米バイオ医薬大手のBiogenは、Ionis Pharmaceuticalsと共同開発中の脊髄性筋萎縮症(SMA)治療候補「salanersen(BIIB115/ION306)」について、第1相試験で有望な結果を得たことを受け、早期開発段階から一気に登録試験(後期臨床段階)へ移行させる方針を明らかにしました。
salanersenは、既に承認されているSPINRAZA(nusinersen)と同じ作用機序を用いながら、より高い効果と年1回の投与という利便性を目指した新世代のアンチセンス医薬品です。
- salanersenは年1回投与が可能な次世代SMA治療薬候補
- 第1相試験で神経変性の抑制と運動機能の改善を確認
- 安全性は良好で副作用は軽度にとどまった
- 第3相試験に向けて開発が進行中
salanersenの第1相試験結果とその意義

Biogenは、salanersenの第1相試験において、SMAの既治療小児患者に対して有望な結果を得たことを報告しました。特に注目すべきは、神経変性の進行を著しく抑制した点です。
この試験では、かつてNovartisの遺伝子治療ZOLGENSMAを受けた患者を対象に、年1回投与のsalanersen(40mgまたは80mg)を実施しました。結果として、神経変性の指標である神経フィラメント軽鎖(NfL)の平均70%減少が6か月後に確認され、効果は1年間持続しました。
この結果は、既存治療でも機能回復が頭打ちになっていたケースに対して、新たな作用の可能性を示唆しており、SMA治療の進展に向けた重要な一歩となります。
運動機能の改善とWHOマイルストーンの到達
この試験では、神経変性の抑制だけでなく、運動機能の臨床的改善も報告されています。中間解析時点で1年以上フォローアップされた2~12歳の参加者8名のうち4名が、歩行や座位などのWHOが定める新たな運動マイルストーンを達成しました。
具体的には、以下のような改善がみられました:
- HFMSE(運動機能評価スケール)で平均3.3ポイントの改善
- RULM(上肢機能評価モジュール)で平均5.3ポイントの向上
このような成果は、特にこれまでの治療で十分な改善が見られなかった子どもにとって、大きな意義があります。
また、試験を主導したValeria Sansone博士は、「1歳時に遺伝子治療を受けたものの、5歳まで支えなしに座れなかった児童が、salanersen投与から3か月で自力で座れるようになった」と述べており、実臨床での変化が明確に現れている点も強調されました。
安全性と今後の開発計画
安全性についても、salanersenは良好な忍容性を示しました。試験参加者における主な副作用は発熱および上気道感染であり、いずれも軽度から中等度にとどまりました。
これにより、年1回の投与という新しい治療アプローチにおいても、安全性と有効性の両立が期待できることが裏付けられました。
現在Biogenは、salanersenを次の段階に進めるべく、グローバルな規制当局と第3相試験の設計に関する協議を開始しています。Ionisが発見し、Biogenがその商業化権を取得したsalanersenは、SPINRAZAに次ぐSMA治療の新たな柱として、今後の展開が注目されています。
参照記事
- Biogen ushers Spinraza follow-up into pivotal SMA studies|Biogen プレスリリース
- Ionis announces Biogen to advance salanersen into SMA registrational studies based on positive interim Phase 1 results|Businesswire
- Biogen ushers Spinraza follow-up into pivotal SMA studies|FirstwordPharma
Biogen、次世代SMA治療薬「salanersen」を登録試験へ移行開始 ─ SPINRAZAに続く新たな一手まとめ
- salanersenはSMA治療薬SPINRAZAに続く次世代候補である
- Ionis Pharmaceuticalsが創薬し、Biogenが開発と商業化を担当している
- 第1相試験の対象はZOLGENSMAを受けたSMA小児患者である
- 試験では40mgと80mgの年1回投与が実施された
- 神経変性の指標であるNfLが平均70%減少した
- 減少効果は1年間持続することが確認されている
- HFMSEで平均3.3ポイントの運動機能改善が見られた
- RULMでは平均5.3ポイントの改善が記録された
- 8人中4人が新たなWHO運動マイルストーンを達成した
- 発熱と上気道感染が主な副作用として報告された
- 副作用はいずれも軽度から中等度にとどまった
- 治療反応は既治療の小児においても顕著だった
- salanersenは高い効果と利便性を兼ね備えている
- Biogenは現在、規制当局と第3相試験の設計を協議中である
- 今後は未治療者への効果や長期的安全性の検証が課題である
