グローバルなバイオテクノロジー分野で注目を集めるベンチャーキャピタル、AN Venture Partners(以下、ANV)は、2025年6月にファーストファンド「AN Venture Partners I, LP」を目標額の2億ドルで設立を完了したことを発表しました。
総額2億ドル(約290億円)という規模は、日本を対象としたバイオテックファンドとしては過去最大級であり、初回ファンドとしても極めて異例の大きさです。
このファンドは、国内外の大手製薬企業や金融機関など20社以上のリミテッドパートナーからの出資によって成立しました。
ANVは日本発の革新的な科学技術に基づくバイオスタートアップへの投資と育成を通じて、グローバル市場への展開を目指しています。
AN Venture Partnersの挑戦と展望

- AN Venture Partners設立の背景とファンドの概要
- 投資ポートフォリオの現状と企業別の取り組み
- 日本バイオテックエコシステムへの貢献
- 今後への期待
AN Venture Partners設立の背景とファンドの概要
AN Venture Partnersは2022年に設立され、米国の著名VCであるARCH Venture Partnersとの提携を通じて、日本とアメリカを拠点とするグローバルな投資体制を確立しました。
これにより、日米の科学技術やスタートアップ支援のノウハウを融合させたユニークなアプローチが可能となっています。
今回発表されたファンド「AN Venture Partners I, LP」は、2023年12月に運用を開始し、2025年6月に目標額の2億ドルで最終クローズされました。
投資ステージに制限はなく、プレシード段階から臨床開発フェーズまで柔軟に対応する姿勢をとっています。
日本発の技術に着目しながらも、国際展開も視野に入れており、世界市場への橋渡し役としての役割も担います。
主要な出資者には、ジャパンインベストメントコーポレーション、塩野義製薬、大塚製薬、三菱UFJ銀行、三井住友銀行など、日本を代表する企業が名を連ねています。
投資ポートフォリオの現状と企業別の取り組み
現在までに、ANVは7社への投資を実行しています。そのうち4社は具体的に公開されており、残り3社はステルスモードで開発を進めています。
Capacity Bio
Capacity Bioは、ミトファジー(損傷ミトコンドリアの分解)を活用した治療法の開発を行う企業で、神経変性疾患や希少疾患など幅広い疾患領域への応用が期待されています。細胞表面の標的受容体に着目した技術基盤が特徴です。
Typewriter Therapeutics
Typewriter Therapeuticsは、東京大学の藤原晴彦名誉教授の研究をベースに設立された企業で、mRNAを用いた遺伝子挿入技術「TPRT」を開発しています。
2024年12月にはAMEDのスタートアップ支援プログラムに採択され、開発資金の支援も受けています。
City Therapeutics
City Therapeuticsは、RNA干渉(RNAi)技術に特化した次世代創薬ベンチャーで、東京大学やオハイオ州立大学の研究者と共同で設立されました。2024年には1億3500万ドルのシリーズA資金調達を成功させたほか、バシュ・アンド・ロム社やバイオジェン社との戦略的提携も実現しています。
Imbria Pharmaceuticals
Imbria Pharmaceuticalsは、心筋エネルギー代謝の効率化を狙った心不全治療薬「ninerafaxstat」を開発中です。2025年4月には5,750万ドルの資金を調達し、現在は中期臨床試験が進行しています。
日本バイオテックエコシステムへの貢献
ANVは単なる資金提供にとどまらず、日本のバイオエコシステム全体の成長にも貢献しています。
例えば、日本政府が掲げる「2030年までにバイオ先進国となる」という目標に沿い、ANVはAMEDから認定ベンチャーキャピタルとしての認証を受けています。
また、内閣府や国立大学とも連携し、研究成果の社会実装を加速させる取り組みを強化しています。
さらに、米国発のイベント「Science2Startup」を日本に導入し、2024年11月には第一回の開催に成功しました。
このイベントには約200名の研究者、起業家、投資家が集まり、革新的な研究成果の事業化に向けた橋渡しが行われました。
このような活動を通じて、ANVは研究と産業の接続点を担う役割を果たし、国内の創薬・医療技術の国際展開を支援しています。
まとめ: 日本発バイオテックを世界へ|AN Venture Partners、2億ドルファンドを最終クローズ
- AN Venture Partnersは、日本の革新的な科学技術をグローバル市場に展開するための橋渡しとして機能しています。
- 総額2億ドルのファンドには、日本を代表する製薬・金融機関が参加し、スタートアップ育成に資する強力な体制が整いました。
- 現在のポートフォリオには、RNAi、ミトファジー、遺伝子挿入技術など、先端領域に特化した企業が名を連ねています。
- ANVは投資活動に加え、国策との連携や人材・技術の国際交流促進など、エコシステム全体の強化にも注力しています。
- 今後の投資先や国際連携の展開次第では、日本発バイオテックが世界市場で大きな存在感を放つことが期待されます。
出典
出典:AN Venture Partners Announces Final Close of $200M Fund I|AN Venture Partners Businesswire
