2025年7月、米国食品医薬品局(FDA)は、LEO Pharma社が開発した外用薬「ANZUPGO®(delgocitinib)」クリームを、中等度から重度の慢性手湿疹(CHE)を対象とした初の治療薬として承認しました。
これにより、これまで有効な治療手段が限られていた多くの成人患者に新たな希望がもたらされることになります。
本記事では、承認に至る経緯や臨床試験の結果、薬剤の作用機序、さらには注意すべき副作用や今後の展望について詳しく解説します。
FDA承認を受けた新治療薬「ANZUPGO®(delgocitinib)」の特長

- 慢性手湿疹とはどのような疾患か
- ANZUPGO®の作用メカニズムと薬理的特性
- 臨床試験「DELTA 1・2」による有効性と安全性
- 使用上の注意点と副作用のリスク
- 今後の展望とLEO Pharmaの戦略
慢性手湿疹とはどのような疾患か
慢性手湿疹(Chronic Hand Eczema, CHE)は、手や手首にかゆみや痛みを伴う赤み、腫れ、ひび割れ、あるいは水疱が長期にわたって続く皮膚疾患です。通常、3カ月以上続くか、1年に2回以上再発する場合に「慢性」と診断されます。
この疾患は、皮膚のバリア機能の破綻、炎症反応、微生物叢の変化などが複合的に関与しており、発症には職業的・生活習慣的要因も大きく関与します。
また、症状は身体的な不快感にとどまらず、日常生活や仕事、対人関係にも影響を及ぼすため、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させることが報告されています。
ANZUPGO®の作用メカニズムと薬理的特性
ANZUPGO®(delgocitinib)は、ステロイドを含まない外用薬で、JAK(ヤヌスキナーゼ)1、2、3およびTYK2の活性を阻害する「pan-JAK阻害薬」に分類されます。
この薬剤はJAK-STAT経路を抑制することにより、炎症性サイトカインの活性化を防ぎ、皮膚の炎症反応を鎮めます。これによって、かゆみや痛みといった慢性手湿疹の代表的な症状が軽減されることが期待されます。
さらに、ステロイド外用薬の長期使用に対する懸念を持つ患者にとって、ステロイドフリーの治療選択肢である点は大きなメリットとなります。
臨床試験「DELTA 1・2」による有効性と安全性
ANZUPGO®のFDA承認は、DELTA 1およびDELTA 2という2つの国際共同第Ⅲ相試験の結果に基づいています。これらの試験には合計960名の成人患者が参加し、いずれも中等度から重度の慢性手湿疹と診断された人々です。
試験結果の概要
| 項目 | ANZUPGO群 | プラセボ群 |
|---|---|---|
| IGA治療成功率(DELTA 1) | 20% | 10% |
| IGA治療成功率(DELTA 2) | 29% | 7% |
| 痛みスコアの改善(≥4ポイント) | 約49% | 約28%以下 |
| かゆみスコアの改善(≥4ポイント) | 約47% | 約23%以下 |
また、試験で確認された副作用は少なく、発生率も1%以下と報告されています。主な症状としては、塗布部位の痛みや発赤、細菌性感染症などが挙げられました。
これらの結果から、ANZUPGO®は有効性と安全性の両面において、従来の外用ステロイドに代わる有望な治療法と位置付けられます。
使用上の注意点と副作用のリスク
一方で、ANZUPGO®には注意すべき点もあります。JAK阻害薬であるため、免疫機能に影響を与える可能性があり、特定の感染症に対するリスクが高まることが報告されています。
特に注意すべき副作用には以下のようなものがあります。
- 重度の感染症(結核、真菌感染、ヘルペスなど)
- 非メラノーマ型皮膚がんのリスク増加
- 白血球の減少や局所的な皮膚感染症
使用中に感染症の兆候(発熱、咳、皮膚の異常など)が見られた場合は、直ちに医師に相談することが推奨されています。また、日光への過度な曝露も避ける必要があります。
今後の展望とLEO Pharmaの戦略
ANZUPGO®はすでに欧州、英国、スイス、UAEなどでも承認されており、米国市場への展開はLEO Pharmaにとって戦略的な転機となります。
同社は、皮膚科領域における革新的な治療法の提供を企業ミッションと掲げており、今回の承認により、その姿勢をより明確に打ち出した形となりました。
患者の生活の質を改善することを目標とした今後の開発にも注目が集まっています。加えて、アクセス性の向上や価格の適正化といった課題にも積極的に取り組む姿勢が見られます。
まとめ:中等度から重度の慢性手湿疹に「ANZUPGO®」をFDAが初の承認薬
ANZUPGO®は中等度から重度の慢性手湿疹に対する初のFDA承認治療薬
JAK-STAT経路を抑制することで炎症反応を緩和する
ステロイドフリーで安全性に配慮された外用薬
臨床試験ではかゆみや痛みの顕著な改善が示された
有効性だけでなく副作用発現率の低さも確認された
感染症や皮膚がんリスクに対する注意喚起が必要
使用中は皮膚異常の兆候に常に留意することが求められる
LEO Pharmaの米国市場進出における戦略的製品
欧州や他国でもすでに承認されている実績がある
患者支援体制とアクセス改善への取り組みも進行中
