳密さ」によって担保されます。新しい発見が得られなくなる「飽和」状態までインタビューを行うことで、そのテーマにおける主要な意見やパターンは網羅できたと判断できます。したがって、目的を達成する上では、5〜15人という人数は少数ではなく、むしろ効率的で適切な規模と考えられます。
- Q調査対象のセグメントが複数ある場合、合計で何人にインタビューすればよいですか?
- A
調査対象としたいセグメントが複数ある場合、目安となる5〜15人という人数は「1セグメントあたり」と考えるのが基本です。なぜなら、それぞれのセグメントは異なる価値観、経験、ニーズを持っている可能性が高いため、セグメントごとに独立してインサイトを抽出する必要があるからです。
例えば、「20代の新規ユーザー」と「40代の長期利用者」という2つのセグメントを比較調査したいとします。この場合、20代の新規ユーザーから飽和状態になるまで(例えば8人)、そして40代の長期利用者からも飽和状態になるまで(例えば8人)インタビューを行います。このケースでは、合計で16人のインタビューが必要になる、という計算になります。セグメントを混ぜて合計人数だけを目標にしてしまうと、どちらのセグメントの意見なのかが曖昧になり、正確な分析が困難になるため注意が必要です。
- QBtoBとBtoCの調査で、人数の考え方に違いはありますか?
- A
基本的な考え方である「飽和を目指す」という点では同じですが、実際に飽和に達するまでの人数には違いが出ることが多いです。
BtoC調査では、対象となる消費者の母数が大きく、ライフスタイルも多様なため、ある程度のバリエーションを捉えるために5〜15名という一般的な目安が適用されやすいです。
一方、BtoB調査では、対象者が特定の業界や職種の専門家であるため、母数が非常に限られています。また、一人ひとりが持つ情報が非常に専門的で密度が濃いことが特徴です。そのため、BtoC調査よりも少ない人数、場合によっては5名前後、あるいは3名程度の専門家に話を聞くだけで、その領域における重要な論点や課題が飽和状態に達することも珍しくありません。BtoBでは、単純な人数よりも「誰に聞くか」という対象者の的確性がより重要になると言えます。
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デプスインタビューの人数は何人が最適?その目安と理由のまとめ
この記事で解説してきた、デプスインタビューの最適な人数に関する要点を以下にまとめます。調査を計画する際のチェックリストとしてご活用ください。
なお、本記事では「人数」というテーマに絞って解説しましたが、デプスインタビューの企画から分析までの全体像を学び、より調査の成功率を高めたい場合は、【完全ガイド】デプスインタビューの意味を理解して効果を最大化するやり方と注意点まで徹底解説を合わせてお読みいただくことで、さらに理解を深めることができます。
