中外製薬とGero社の高齢化社会への挑戦:加齢性疾患に挑む共同研究契約を締結

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中外製薬株式会社とシンガポールのバイオテクノロジー企業Gero社は、加齢に関連する疾患の治療薬開発に向けた共同研究およびライセンス契約を締結しました。

Gero社がAIを用いて特定した新しい創薬ターゲットに対し、中外製薬が独自の抗体エンジニアリング技術を活用して抗体医薬品候補を開発するというもので、最大2億5,000万ドル(約400億円)に及ぶ契約規模が注目を集めています。

この連携は、加齢によって進行する複数の疾患に対応する新たな治療法の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

出典・参照文献:Chugai and Gero Enter into Joint Research and License Agreement to Develop Novel Therapies for Age-Related Diseases|中外製薬公式サイト

中外製薬とGero社の戦略的提携の全貌

  • 研究提携の背景と目的
  • 契約内容と開発の枠組み
  • Gero社のAI技術が持つ革新性
  • 中外製薬が見据える2030年の展望

研究提携の背景と目的

両社の提携は、加齢に伴って発症する疾患への根本的なアプローチを共通の目的としたものです。加齢は多くの慢性疾患と密接に関係しており、単一の疾患を対象とする従来の医療では、対処しきれない課題が増えてきました。ここで注目されるのが、Gero社が開発したAIプラットフォームです。

この技術は、膨大な人間の健康データをもとに加齢に関係する創薬ターゲットを特定する能力を持ちます。中外製薬はこのターゲット情報を活用し、先進的な抗体医薬品の創出を目指します。つまり、科学とデジタルの融合により、疾患の根源に働きかける新たな治療法が模索されているのです。

契約内容と開発の枠組み

今回の契約では、Gero社が発見した創薬ターゲットに対し、中外製薬が抗体医薬品を開発する権利を独占的に取得しています。具体的には、研究から開発、製造、さらには商業化までを中外製薬が担う体制です。

契約には、未公表の契約一時金に加え、開発および販売に関する成果に応じた最大2億5,000万ドルのマイルストーン支払いが含まれています。さらに、製品が上市された際には、売上に応じたロイヤルティもGero社に支払われる仕組みです。

このような包括的かつ柔軟なライセンス契約は、リスクと利益を適切に分担しながら、新たな治療の商業化を加速する点で優れた構造といえるでしょう。

Gero社のAI技術が持つ革新性

Gero社のAI技術は、単なるデータ分析にとどまらず、「人間の加齢そのものをモデル化する」という独自の理論に基づいています。おそらく最大の特徴は、物理学の概念を機械学習に取り入れている点です。

Gero社の「Large Health Model」は、米英の1,000万人以上の健康記録をもとに構築されており、疾患の進行パターンや共通の生物学的メカニズムを解析することが可能です。このアプローチによって、複数の疾患にまたがって作用する治療薬、いわゆる「パイプライン・イン・ア・ピル」の可能性が広がっています。

こうした技術は、従来の創薬方法では見つけることが難しかったターゲットを明らかにし、より根本的かつ持続的な治療を可能にする道を切り開いています。

中外製薬が見据える2030年の展望

中外製薬は、自社の中長期的な成長戦略「TOP I 2030」の中で、「グローバルで世界一級の創薬企業になる」というビジョンを掲げています。この提携は、その実現に向けた具体的なアクションの一つです。

また、オープンイノベーションの促進も重要な柱となっています。他社との連携を通じて自社技術の可能性を拡張し、より多くの患者に価値を届けるという姿勢が明確に現れています。AIとの協業はその象徴であり、今後も技術融合による創薬の進化が期待されます。

一方で、AIに基づくターゲット発見は新しい領域であるため、検証や規制の面での課題も存在します。これらを乗り越えるには、開発のスピードと精度、そして国際的な連携が鍵となるでしょう。

まとめ:中外製薬とGero社の高齢化社会への挑戦:加齢性疾患に挑む共同研究契約を締結

  • 中外製薬とGero社は、加齢関連疾患に対する新たな治療薬の共同開発を開始。
  • Gero社のAI技術が特定した創薬ターゲットを基に、中外製薬が抗体医薬品を創出。
  • 最大2億5,000万ドルにおよぶ契約規模と、成果に応じたロイヤルティ支払いも含まれる。
  • 加齢を疾患の根本原因と見なす新しい発想により、多疾患対応型治療の実現が期待される。
  • 中外製薬は2030年に向けたグローバル戦略の一環として、今回の連携を位置づけている。
  • 将来的な商業化や臨床応用には、技術と規制の両面での慎重な対応が求められる。