J.P. Morganが発表した最新レポートによると、2025年第一四半期、バイオファーマおよび医療機器分野における投資環境は引き続き堅調とのことでした。
両業界ともに大型の資金調達やライセンス契約が相次ぎ、M\&AやIPOの動きにも明確な傾向が見られました。
今回は、そのJ.P. Morganの公開資料の一部を翻訳、編集してご紹介します。なお、原文とレポートPDFをご覧になりたい方は以下のリンクからご覧いただけます。
2025年Q1 バイオファーマ投資動向の全体像

- ベンチャー投資の特徴とその変化
- ライセンス契約に見る戦略的動向
- M\&A市場における規模と件数の変化
- IPO市場の慎重な動き
- バイオファーマ投資動向の展望と注意点
ベンチャー投資の特徴とその変化
2025年の第一四半期において、バイオファーマ分野のベンチャー投資は、前年同期と同水準の67億ドルに達しました。
この数字はラウンド数の減少にもかかわらず、個々の案件の規模が拡大していることを示しています。
特に注目されたのは、1億ドル超の大型ラウンドが19件存在した点です。Isomorphic Labs(Alphabet系企業)の6億ドル調達や、Verdiva Bioによる4億1,000万ドルのシリーズA、Eikon Therapeuticsによる3億5,100万ドルのシリーズDなどが代表的な例です。
こうした動きから、投資家がより成熟したプログラムや早期商業化が見込める段階の企業に注目している傾向が見て取れます。
一方で、初期段階の企業への関心も維持されており、シードおよびシリーズAへの投資額は37億ドルと、シリーズB以降(30億ドル)を上回りました。
ライセンス契約に見る戦略的動向
ライセンス契約における動向も、第一四半期の業界の戦略を反映する形で明確な傾向が見られました。
契約総額は568億ドルに達し、そのうち約8%(約45億ドル相当)が契約締結時に一括で支払われた「アップフロント」として支払われています。
大手製薬企業が特に注目しているのは、フェーズII段階の開発プログラムです。
このステージの案件は、他段階に比べて最も高い中央値(1億6,500万ドル)でアップフロントが支払われました。
代表例としては、RocheとZealand Pharmaとの契約(14億ドル)、OnoとIonisとの契約(2億8,000万ドル)が挙げられます。
また、モダリティ別では、抗体医薬などを含むバイオロジクス領域が依然として主導的地位を維持しています。
これに対し、遺伝子治療や細胞治療といった先進的技術への投資は慎重な姿勢が見られました。
M&A市場における規模と件数の変化
M&A(企業の合併・買収)に関しては、件数が減少した一方で、1件あたりの取引金額が増加するという対照的な動きが見られました。2025年Q1には27件のM\&Aが発表され、総額252億ドルに達しました。
その中でも特筆すべきは、Johnson & JohnsonがIntra-Cellular Therapiesを146億ドルで買収した大型案件です。
また、Eli LillyによるScorpion Therapeuticsの買収も25億ドルに上りました。これらの動きは、企業が将来的な収益性を確信するプログラムに集中的な投資を行っていることを示唆しています。
なお、買収の対象となった企業の多くは、依然としてプライベート企業や中小型上場企業であり、買収時のバリュエーションは全体的に抑制傾向にあります。
IPO市場の慎重な動き
IPO(新規株式公開)については、引き続き慎重な姿勢が見られました。2025年の第一四半期には、バイオファーマ分野で4社がナスダック上場を果たし、合計で7億7,000万ドルを調達しました。
上場企業にはMetsera Therapeutics(3億1,600万ドル)、Maze Therapeutics(1億4,000万ドル)、Sionna Therapeutics(2億1,900万ドル)、Aardvark Therapeutics(9,400万ドル)が含まれています。
ただし、上場後の株価パフォーマンスには差があり、Metseraを除いては公開価格を下回る推移となっています。
この動向から、企業がプライベートラウンドでの資金調達を選好する傾向が続いていることが分かります。特に市場環境の不透明さがIPO判断に影響を及ぼしていると考えられます。
バイオファーマと医療機器業界、2025年第一四半期も堅調な投資動向|J.P.モルガンアウトルックレポート
- 投資規模は堅調に推移しつつも、案件の選別がより厳しくなっている点に注目が必要です。
- ライセンス契約は、アップフロント重視の戦略が引き続き主流であり、後期開発段階の案件に集中しています。
- M\&Aは、大型案件が市場の注目を集める一方で、買収対象の企業は限られた分野に偏る傾向があります。
- IPO市場では慎重な判断が続いており、上場よりもプライベートでの資金調達を優先する企業が多く見られます。
- バイオロジクスへの注目は依然高く、投資や提携が集まっている一方、遺伝子治療などの先端領域には慎重な姿勢も見受けられます。
