大鵬薬品工業が開発を進めていたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬「TAS-205(ピズグランスタット)」の国内第III相臨床試験(REACH-DMD試験)において、主要評価項目である「床からの立ち上がり時間」の改善効果が統計的に有意ではないことが明らかになりました。
本試験は5歳以上のDMD患者を対象に実施され、日本全国の医療機関が参加しました。
治療効果を期待されていた同剤が十分な成果を示せなかったことで、DMD治療領域の開発の難しさが改めて浮き彫りとなっています。
大鵬薬品のTAS-205(ピズグランスタット)、DMD国内第III相試験発表

- 第III相試験の概要と評価項目
- TAS-205の開発経緯と作用機序
- 他社治療薬との状況比較
第III相試験の概要と評価項目
REACH-DMD試験は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬として期待されていたTAS-205の有効性と安全性を確認する目的で実施されました。試験は5歳以上の歩行可能な男性DMD患者82人を対象に、日本国内26施設で行われました。
被験者は無作為に2群に分けられ、TAS-205もしくはプラセボを1日2回、計52週間にわたって経口投与されました。主要評価項目は、床からの立ち上がり時間のベースラインからの変化でしたが、結果としては両群間に統計的な有意差は認められませんでした。
この結果は、TAS-205がDMD患者の運動機能低下を食い止める効果を明確に示せなかったことを意味しています。詳細な解析結果は今後、学術集会などで発表される予定です。
TAS-205の開発経緯と作用機序
TAS-205(国際一般名:ピズグランスタット)は、大鵬薬品が独自に創製した選択的造血器型プロスタグランジンD合成酵素(HPGDS)阻害剤です。この酵素は、DMD患者の筋肉で炎症を悪化させる要因とされており、TAS-205はこれを抑制することで症状の進行を遅らせることが期待されていました。
また、TAS-205はジストロフィン遺伝子の変異タイプにかかわらず作用することが想定されており、既存治療と併用可能な選択肢として注目されていました。開発は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のCiCLE事業にも採択され、公的支援のもと進められてきました。
しかし、今回の試験結果によって、この新規作用機序に基づくアプローチの効果に対する再検討が必要となった形です。
他社治療薬との状況比較
DMD領域の治療薬開発は、近年非常に難航しています。例えば、米国のサレプタ・セラピューティクスは2025年初頭に、EUで実施していた遺伝子治療薬「エレビディス」の試験を中止し、非歩行患者への供給も停止しました。背景には、急性肝不全による死亡例が確認されたことがあります。
また、同年5月にはPepGenが開発していたエクソンスキッピング薬PGN-EDO51の中間試験で期待された効果が得られず、開発中止に追い込まれました。このような状況の中で、TAS-205の結果も、同領域における試験成功の難しさを物語っています。
一方で、FDA(米食品医薬品局)は別の細胞治療薬「デラミオセル」についての審議を進めており、新たな治療法の可能性も模索されています。
大鵬薬品のTAS-205(ピズグランスタット)、DMD国内第III相試験で有効性示せず
- TAS-205はDMD治療薬として期待されていた
- 第III相試験で有効性の指標を達成できなかった
- 試験は日本国内26施設で82名を対象に実施された
- 投与は1日2回、52週間の経口投与という設計だった
- 評価項目は床からの立ち上がり時間の改善だった
- 統計的有意差は認められず効果は確認されなかった
- TAS-205は遺伝子変異タイプに関係なく作用する設計だった
- 他社のDMD治療薬も開発中止や問題を抱えている
- 詳細データは今後の学会で公表予定
- 今後の開発継続の可否や再評価に注目が集まる
